第12話 俺とギャル

 しかし、アイリスの笑顔を思い出しても、胸は痛くならない。

「いやいやいやいや」

 俺は弁当と一緒に買ったペットボトルのお茶を手に取り、一気に半分ほど飲み干した。

「落ち着け、俺……。相手はギャルだぞ……」


 そうだ、相手はギャルだ。

 ちょっと俺のイラストが好きすぎるギャルだ。

 というか……イラストが好きってだけで惚れちゃう俺ってもしかしてチョロすぎ……?


 俺が自分の思考にショックを受けていると、霜田からまたメッセージが届いた。

 可愛いクマのスタンプが『ありがとう』と言っている。


「ん? でもこのクマどっかで……」

 スタンプをタップして詳細を見ると今日アニメーク店で霜田が大量買いしていた“育魔女”のマスコットキャラだった。

 パッと見た感じではアニメのキャラだとは想像しにくいため送ったんだろうと思う。


「流石に気づくって」

 そのあと霜田とは二、三会話した後おやすみと打って会話を終えた。


 その日の晩。

 俺は今朝描いた霜田をモチーフにしたギャル男を心底丁寧に仕上げてイラスト投稿サイト、イラストブにアップした。

 先日描いたアイリスモチーフよりも人気は出なかったが、それはそれでいいと思った。

 なんだか、心の底から楽しんで描けたから。


***


 俺はドキマギしていた。

 放課後、ファーストフード店モックで、俺は一人霜田を待っている。

 何故待っているかというと、霜田が俺と歩いているところをアイリスや他の生徒に見られたくないと言ったからである。

 それを言われた時、微妙に傷ついた。その自分の気持ちに気づき、変に意識してしまったのだ。

 やっぱり俺、霜田のことを……?


「いやいやいやいや、ないないないない」

 俺はメロンソーダを一気にストローで飲む。


「洋次、ごめん。待った?」

 突然現われた霜田に驚いて、ブハッとメロンソーダを吹いてしまう。幸い殆ど飲み込んでいたので吹いたのは少量だったが、少し鼻に入った。……痛い。


「ちょ、大丈夫?」

 キモがられると思っていたので、霜田がハンカチを取り出して俺を拭こうとしてくれて正直驚いた。

 俺は鼻を手で押さえながら、もう片方の手で制止する。


「い、いいって。トイレで顔洗ってくる」


 俺は立ち上がり、トイレへ向かった。

 洗面台で顔を洗う。

 霜田のことを、意識し過ぎてしまう。不自然にならないように気を付けないと。

 席に戻ると、霜田が紙ナフキンでテーブルを拭いてくれていた。


「悪い……」

「え? あ、全然。っていうか、さっきのはあたしが悪いよね。急に声かけたからビックリさせたんだよね? マジごめん」

 あははと笑う霜田が、急に真顔になる。


「顔濡れたままできたワケ? だらしないなぁ」

 そう言ってさっき拭こうとしてくれたハンカチをもう一度差し出された。


「いいって。汚れるし」

 俺が後ずさると、そのまま霜田がハンカチで俺の頬を拭いた。


「別にいいじゃん? ハンカチって汚れたらまた洗えばいいし」

 そう言ってしばらく拭いてくれていた霜田の手が止まった。


「ご、ごめん。いっつもアイリスにやってた癖で……。もう! アンタが自分で拭いて!」

 さっきまで優しく拭いてくれていたのに、ハンカチを押し付けられた。

 その豹変っぷりが面白くて可愛いと思ってしまう。


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