#05 白銀のコーディオン(02)
「にーちゃん、ナツ。簡単に操縦方法を教えるよ。といっても眼を閉じればおいらの神経とシンクロするから、念じるだけでいいんだ」
その言葉を聞いて僕らは眼を閉じた。
「すごい!」
「まるで巨人になったみたい!」
眼を閉じるとコーディの視界が僕に伝わってくる。眼を開けるとさっきまでの椅子に座った僕になる。今までにない新鮮な感覚だ。しばらくすると、唐突な違和感が混入し始めた。
「え?」
「あれ? コーディ、これは……」
「ああ、やっぱり。ふたりで操縦するのはおいらも経験ないからね。おそらく、互いの感覚が入り込んでるんじゃないかな?」
「そ、そんな……」
シンクロするまで1秒ほどのタイムラグがあるようなので、まばたき程度なら問題ない。でも違う生き物が体中を這っているようで気持ち悪い。
「じゃあコーディ、私たちふたりいても仕方ないんじゃないの?」
「今回はにーちゃんが操縦、ナツはサポートを担当してよ」
「いいけど……私が操縦する方がいいんじゃないの?」
「ナツには魔法を担当して欲しいんだ。おいらはマジックアイテムでもあるからね。眼を開けたままイメージをすれば、おいらから魔法が放たれるはず。ナツはまだ動きながら魔法が撃てないだろ? これならその弱点がなくなるという訳さ」
「……なるほど、了解。まだまだ私、修行不足だもんね」
「そろそろ急がないと! いくよ! 夏美さん、コーディ!」
僕は眼を閉じて、歩き始めた。
「わっ、すごい!」
巨人の感覚を持った僕に、夏美さんの声が聞こえてくる。
「音だけは本来の僕の物が伝わってくるんだな、コーディ」
「うん。それだけはね。コクピットにいても外音は聞こえてくるけど、微妙なずれが発生するはずだから気を付けて」
「分かった。夏美さん、周りで何かあったら教えてください。まだまだ不慣れだ」
「了解。でも、すごいスピードね。コーディってこんな早く動けるんだ」
僕は慣れるに従い早歩きに、そしてついに走り出していた。巨大な身体と相まって風景がものすごいスピードで後ろに流れていく。
「うん。これがおいらの正しい使われ方なんだ。自分では簡単な動きしかできないしね。どうしても処理能力が不足しちゃうのさ」
「……もしかして今って、勇司くんの身体に何かしても分からないってことよね?」
「そうだよ、ナツ」
おいおい、何言い出すんだ? 夏美さん。
「じゃあ、こんな事し・て・も……あはは、ほんとに気づかない。うりうり」
「おーい、ナツ。そんなことを。あとでにーちゃんに言っちゃうぞ」
コーディの突っ込みが入る。本当に何してるんだ? 夏美さん。
「あー、でもこれじゃ私が操縦したら危険よねぇ。やっぱ、これで正解なのかしら?」
本当に何をしたんだよぉ。僕が苦情を立てようとした瞬間、村から巨大な炎が舞い上がる。
「あぁ! あいつら、村で暴れ始めた」
「急いで! 勇司くん」
「分かってるって!」
全力疾走に入ろうとするが、思ったようにスピードが上がらない。
「にーちゃん、まだイメージがずれてる。自分の身体ではなく、おいらの巨体を動かすイメージに慣れて!」
「あ、そうか……」
コーディのプロポーションは僕よりたくましい。足は僕の方が長い。その身体に合わせた走り方でないと非効率的なのは当たり前だ。
「あっ、良い感じ。その調子だよ、勇司くん」
「へへ、まかせて! そろそろ敵が見えてきた。夏美さんも準簿して」
「了解! 敵は……ルネット5体と、空を飛べそうにない四足歩行なのが5体ね」
「あれはロンボーン。口から火を吐くパワー型。動きは早くないけどルネットとコンビで攻められると、ちょっと面倒。気を付けて」
向こうもこちらに気付いたようだ。
「前方からルネットが一匹、向かってくる。夏美さん、魔法の準備よろしく!」
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