第78話 子供
犯人をブッ殺すと息巻いている魔法少女達に聞かれないよう、彼女を会議室から連れ出し、私の机に座らせる。
大賀補佐に伝えると、呼びかけで課の職員が私の机周りに集まり、彼女の言葉に耳を傾ける。
茶色のフェルト生地の髪をして、白いブラウスにオレンジ色のスカートを履いた彼女は、大きな人達に囲まれ、少し萎縮しながらも、コップから水を飲み、話し始めた。
「わたしの名前は山井 礼子と申します。何も取り柄のない、平凡な専業主婦なのですが、夫と二人で暮らしておりました」
私は彼女の話す言葉をメモ帳に書き出す。
「夫は1度離婚をしておりまして、わたしが再婚相手になるのですが、夫と前妻との間に子供が1人いまして、わたしは会ったことがないのですが、離婚の際に前妻とは非常に険悪な関係になってしまい、、、前妻と完全に縁を切り、親権も放棄したとお聞きしておりました」
彼女は水を飲み。両膝を抱えて、顔を俯けた。
「ある日の夜です。わたしは夫とソファーに座って映画を見ていたんです。お互い映画を見るのが趣味で、それキッカケで知り合ったくらいです。金曜日の夜は隔週でお互いの見たい映画を交互に見るのが日課になっていまして、その日はわたしの番でした」
その日のことを思い出し、彼女の身体が小刻みに震える。
「映画の中盤で声がしたんです。振り向くと女の子が立っていました。怒りに満ち溢れた、恐ろしい形相をしていました。その子が何か叫んだと思います。テレビが割れ、火花が散りました。その子が喚くたびに、部屋の食器やライトが砕け散りました」
「その子が旦那さんの子供ですか」
静かに聞いていた課長が、落ち着いた口調で確認した。
彼女は両膝抱えたまま頷く。
「間違いありません。この姿にされる前に、夫が呼んだんですよ。『メイなんでここにいるんだ』って」
彼女は顔をあげる。
「夫と前妻の娘、栗山 メイが犯人です」
床に物が落ち、音が鳴る。
それは、私が持っていたペンとメモ帳だった。
「メイちゃん、、、?」
部屋の全員の視線が私に注がれる。
昔の記憶が脳裏で目まぐるしく呼び起こされる。
「私、その子と同じ施設で育ちました」
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