#12 あがき(04)

 「やはり……」

 ファイアーショットの連射によって、コーディからジーウィまでの氷が溶けて一本の道ができていた。足元の温度を上げて氷を溶かし、火球を打ち出しながら走り出す。

 「勇司くん! 一気にいかないと!」

 「分かってる!」

 ビシッ! ビシッ! ビシッ!

 ジーウィの氷の魔法が放たれるが、こちらのスピードについていけない。大きく外れるか、こちらの火球で撃ち落とされる。そのままジーウィの元に駆け寄り、パンチの連打。その一撃ごとにジーウィの身体にヒビが入る。

 「勇司くん、やっぱり」

 「ああ、ジーウィ……というかギルトの身体がもう保たなくなっている。元々スタミナは弱点だったけど、薬の乱用で今やボロボロ。恐らくジーウィはそのパワーの反動で、操縦者への負担も大きいのだろう。これ以上薬を飲ませる訳にいかない。回復できないほどのダメージを一度に与えるしか……」

 「お願いだから、もう倒れて……ギルト……」

 打撃技と魔法を絶え間なく打ち続けた。弱体化しているとはいえ、ジーウィは堅い。

 ……ウゥゥゥオオオオォォォッ!

 雄叫びを上げ、ジーウィの腕がコーディを掴む。そして、そのまま力任せに投げつけた。まだこれほどの馬力があったとは。しかし、これで終わらせる訳にはいかない。体勢を即座に立て直し攻撃を加えようとするが、距離を取られてしまった。

 「まずい……」

 ドクン!

 また、あの音だ。そしてジーウィの身体が修復され、肥大化していく。

 「ううぅ……なぜだぁ! なぁぜパワーが続かないっ! なぁぜぇ、あの貧弱なコーディオンに押されるぅ。そうだ、そうだ、もっと力があれば……、もっともっと力を寄こせぇ」

 ギルトの叫びがここまで届いてくる。そしてそのひと言ひと言に反応するように夏美さんの悲しみが流れ込んでくる。

 「やめてーっ! もう止めてギルト。これ以上、これ以上やったらあなた自身が壊れちゃうっ!」

 ドクン!

 「あ……あぁぁぁぁ……」

 「また……やったのか……」

 もはや原形を留めないほどに膨れあがるジーウィの身体。もはやパワーに溢れているというよりも、パワーに取り憑かれた哀れな姿だ。

 「もう……駄目なの? あの子を救えないの?」

 重い……。夏美さんの悲しみが重い。彼女の感情がダイレクトに伝わってくる。あれだけ姉妹を欲しがっていたのに……。理解することなく別離れることになるかもしれない。ギルトの敗北は夏美さんの心をも壊すかもしれない……。

 「夏美さん、……あきらめるな……あきらめちゃいけない」

 「でも! でもどうすれば良いの? 今の私たちではあの子に決定的なダメージを与える方法がない」

 「……上手くいくか分からないけど、ジーウィの攻撃を黙って受けよう。こちらが耐え続けて、ジーウィのパワーが急激に落ちたところで一気に攻撃を加える。そこで決定的なダメージを与えられれば僕たちの勝ちだ」

 「そんなの上手くいくの?」

 「すまん。今は方法を思いつかないんだ」

 「……ごめんなさい。私が勇司くんを信頼しなくてどうするんだろう。やってみよう!」

 攻撃を止め、ジーウィと一定の距離を取りながら円を描くように移動を始めた。とにかく今は時間稼ぎ。移動しながらこっそりと氷を溶かしていた。持久戦に持ち込む以上、僕らに水はいくらあっても不足になることはない。ギルトはもはや正常な判断もできなくなっているようで、冷気を放つことを忘れている。

 「……うぅ、イライラする。お前らなんか……お前らなんか、消えてしまえっ!」

 突然、ジーウィが両手をあげると、まるで爆発が起きたかのように大量の氷球が飛んできた。

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