各章ごとに、その物語における「よい結末」がしっかり達成されていて、「ああ、良かった」と心地よい読後感を得られました。
主人公やその周囲の人達は、それぞれ個性的ながらもみな優しく良心的で好感を持てます。
そんな彼等の善意が、リアルに描かれた組織や社会の中で、現実でもよく見るような人の悪意に打ち勝ち、人を救う様はとても痛快で、爽快です。
また、ヒロイン達の主人公への真っ直ぐな好意と、その表し方は微笑ましい。
仕事上のトラブルの解決や恋愛話、多様なエピソードがありますが、どれも心が温かくなりました。
VRロボットゲームの開発企業という舞台を見事に描いているところも素晴らしいですが、そうした題材に関心のない方も楽しめる、普遍的な「人間の魅力」に満ちあふれた作品だと感じました。
この作品は「落ち目のVRゲームに必死にテコ入れをする主人公達の苦闘の物語」です。内容は過酷で、次から次へと予期せぬトラブル、障害が発生し、彼らを窮地に追い込んでいきます。
しかし、非常にキャラクターの造形とギャグのセンスが素晴らしく、また主人公がピンチをチャンスにして圧倒的な行動力を発揮し、困難な状況を爆発的な勢いで打開する姿は、とても爽快感に溢れて最高です。
また本作はゲームプランナーの仕事、そしてゲームを製作する上で重要な概念・哲学について勉強する事も出来る、教養小説としても優れた面を持っています。非常に楽しく、かつ勉強も出来るという一石二鳥な、お得感溢れる傑作です。非常にお薦めです。