残悔のリベラル -under the "in the sun"-

作者 睡蓮たしぎ

これは、始まりの物語。だとすれば――残悔《リグレット》は、終わらない。

  • ★★★ Excellent!!!

【類稀なる言葉の数々。荒廃した世界の中、我々は眩い夢を見る。】

ストーリィは抽象的で、何処か観念的。
ディストピア的世界の中で、夢現を彷徨うかのような不思議な読書体験を味わえる、独特の作風だ。
その言葉は闊達にして饒舌。まさに氏の真骨頂、言葉の魔術師の本領といったところ。


荒廃した世界の中、人工的に作られた緑や太陽がある、巨大建造物『DUM』。
主人公、雪白ホムラは、その施設の中で教鞭を執っている。
受け持つ生徒たちは個性的。しかしながら、彼ら生徒たちは――、臓器になるためだけに産み出された人工生命体『ヒュム』なのだ。
彼らを管理し、育成することが主人公のつとめである。


循環を促す者《コンダクター》、予定調和の雨《ハーモニアス・レイン》、室内型太陽《イン・ザ・サン》、そして――、大禍《ヴォルテクス》。
ルビが多く個性的だが、これぞ類稀なる言葉のセンスを持つ氏ならでは。

未だストーリィは序章か。本格始動が楽しみでならないが、まずは早めにこの世界観を十二分に堪能して頂きたい。


2018/01/05:追記
ストーリィは加速する。恣意的なキーワードを多数散りばめて。しかし、なかなか全容は見えて来ず。どんどんと深化する表現力と構成力は、読むものを虜にして離さない。
もっと、もっと、もっと魅せてくれ。天才たちの饗宴を。そして、凡人の足掻きを。


2018/01/30:追記
読了に寄せて。
非常に考えさせられる構成に、唸らされるばかりであった。最終的に下された、彼女たちの選択《リベラル》は、恐らくは、正しい。
ただ、それが単なる神の鉄槌《デウス・エクス・マキナ》のような正しさに支えられるのか、人間的な尊さ《ヒューマニズム》によるものなのか――、答えは、まだ先にある。世界との理解は、遠いようで、近い。

これは実のところ、彼女が始まる物語。だとすれば。彼女の、彼女たちのこれからが、楽しみでならない。

残悔《リグレット》は、終わらない。

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