#11 対決(07)
僕は眼を閉じる。今度はコーディが主導権を渡してくれた。
コーディは立ち上がった。しかし、身体が重い。あちこちに痛みが感じられる。ダメージは深刻だ。
「ほう、話し合いは終わったかね。それくらいのハンデはあげないとね。くっくっく……私は慈悲深いのでね」
ガルフに余裕が見える。それだけジーウィとコーディの力の差を感じているということか。腕を組んだまま仁王立ちで動かない。
夏美さんの加入で魔法が使えるようになったけど、いきなりは使いたくない。大剣はすでに折られてしまっている。こちらは満身創痍……あれ?
「勇司くん。回復魔法、いけるみたい。ただ水分が圧倒的に足りない。コーディの身体に水は含まれないから……」
「あぁ、確かに足が楽になっていく。夏美さんはそっちに専念してくれ。水は何とかする」
「はいっ!」
夏美さんの返事を待たずに僕は走り始めた。ジーウィは仁王立ちのままだ。まずは土手っ腹にパンチ。地面が揺れるほどの衝撃が生まれたがジーウィはビクともしない。そして、ゴミでも払うかのように裏拳を当てるとコーディの身体が吹き飛ばされる。
「勇司くん、上手い!」
夏美さんが叫ぶ。彼女は見ていた。僕が微妙に身体を動かし、吹き飛ばされる方向を調整していたのを。そして目論見通り、コーディの身体は大量の水を吹き出す巨岩に激突。半ば水の中だ。ジーウィはただこちらを睨みつけている。
「じゃあ、一気に行くよ! 荒療治だから我慢してね」
夏美さんが高らかに宣言した。
トクン……。
僕の身体を何か暖かい物が駆け抜けてく。何か既視感がある。
「う、んんん……ああぁぁ……」
まるで夏美さんの声が体内から聞こえてくるようだ。
「な、夏美さん? まさか!」
「今……私も……眼を閉じて……コーディの……はぁはぁ……今……ん、勇司くんと意識が……一体化して……」
何だろう、この感覚は。全身の血が入れ替わるような。生まれ変わるような。指が、手が、腕が、胸が、足が、僕とコーディと夏美さんの全てが一体化していくようだ。ボロボロだったコーディの身体が回復していく。
「凄い! 夏美さん!」
「違う……私じゃないの。これはコーディの生きる意思がそうさせてるだけ。私はそれを手伝っているに過ぎないの。分かる、コーディ? 私たちとあなたは、やはり全然違う生き物。だから根本的な治療はできない」
コーディの身体が僕の意思に反して動きだした。しかし、それは逃亡ではない。手をついて身体を起こし、膝を立てた。彼は自分の意思で起ち上がろうとしている。その意思を僕が、夏美さんが後押ししている。コーディにかかる水が身体を回復するスピードが上がっていく。そしてついに両足で立ち上がった。
「そう! いいわ、コーディ! 身体の力を抜いて。もっと私に、私たちに身体を委ねて。じゃあ、行くわよ」
「ん……あぁぁぁぁ……」
コーディの声が漏れる。夏美さんから暖かい何かが溢れ、僕らの身体を駆け巡る。やがてコーディの身体が光に包まれた。やや鈍重だった身体が細く、引き締まっていく。光が消えた時、コーディの身体は純白に変化していた。
「これが……おいら……」
「大丈夫か? 僕と夏美さんの両方が主導権を持っちゃってるみたいだけど」
「おいらは大丈夫。というか、問題があるならにーちゃんとナツの方に起きるはず」
昔なら照れるところだけど、今は何の抵抗もなくその言葉を受け入れられる。夏美さんも同じ感情だ。
「……よし、いくぞ! みんな!」
「うん!」
「はいっ!」
にあー。
コーディは走り出す。
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