第68話 『トゥオネラのレミンカイネン』 シベリウス
いわゆる、『四つの伝説曲』とか『レミンカイネン組曲』とか言われる『作品22』のなかの1曲です。
一番有名なのは、言うまでもなく、『トゥオネラの白鳥』です。
まあ、ダントツに有名と言ってよいのでしょう。
しかし、音楽の作り方から言って、後期に繋がって行くのは、多分こちらの方かな、とも思います。
実のところ、やましんはこの曲の方が、圧倒的に好きです。
もともと、シベ先生は、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』にもとずくオペラを書こうと言う意志があったようです。
しかし、1894年にバイロイトでワーグナーさんを見て聞いたようですが、その結果、反感の方がどうやら先に立ってしまったらしく、オペラの計画はやめにしてしまい、その用意していた素材を使って、交響詩を4っつ連ねたような、この作品に至ったようです。
しかし、この組曲も、最終稿にいたるまでは、結構大変だったように見受けますが、そのあたりは省略。
『うつうつ』ですからね。
1896年4月13日にオリジナル版の初演。
もともとは、『トゥネラの白鳥』が第3曲で、この『トゥオネラのレミンカイネン』が第2曲だったのですが、1939年の改定により、もともとの順番が入れ替わったようです。
なのでなのか、録音によって、この2曲の順番が異なっていることがあります。
さてこの曲は、テンポ感がなんとなあく、不思議な曲なのです。
『テンポ ラルガメント』と書いてありまして、2分の3拍子ですが、冒頭から弦楽器の細か~いトレモロで、ざわざわと始まります。
これが、えんえんと続くのです。
で、この細か~い音の動きの上に、シベ先生お得意の手法ですが、管楽器が長~い音を入れてゆきます。
このモティーフが、すっごく印象的で、独特の不思議感を演出します。
それから、これまた長~い、クレッシェンドで最高潮にまで持って行ったあと、音楽は再び神秘の中に沈み込み、やがて弦楽器の波の中から、静かで、とっても美しい、異世界的調べが、ふわっと現れます。
そうして、それを引き継いで、フルートがそのメロディーを明瞭にしてゆきますが、このあたりはやましんの背筋が、ぞくぞくっとするところです。
じゅわ~~っと、癒されるのです。
この中間部も、最高まで盛り上がった後、音楽はもう一度、冒頭の霧の中に戻って行きます。
構造的には、単純な形式なのに、弦楽器の巧妙なアンサンブルと、管楽器との音の重なり合いと、世にも美しい調べで、終止緊張感を保ってゆきます。
このあたりからは、すでに、後期の作品にまで繋がって行く、シベ先生独特の作風がみられるようです。
でも、出世作『クレルヴォ』の次の『エン・サガ 作品9』(1892年)にくらべると、遥かに緊張感の持続力が高くなっている気がいたします。
中期から後期に至る間に、全体的にもっと、ぎゅわ~~っと、中心点に向かって、まるで中性子星のように、音楽が凝縮されてゆきます。
その行き着いた先が、『タピオラ 作品112』(1926年)だった、という訳なのでしょう。
全4曲、できれば、一緒にお聞きください。
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