第1133話 年末特番最終日 『タピオラ』 シベリウス


 やはり、年の終わりは、この曲しかないよなあ。


 というわけで、旧作『絶滅音楽詩篇集』から持って参りました。


 それは、手抜きだろ。


 はい。恐れ入ります。


 この頃は、なんとなく、生意気な書き方をしていましたので、ちょっとだけ、修正いたしました。



   ・・・・・・・・・・・・・・


 思いますに、今夜で地球も人類もおしまいならば、最後に聞く曲は、この曲しかないだろうな、と。


 ぼくは、そう思うのです。


「タピオ」とは、「森の神様」、「森の主」のこと。


「タピオラ」は、タピオの住むところのことです。

 

 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に、ずっと流れ続ける、基本的な「精神」というべきものでありましょう。


 この音楽ほど、久遠の中に、そう、永遠に消え去る、人類へのオマージュとして、相応しいものは、他にないように思うのです。


 宇宙が、最初に生まれて、38万年ほどたった時、初めて水素原子が作られたのだといいます。水素の元素記号は「H」。


 「タピオラ」は、まさに単一主題の音楽です。


 それだけで、20分に達する時間、一瞬の気のゆるみもなく、ひたすら何もない世界に広がって行くのです。


 まさに宇宙そのものです。


 そうして、あらゆる発展を尽くし、11小節にも及ぶ、長い長い弦のアンサンブルで、終結を迎えます。


 第一バイオリンは二部に分かれて「H」をオクターブで、第二バイオリンはやはり二部に分かれて、「Fis」と「H」を、ヴィオラは二部に分かれた中で、さらに二部ずつに分かれ、「Dis」「G」「H」「Dis」と弾き、チェロはこれまた二部の中が二部になって「Fis」「H」「Dis」「Fis」、べースは主音の「H」を、永遠に響かせます。


 まさに、上も、下も「H」なのです。


 これが、独特の「永遠」を感じさせるので、ありましょう。


 これ以前には、かつて、聞いたことがないような神秘の音です。


 ぼくは、この曲を聴いた後は、しばらく他の音楽を聴く勇気がなくなります。


 この、最後の響きが、永遠であってほしいと、じっと願うのです。


 そうして、本当にこれが地球の最後なのだという事ならば、それはこの「傑作」を、宇宙に帰す最高の機会であろうと、思うのです。


 ま、もちろんこれは、想像ですが。


 でも、もしかしたら、あす終わりが来ないという保証もないのですが。


 今年は、そういうことが、まったくないとは言えないな、と、思わせる年になりました。


 それは、次の年に引き継がれます。




 ただ、ぼくは、「焼きそば」よりも、最後だけは、高級「お寿司」にしたいです。



        🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲




     では、みなさま、良い年をお迎えください。



             🍣





🐻🐻🐻🐻🐻🐻🐻🐻 うつ 🐼 うつ 🐻🐻🐻🐻🐻🐻🐻🐻





 





 


 


 


  


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