第273話 『ピアノ協奏曲第1番~第5番』 パルムグレン
今回は、ちょと、根性入れて書いております。
なんせ、5曲分ですから。
多少、字数が増えそう。
あ、逃げないでくださ〰️〰️い。 💛 🍰
フィンランドの作曲家、セリム・パルムグレン先生(1878~1937)は、くしくも、ラヴェル先生やガーシュイン先生と同じ年に亡くなっています。
巨大なシベリウス大先生(1865~1957)より、ひとつ下の世代ですが、日本における知名度は、いまひとつか、いまふたつか・・・・。
やましん、自分勝手に、フィンランドや北欧の音楽を少しずつご紹介してきておりますが、(好きだから!それだけ。)こんかいは、どさっと行きました。
パルムグレン先生は、ご自身がピアノの名手でもあったそうなので、『ピアノ協奏曲』を、5曲残しています。
それでも、曲の規模が、比較的中くらいなので、CD2枚で十分全曲入ってしまい、それでも空きが開くので、他の曲が埋められたりします。
まずは、あまり長くないので、比較的、聞き易いという、物理的な利点があります。
しかも、基本的にロマンティックな方で、すっごく圧倒的民族主義的でもなく(もちろん、そうしたことを感じる部分は、かなりありますが・・・)また、前衛的でもなく、シューマン先生あたりの音楽を志向していたようですから、そこもまた、聞き易いという利点があります。(『北欧のショパン』とか『北欧のシューマン』とかも呼ばれたようです。)
シベリウス先生は、『交響曲』と『交響詩』を中心とする管弦楽曲に非常に強く、この分野で成功することは、フィンランドの作曲家さんには大変な重圧がかかり、成功もおぼつかないことから、たとえば、ユリヨ・キルピネンさま(1892~1959)は、『歌曲』の作曲に特化して大成功をおさめ(歌曲以外の作品もありますが・・)、オスカル・メリカントさま(1868~1924)も、『歌曲』と『ピアノの小品』で、大衆的大人気を博すことに成功しました。(人気で言えば、シベ先生を上回っていたとか。)
レーヴィ・マデトヤ(1887~1947)さまは、珍しく、シベ先生の生存中に『交響曲』でも成功した方ですが、シベ先生が進出できなかった『歌劇』で大成功しました。
で、パルムグレン先生は、シベリウス先生が作曲しなかった、『ピアノ協奏曲』の分野で、その活路を見出そうとしたようです。
結果的には、結構、成功したようであります。
1🎹 2🎹 3🎹 4🎹 5🎹 (押しても動きません!)
【 🎹《第1番》(ト短調)・・・1903年 】
これは、見た目は、オーソドックスな4楽章形式にも見えますが、実体は、ずっと流れてゆく、幻想曲的雰囲気が濃厚で、これが、パルムグレン先生の特徴というところ。
出だしのアルペジオが、まずは、印象的。
そのあとの主題は、内部に、民謡的な要素が、含まれております。
でも、そのあとには、いくらか、ショパンさんちっくな雰囲気も漂わせたり、いくらかロシア風な行進曲らしき陰も覗かせたり、(ベートーベン先生の『戦争交響曲』みたいでもある。)ピアノの名人芸を披露したり、なかなか、正体を捕まえにくいとこもありますが、それは、たぶん、魅力のうち。
何回か聞いてると、けっこうはまりそうな音楽です。
うとうとしていると、あっという間に、終わってしまいますから、注意!
【 🎹 第2番 『流れ(川)』・・・ 1913年 】
単一楽章の『協奏曲』です。
この、暗〰️〰️い出だしが、なんと素晴らしいこと。
感じとしては、アンドレアス・ハレーンさま(スウェーデン 1846~1925)の、交響詩『死の島』にかなり近い音。
いかにも、やましん好みだなあ!
しかし、そこで、ぼんやりしてたら、ぎゃ~~! 急激に明るい嵐が襲ってくるのだ! そう、明るい嵐です。
ところが、北欧の冬の空なのか、またまた、あっという間に、暗〰️〰️い陰が帰ってくる。
と、ぼんやりしてたら、またまた、あの、明るい嵐がやってくる!
この、目まぐるしい変化が、なんとも、素晴らしい❗
様相が、どんどん変わる。
あり? 一瞬、聞いたような旋律の断片が!
これは・・・シベ先生の合唱曲の切れ端の様な・・・。
なんて、思う間もなく、もう、曲は次の様相に転じています。
つまり、この、次から次へと、移り変わって行く姿こそ、表題の『流れ』なのでありましょう。
これは、パルムグレン先生の故郷(ポリ)に流れる、『コケマェエンヨキ』川、(もちろん、やましん、見たこともないです)がパルムグレン様の意識の中にあったのかも・・・という感じ。(『フィンランドの音楽』 1997年 オタヴァ出版印刷所;参考)
日本の『ゆく河の流れは絶えずして・・・・』というのと、近いところもあれば、あまり無常感が流れるという感じでもありません。もう少し、肯定的な音楽です。
これ、なかなかの、意欲的な傑作と、見た!
【 🎹 第3番 『変容』・・・1916年 】
これは、全体が単一楽章の、巨大な『変奏曲』というような『協奏曲』。
主題は、かなり重たい雰囲気の、いかにもフィンランド的な雰囲気が強いのですが、この主題をパルムグレン先生にもたらしたのは、フィンランドの歴史的大合唱指揮者、ヘイッキ・クレメッティさまだったようです。このお名前を冠した合唱団が、たしか現代フィンランドにもあったように思います。(CDがありましたから。)
第一次大戦下のベルリンで書き始められ、1915年に、コペンハーゲンで完成したとのこと。
かなり、ドカン! とくる出だしですが・・・そういう雰囲気が影響しているのかどうかわかりませんが、中間に、非常に深刻な表情になる部分があります。
でも、最後は、元気に、ズバン、と終わります。
【 🎹 第4番 『四月』 ・・・1927年 】
1920年になって、アメリカで書き始められ、1926年にフィンランドで完成した協奏曲。
パルムグレン先生は、1919年から1920年に掛けて、奥様とアメリカに渡り、一緒に演奏会を行いました。
これが、大変評判となり、ニューヨーク、ロチェスターのイーストマン音楽学校の作曲の教授として5年契約を結んだのだそうであります。
この地位は、かつてシベリウス先生が打診されながらも、断った地位であります。
フィンランドに帰国後は、ヘルシンキ音楽院のピアノの先生となり、1939年に、音楽院がシベリウス・アカデミーとなると、初代の作曲の教授に就任しました。
またく、絵にかいたような、昇進をしたわけです。
なお、もちろん、シベ先生は、当時まだまだ、ご健在でありました。
この協奏曲は、単一楽章ではありますが、なかなか、凝った作りになっております。
最初は、正真正銘、ピアノだけのソロで始まります。
そのあと、どことな~~~~く、ジャズっぽい雰囲気が多少あるのは、やはり、アメリカ滞在の影響かも?
しかし、その先に登場する、じゅわじゅわな音楽は、まさしく、やましん好みの音楽であります。
これが、大変に、良い!
終結部分に、たとえば、チャイコフスキー先生とか、ラフマニノフ先生の協奏曲のように、あまり多大な労力を費やさないのは、むしろ、近代的な感覚なんだろうかな、と思います。あっさりと、終わります。
【 🎹 第5番イ長調 ・・・1941年 】
全体は、3つの部分からなります。
しかし、『個性的』な音楽という事から言うと、これが一番な気がします。
日本人には、なんとなく、いくらか中国的な音階に感じるところもありますが、これは、むしろ北欧的というべきなんでしょう。
第1部分は、ピアノのソロが、かなり浮き立つように活躍するのが大変印象的。
第2の部分は、これは、ふっかああ~~~~い音楽。
いくぶん、9つ年下の、スウェーデンのアッテベリ先生(1887~1974)の音楽に共通するような色合いもありますが、このあたりは、時代の色なのかもしれないです。
急進的なモダンな音楽と、ちょと保守的で、ロマンティックな音楽が、まだ併存している時代であります。
もちろん、アッテベリ先生もパルムグレン先生も、後者の例。
ただ、戦争後は、急進派が力を握った時代で、うっかり、教育用や歌謡曲、などは別として、(ソヴィエトなどは、考え方が、さらにまた別。)調性音楽なんか書いたら、袋叩きに会いそうな時代になっていったような・・・・
特に欧州中央部では、シベリウス大先生さえも、その批判にさらされたようで、今でも指揮者としては人気がある(ベートーヴェンの『交響曲全集』とか・・)、作曲家で指揮者の、ルネ・レイポヴィッツ先生(1913~1972)は、シベ先生の90歳のお誕生日に寄せた小冊子を発表したのだそうですが、その題名が『世界最悪の作曲家 ジャン・シベリウス』だったそうであります。
90歳の高齢者をいじめて、何が楽しいの? もっとも、まじめな批判ではあったのかもしれないけれど、それにしちゃあ、表題がよくない。(参:『フィンランドの音楽』1997年 オタヴァ出版印刷所 (実物みてみたいな。でも読めないけれど。))
パルムグレン先生は、その20年近く前に、すでに亡くなっておりました。
もっとも、アッテベリ先生は、まだまだ、元気でご活躍でしたが。
アッテベリ先生は、経済的に安定していたので、おそらくですが、少々何か言われても、敵なし!
******** うき 🎹 🎹 うき ********
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