試合後

 試合が終わり、ポロロは控え室で肩を落としてうな垂れていた。

「ゴメンねギャロ、僕の頭がもっとよかったら負けなかったのに」

「本当だよ。なーにが「僕を信じて」だ。小僧を操った時点でリングアウトさせて、もう一度リングに上げたらそれで勝ちだったんだ」

 ギャロの言葉にポロロは更に肩を落とす。

「しかもボンドストリングも使わずに負けやがって。そういうナメた事はもっと雑魚相手か、お前が強くなってからするんだな」

 ポロロの肩はもはや落ち過ぎてポロリと外れてしまいそうだ。

「そもそもお前はその気の弱さをなんとかしろ。いつも困ったような顔しやがって、だから女にもモテないし対戦相手にもナメられるんだよ。それにお前は……」

 ギャロの説教はしばらく続いた。

「……まぁしかし、栄光ってのは一回負けたからって掴めないわけじゃ無いからな」

「ギャロ……」

「この闘技場でもいままでの旅でも、俺達をこんなに苦しめたのはあいつらが初めてだ。敗北を知ってこそ前に進める事もある。俺もガキの頃に初めてパンを盗んだ時に捕まってボコボコにされてな。それから世界一の盗賊へと歩み始めたってわけよ」

「それはちょっと違う気がするけど……」

 ポロロはいつもの困ったような顔をした。

「もっと強くなれや、じゃないと俺もいつまでも人間に戻れないからな」

「うん」

 ポロロはグッと唇を噛み締めて頷いた。


 コンコン


 その時、控え室のドアが何者かにノックされた。

「どうぞ」

 ポロロが言うと、ドアが開き先程戦ったばかりの相手が顔を覗かせる。

「お邪魔しまーす」

「どーも」

 それはムチャとトロンであった。二人は恐る恐る控え室の中に入ってくる。

「君達……」

「げっ、要塞ガールと操り人形二号」

「二号って言うな一号。 ポロロ、今日の試合良い試合だったな」

 ムチャがポロロに握手を求めると、ポロロは素直にその手を握った。トロンはギャロの手を取りカクカクと上下させる。

「うん。君達、想像以上に強かったよ」

「そりゃこっちのセリフだ。まさか二回戦であんなに苦戦するとは思わなかったよ」

「そういえば四回勝ち抜けばここでお笑いライブができるんだっけ」

「知ってたのか?」

「マニラから聞いたんだ。僕らもマニラからスカウトされたから」

「あいつ二回戦でこんな奴らと当てるなんて、勝ち抜かせる気無いんじゃねーか」

「あはは、マニラは何考えてるかよくわからないよね」

 ポロロはムチャとトロンに初めて笑顔を見せた。

「でも彼は純粋に闘技場を盛り上げたいだけみたいだから、約束は守ってくれるよ」

「だといいけどなぁ」

「ライブ、僕達も是非行かせてもらうよ。今度は社交辞令じゃなくて本当にね」

「あぁ、絶対勝ち抜いてやるからな」

 二人は再び熱い握手を交わした。

「ちなみに、君達まだ本気出してなかっただろ? 感情術のようなものが使えるって聞いていたんだけど」

「ポロロこそ、奥の手その一って言ってたな。つまり最低あと一つはあんなヤバイ手があるわけだ」

「ふふふ、さぁねぇ」

「くくく、怪しいなぁ……」

 二人の握手が徐々に強くなり、二人の間にバチバチと火花が散る。もしかしたらまたいつか再戦する時が来るやもしれないし、来ないかもしれない。

 一方トロンは杖の先端でギャロのボディを叩いていた。

「おい、嬢ちゃん、何してるんだい?」

「何でできてるのかなぁって」

「そいつぁ企業秘密だ」

 どうやらこちらの二人は再戦する気は無さそうだ。

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