サキュバスパンデミック6

 安全地帯を確保した四人は、空き教室に集まって、とりあえず今後どうするかを決める事にした。

「では、何か案がある人」

 と、ムチャが言うと、レオがサッと手をあげる。

「はい! まずはハリーノと、もしかしたら合流できているかもしれないエスペリアの救出!」

「どうやってだ?」

「わからん」

 そう、皆彼らの安否が気になってはいたが、まず居場所がわからないうえに、既に球にされているか、サキュバスにされているかもしれない。


「ちょっと魔法で女子寮の様子見てみる」

 トロンは目を閉じ、杖に魔力を込めて遠見の魔法を発動させた。そしてしばらくすると、首を横に振る。

「どうなんだ?」

 尋ねるムチャの頭にトロンが杖で触れると、ムチャの頭に現在の女子寮の様子が流れ込んできた。

「うぇ!? これは……ダメそうだな」

 女子寮には女子が沢山いたこともあり、サキュバス達が大量に飛び交っている。いくら戦闘魔法が得意なエスペリアがいても、これでは二人の無事は絶望的だ。続けて男子寮の様子も脳裏に映る。男子寮も女子寮から飛んできたサキュバスにやられたらしく、あちこちに黒い球が出来上がっていた。


 次に声を上げたのはリャンピンだった。

「ねぇ、あのプリムラってサキュバスを捕まえたら私達の勝ちって言ってたんだよね? ということは、私達が勝ったらみんなを元に戻してくれるんじゃない?」

 確かにプリムラは、この鬼ごっこをイベントだのゲームだの言っていた。彼女はブレイクシアやイルマに比べて話も通じそうだし、その可能性はある。しかし保証はないうえに、サキュバス達に見つからず学園の中心部にある時計塔に飛んで行ったプリムラの元に辿り着くのは至難の技だ。


 新校舎には旧校舎のように結界が張られていないのかとヨチに問うと、旧校舎は旧魔王軍との戦争があった時代に、生徒達の安全を確保するために結界が張られたのだが、新校舎は戦争が終わってから建てられたために結界が張られていないらしい。つまり生存者を探して仲間に引き入れるのも難しいという事だ。


「「うーん……」」


 五人は頭を抱え、イタズラに時間だけが過ぎてゆく。いつ旧校舎の結界が破られるかもわからないし、いつもなら珍作戦でなんとかピンチを切り抜けてきたムチャとトロンにも、流石にこの状況はお手上げであった。


「いや、待てよ」


 その時、ムチャの脳裏に電流が走る。

「きゅぴーん!」

「あ、出た、きゅぴーんだ」


 ムチャは皆に、たった今思いついた案を話した。


「えー、それはちょっと一か八か過ぎやしないか?」

「うーん、でももしかしたらいけるかも」

「私はいけると思う! てか、それ以外どうすればいいかわからないし!」

「じゃあ、ヨチの意見も聞いてみよう」


 皆がヨチを見ると、ヨチは腕を組んで考え込んでいる。そしてたっぷり間を開けたのち、クワッと目を見開いて言った。


「いけるわ! ……多分ね」


 こうして、次の行動は案外あっさりと決まった。

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