#05 白銀のコーディオン(05)
崩れ落ちるロンボーンの背後からルネットが襲い掛かってくる。僕は大剣をやり投げの要領で投げつけた。
ギャーッス!
大剣はルネットに見事に突き刺さり、怪鳥は撃墜された。
「よし! やはりルネットの方が防御力がないな」
「さすが野球部、やるじゃない!」
「いやぁ、野球でバットは投げないけど、上手くいった」
「にーちゃん……、だからあれはバットじゃないってば」
僕らはくだらない会話をしてはいるが、戦闘態勢を崩していない。この戦い方にも慣れてきたようだ。残りのロンボーンが体勢を戻しきらないうちに、背後から奴の腰を両腕で締め上げる。ミシミシっと骨のひしゃげる音がする。
「へっへっへ、暴れても無駄だぜ」
怪声をあげ抵抗するロンボーン。だが、こちらの腕に入れる力が増すたびにその抵抗が弱まっていく。
「ふんっ!」
一気に力を込めると巨獣の腕がだらりと下がった。その様子を見て、もう一匹のロンボーンが向かってくる。どうやらこちらに体当たりをしてくるようだ。
「面白い! こっちもだいぶ慣れてきたぜぇ!」
息絶えたロンボーンを後ろに投げ捨てると、走りこんできたもう一匹の巨獣に向けて右手を突き出す。
ズゥゥウウンンン……。
大地が揺れた。土煙が舞い上がる。その中心にいる巨人と巨獣は全く動かない。力が拮抗しているのではない。ロンボーンのフルパワーをコーディは片手で受け止めていた。強力に掴まれた頭は前進することも、交代することも許さない。
ズズーン!
コーディのパワーに耐えきれず、ロンボーンの太い四肢が膝をつく。その眼は怯え、明らかに戦意を失っていた。僕は背を向け、撃墜したルネットに刺さった大剣の回収に向かう。背を向けた僕を、ロンボーンが襲うことはなかった。ジタバタと手足を動かそうとするが、身体が動かない。そこではじめて自分の足があらぬ方向を向いていることに気付く。 「……すまんな、これが一度相手に牙をむいた者の宿命だ。僕たちも生きるのに必死なんだ」
僕は近くに寄り大剣を振りかぶる。命乞いをするようにか細い声を出すロンボーン。
「……くっ」
分かってる。分かってるんだが未だに躊躇いが残る。そんな僕を見透かしたかのようにロンボーンの口が大きく開く。
クワッ!
僕に向かって火炎が飛ぶ。が、それは最後のあがき。造作もなく避けると僕は大剣を思いっきり振り下ろす。鋼の肉体を持つロンボーンも、恐怖のあまり弛緩した筋肉では防御力はないに等しい。その刃は易々と巨獣の身体に突き刺さった。
「にーちゃん! 油断するな!」
「あぁ。すまん」
攻撃は止まない。コーディのパワーに圧倒されつつもルネットが火球を吐こうしてしている。いち早く察知した僕は右手をルネットに向ける。
ドゥン。
後からモーションを起こしたにも係わらず、命中したのはこちらのファイアーショットだった。夏美さんも全く同じ思考をしており、寸分のズレもなく魔法を放つことができた。つまり、シンクロ度が上がっているということ。スピードも威力も格段に上がっていることが実感できる。
「やるなぁ、夏美さん」
「任せて勇司くん!」
「……にーちゃんたち、すごいな。まるで互いの考えが分かるみたいだ」
「こういうの、阿吽の呼吸って言うのかしらね」
「まさしく同じ釜の飯を食った仲だからな。村に急ぐぞ!」
「はいっ!」
僕は村にコーディを走らせた。近づくにつれ被害が明らかになってくる。
「許せない……パトルさんたちが精魂込めて耕した畑を……」
畑の中央にいた2匹のルネットが飛び立ち、2匹のロンボーンが僕たちに向かってくる。僕が目標を定めると、突然夏美さんが叫んだ。
「勇司くん大変! マカロさんとアモちゃんが襲われている!」
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