第92話 『チゴイネルワイゼン』 サラサーテ

 『超絶技巧』というところに、どうしても目が行ってしまう曲ですし、実際そういう事の出来る人でないと演奏はできないないのでしょうけれども、『うつうつ』における、やましんの関心は、もっぱら『癒し』に役立つかどうか、であります。

(1878年の作品)


 そうして、このマニアックな名曲が、じつは、大変『じゅわ~っ』と来る曲なのです。


 特に第2の部分がそうです。


 この、芯からくるじゅわじゅわ感は、もう、たまりません。


 切々と繰り返される、哀願するようなメロディーに、涙なしにいられるでしょうか。


 もともとは、フォークソングの旋律とか。


 この曲が作曲された当時は、サラサーテ先生以外に、まともにこの曲を弾きこなせる方はあまりいなかった、とも聞きますが、しかし、古い録音を見てみれば、20世紀になるころには、「おれにだって、ちゃんと弾けるぜ~~!」と言う名人の方が、次第に名乗りを上げてきていることも分かります。

 

 その証拠に、この曲の録音だけを集めたCDも、かつて出ておりました。(ベスト・オブ・チゴイネルワイゼン TOCE-8391)


 そうしたLPも、あったような。


 そこには、最晩年の、サラサーテさんご自身(1844~1908)による録音も含まれております。


 かなり短縮されていますし、音も古いですが、なにしろ、1904年の録音。


 お年はとっても、さすがに、達者なものです。


 確か、シャーロックホームズのお話に、『サラサーテを聞きに行くんだ』とかホームズさんが言っていたお話があったような・・・・・


 それを、いま、実際に聞くことが出来るというところは、録音といふ、『技術』のおかげ。


 昔は、日本人には、なかなか弾きこなせる方がいなかったようですが、現在は、軽々と引いてしまうお子様も多いことかと思います。


 しかし、いじわるなおじさんをうならせるのは、結構、難しいかも。

 

 変わった演奏と言えば、ミッシャ・エルマンさま(1891~1967)が、ピアノ伴奏で残した晩年のユニークな録音があります。(伴奏は、ヨゼフ(ジョゼフ)・セイガーさま)


 趙スローテンポで、こここでしか聞けない種類の、まったく独自の境地。


 ハイフェッツさまと同じ、アウアー門下とか。


 ハイフェッツさまの録音した演奏は、とにかく、早い早い。猛スピードで、まったく軽々と完璧に弾いてしまいます。しかも、最後にまだスピードが上がる!


 これが、ハイフェッツ流です。


 エルマンさまは、若き日には『エルマントーン』と言われる、甘く美しい音で世界をマヒさせた名人でしたが、この録音の当時は、すでにその音は失われて、枯れた味わいになっておりました。


 しかし、この曲の、『超じゅわじゅわ』演奏として、まさに、その奥義を極めたと(昔日の栄光をじっくりと思い浮かべているような。。。ただし、やましんには、栄光の時代はないですけども。)言える、ハイフェッツさまの対極にある超名演。


 やましんは、勝手にそう思っております。はい。 


  



 



 







 









 

 




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