鵺ブラスター/ケダモノガカリ

作者 雲江斬太

己は何者だ、何ゆえ刀を振るう――?

  • ★★★ Excellent!!!

江戸時代を舞台としたタイムスリップもの。――と書いたのは便宜上のことであって、本作の主人公が果たして本当に未来からのタイムリーパーなのかは未だ作中で明かされていない。平成の記憶を持ち、江戸の若侍として突如目覚めた主人公――彼が自分自身の正体を推理していくのが、現時点(第二話の七まで)における本作の主軸となっている。

主人公の一人称で繰り広げられる話運びは、軽妙かつ明快で、さらりさらりと読み進めていける「スピード感」を備えている。主人公の不思議な目覚めから、現状把握、謎解きへの乗り出しと、テンポよく進む物語が楽しく、どこの誰なのかもわからない彼に読者は気付けば感情移入している。これは、ひとえに読者への配慮が行き届いた読みやすい文章や、物語を脇から彩る豊富な時代考証のなせるワザだろう。

そして、この作者の作品に欠かせない要素といえば、何といっても格好良い刀だ。
若き剣客ヒーロー達の活躍を描いた「剣豪戦隊ブゲイジャー」をはじめ、刀を格好良く描くこだわりにかけてはカクヨムで右に出る者はいないと思われる大竹氏。氏が満を持して送り出したこの新作もまた、戦国の世から受け継がれた大刀、大振りの脇差し、剣客として鍛えていたらしき主人公の身体つき、そして凄腕の剣士と言われる女傑ヒロインの存在と、随所に刀へのこだわりが溢れている。
未だ自分が何者かを知らず、己の剣の腕についても知らず、実際に刀を振るってもいない主人公。だが、己の出自の謎を追って奔走する中で、少しずつ戦いの気配が彼の背後に忍び寄ってきた感がある。この後の展開では、いよいよ血湧き肉躍る斬り合いが待ち受けていることは予想に難くない。手に汗握る気持ちで続きの更新を待ちたい。

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