第63話 ブーム

その夜、1度家に帰ってから、指示された通りにあまり目立たない私服に着替え、再出勤し、面長のツヨシが言っていた、記憶の最後にある路地に、私と大賀補佐はいた。


そして、私の隣には大森さんが嬉々とした表情で立っている。


「初めての仕事が小夜ちゃんと一緒で良かった! 頑張ろうね!」


そう言って私の顔を見る大森さんの眼帯には「邪気眼」と書かれている。一体何個の眼帯を持っているのだろうか。


「それで、私は何をすれば良いんですか?」


彼女は何も聞かされていなかったので、説明をする。最後の目撃者の化け猫見習いを探して事情聴取をするために、霊感がある人材が必要だった。


そこで、常人では見えないものが視える、新人の彼女が派遣された。大賀補佐の話ではどこの課も人手不足で、新人であろうと、何でもやらされるものらしい。


「化け猫見習いのミカンさんですか」


大森さんは考え込んだ。

「猫って柑橘系ダメじゃなかったでしたっけ?」


「みかんの皮に含まれる成分のリモネンが駄目です。猫にとって有害になりえます」

大賀補佐がつぶやきに対して丁寧に答える。


「それが原因で死んだって、ミカンさん言ってましたよ」

小さな水筒を抱えた人形が、大森さんに抱えられながら口を開ける。


「自分の死因を名前にするんですか?」


「昔流行っていて、今再流行してる。死因を名前にする事が第2の人生を始めるにはクールらしいよ」


案内人として面長のツヨシを連れて行く事になったが、人通りの少ない場所だからといって、人形が歩き回るのは人目がつき、異様である。


そこで大森さんが抱えているのだが、ゴシック系の私服に眼帯も相まって、人形を抱えているのが人目がつくことには変わりがないが、違和感を感じさせることはないだろう。



「ちなみに、今霊界ではホットパンツとディスコがリバイバルブームだ」



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