第800話 『ゲーテのファウストによる情景』 シューマン

 これは、シューマン先生、最大の傑作に違いないと、やましんは思います。


 『レア音』では、先に扱わせていただきましたが、こちらで、再登場です。


 出会いは、1977年4月29日に行われた日本初演の演奏会です。


 指揮は、ウォルフガング・サヴァリッシュさま。


 NHK交響楽団。


 バリトンに、フィッシャー=ディースカウさま。


 そのほか、ソプラノからベースまで、8人の独唱者、さらに、合唱団から、児童合唱団まで

たくさんの人が舞台にあがり、背後には、合唱指揮者からたくさんの裏方さん。


 大変だったでしょう。


 4月30日に、再演されたようです。


 やましんは、テレビと、FMで、鑑賞し、感激したのです。


 ドイツ文学者の小塩節先生の解説が、また、素晴らしく分かりやすく、感激。


 小塩先生は、現在、90歳になられたようですが、当時から、テレビでも、ドイツ語の先生として、たいへん、有名でした。


 独特の語り回しが良く、ファンは沢山いたんだと思います。


 やましんにとっては、ある意味、幸福な出会いだったのです。


 しかし、この当時は、レコードと言っても、おそらく、ベンジャミン・ブリテンさま指揮によるものしかなかったのではないかと。(念のために、申し上げますが、CDなんて、まだない時代ですから。)


 で、このとき、FMで放送されたものは、カセットテープで、録音はしたのですが、貧乏学生で、良い機械を持ってるわけもなく、120分テープでもあり、いま、再生するのは、ちょっと恐いです。


 最後のところが、切れるか、入るか、ぞくぞくしながら、ラジカセとにらめっこしたように思います。


 ほんと、ぎりぎり、入りました。


 ときに、サヴァリッシュさまは、一番最後のところ、つまり、『神秘なる合唱』を、第1ヴァージョンを使っていました。


 シューマン先生は、もうひとつ、別バージョンを作っていて、録音される場合は、そちらのほうが、良く使われるようです。


 起伏が大きく、演奏効果があがるからでしょうか。


 しかし、やましんは、サヴァリッシュ先生の演奏したヴァージョンが、好きです。


 そもそも、シューマン先生は、作曲にあたって、この一番最後から書き始めたようです。


 実際に、ここが、核心であることは、間違いないですね。


 この、一種のオラトリオみたいな作品は、その価値の高さに比べて、欧米では人気があるのに、どうも、日本では、あまり、人気がないらしいです。


 と言っても、ゲーテの『ファウスト』がテキストですから、宗教音楽ではないし、文学好きの日本人が、なぜ、今一つ乗らないのかは、良く分かりませんが、ステージに載せるのは、あまりに大変なうえ、かなり、長いせいもあるかも。


 しかし、この音楽の美しさは、極めつけであります。


 最初から、最後に至るまで、名旋律の宝庫であります。


 これを、ほっておいては、ダメです。


 ここ、10年ばかり、新譜がかなり、出ました。


 アバドさま指揮、ベルリン・フィルによる録音が出たさいは、飛び上がって買いに走りました。


 しかし、第1ヴァージョンによるラストを演奏した録音は、なかなか、現れません。


 古いライヴでは、あるのですが。


 そこに、ようやく出てきたのが、ヘルヴェッヘさま指揮によるCDでありました。(ハルモニア・ムンディ  HMC901661.62)


 ヘルヴェッヘ先生は、サヴァリッシュ先生よりも、いくらか、遅いテンポで『神秘なる合唱』を進めます。


 やましん思いますに、シューマン先生の音楽は、この、『神秘なる合唱』に至る前に、第1ヴァージョンによるラストを、暗示させるモティーフを出現させています。


 なので、改訂バージョンの『神秘なる合唱』には、それが、生かされないように思います。


 そこが、かなり、気になります。 


 それでも、別バージョンをシューマン先生がわざわざ書いたわけですから、これも、無視はできません。


 やましんが、勝手に思いますのに、新録音では、両バージョンを入れるべきだということです。


 なお、やましん、ベルンハルト・クレーさまの録音も、好きです。


 この、LPを手に入れたいと、各地探し回った頃がありました。


 さて、シューマン先生は、1842年あたりから、この作品を書き始め、途中、メンタルの不調にも悩みながら、苦労に苦労を重ねて、1853年、最後に序曲を書いて、ついに完成させました。


 1854年、シューマン先生は、ライン川に身を投じます。


 助かりはしましたが、もはや、音楽活動を再開させることはなく、1856年に亡くなります。


 直接の死因についてなどは、個人情報であることから、長く非公開でしたが、20世紀の終わりになって、カルテが公開されたようです。


 それについては、『うつうつ』が追及することではないでしょう。


 ときに、この『神秘なる合唱』は、マーラー先生が、『交響曲第8番』(千人の交響曲)で、後半部にテキストとして使っておりまして、これは、マーラー先生にしても、非常に重要なテーマだったようです。




 すべて、うつろうものは、比喩である。


 たらわざるものが、満たされ、


 名状しがたきものが成し遂げられた。


 永遠の女性が、我らを、高みに導く。

 


 この、最後の一節が、何をいみするのか、偉い方々が、さまざま、考え抜いてきたのだと思います。


 やましんごときが、解明するとか、そうしたものではありません。


 ゲーテ先生は、名高い、プレイボーイでしたから、意外に素直な感想かもしれません。


 なにせ、人類最高の天才とうたわれるかたですから、素直な感想だって、やましんの感想とはルベルが違うでしょう。


 ゲーテ先生に、口説かれて、拒絶するかたは、あまり、なかったかも。


 シャルロッテ・ブッフさまと、婚約者のケストナーさまは、ゲーテ先生からの猛アタックに、どう対応するか、相当悩んだらしいです。


 結局、ゲーテ先生の知人さまが、まずい!


 と、考えた末、ゲーテ先生をイタリアに連れ出し、その隙に、おふたりは、結婚なさったようです。(で、『若きウェルテルの悩み』が出来た。)


 二枚目で、世界最高の天才で、お金持ちで

、さらに、政府のトップに座る権力者でもあり、頭脳明晰、文学から、科学、医学、なんでも万能、だったかたです。(ただ、音楽の趣味は、モーツァルトさんあたりが好きで、ちょっと古かったようです。)


 粗雑には、扱えない方ですから。


 比べる対象として、良く、出てくるのは、ベートーベン先生であります。


 ベートーベンさんは、残念ながら、結婚は出来ずじまいに、なりました。


 ゲーテ先生には、ちゃんと、奥さまもいらっしゃいましたし、結婚は、1度しかしてないようですが、奥さまは、さっぱり、話題になりません。おきのどくです。


 良いではないですか。


 やましんと、ゲーテ先生と比較しようなんていうことは、ま、起こらないですからね。




 さて、はるばる、800回となりましたが、ぼちぼち、先に参ります。


 『うつうつ』は、やましんの、哀しい巡礼なのです。




・・・・・・・・・うつ  😭 うつ・・・・・・・・・・・・

 

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