第23話  チェロ協奏曲 二長調  ハイドン

 この作品は、「うつうつ」ではなくて、「うきうき」です。

 次回「うきうき音楽詩編集」の予告編のような感じでございます。

 

 それにしても、「レアオン」にも「地球最後」にも、「うつうつ」にも、なぜかハイドンさまが登場して来なかったのは、これは成り行きというよりも、当然の帰結と言った方がよいかもしれません。

 つまり、僕はあまりハイドン先生を聞かないのです。

 あまりに気高くて、返って自分がみじめに見えてしまうからなのかも知れません。

 「天地創造」など、聞いてみて下さい。

 本当に後光がさすような、偉大な音楽なのであります。


 とはいえ、まったく聞いていない訳ではございません。

 どちらかの大統領様か首相様のようで大変恐縮ですが、たしかに交響曲や弦楽四重奏曲などの室内楽も、かなりたくさん聴くのは聞いたはずなのですが、まあ、あれだけ数がありますと、記憶というものが、よく残らないのですね。

 なので、「そんなもの知らない」とか、「言ってない」とか「まったく聞いていない」とか言っても、まんざら間違いではないくらいになるのです。

 しかし、実際一応聞いたことは、多分、確かなんじゃないかなあ、という気はするのですけれど。

 

 その中でも、特にこの曲は、中学生時代からの、長いお付き合いがある作品でございます。

 いかにもハイドン先生らしい、常に前向きな音楽で、あくまで気持ちよく前進するのでございます。

 聞いている方の、心の苦しみや、悩みだけを助長するような種類の音楽は、ハイドン先生のプライドが、きっと許せないのではないかと思います。

 聞き手の気持ちを活性化させ、楽しくさせ、よりよい明日への希望を抱かせるのです。

 ちょっとだけ、気持ちが陰ることがあっても、その時間は、ごくわずかです。

 

 といって、ハイドン先生の音楽の底が浅いなどとは、決して考えてはいけません。

 そうではないのです。

 『緩徐楽章』が、他の部分に比べて、やや難しくなる傾向があるということなどからも、ハイドン先生が実に思慮深く、きちんと全体をまとめあげているのだ、と言う事がわかります。つまり、雇い主や、聞き手の気分を、けっして損ねない範囲で、言うべき事は言い、しかも全体をうまく調和させ、物事を円満に進め、きちんと解決することの重要さを訴えていらっしゃる・・・・・・これはまあ、あくまで、ぼくの勝手な見方ですけれども、・・・・のではないかと思います。

 もちろん、その時代の音楽家の在り方、という事もあるでしょうけれど。


 対して、破壊児べー先生は、相手の気持ちをぶっ壊してでも、自分の求める物事を、成就させようとします。

 その凄まじい推進力は、他の作曲家の追随を許しません。

 しかし、時に一転して、相手を深く抱擁することも、忘れません。

 そのあまりの落差もまた、聴く人をなぜか異常に感動させてしまうのです。

 共和主義者ベートーヴェン先生は、手法的にはちょっと独裁者的なのです。

 ハイドン先生のやり方は、また違うのです。


 まあ、日本的に言えば、ハイドン先生~モーツアルト先生~ベートーヴェン先生の流れは、信長公~秀吉公~家康公、の流れに相当するものです。

 ただし、ハイドン先生は「・・・殺してしまえ」流ではありません。

 それは、むしろべー先生流に、相当するのでしょう。


 余談ですが、推測するに、モー先生は、相当多額な収入があったのに、経済観念が乏しく破滅的借金財政運営に陥り、べー先生はかなり強引な、異次元的経済運営によって、費用対効果はアンバランスであるなかで、ハイドン先生はひたすら堅実で健全な経済運用を終生変えませんでした。非常に社会人としても、健全であり、そのおかげかどうかはわかりませんが、長生きなさいました。かなり後輩のモー先生の方が、先に亡くなってしまったくらいなのですから。

 時代は変わっても、なお常に模範とすべき方なのでありましょう。


 この曲を聴くと、とても、ぼくの精神のバランスの改善に役立つ気がいたします。ほんとうに「うきうき」してきますから。

 

 時代を超越する、素晴らしい傑作であります。




 


 





 





 











 









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る