第42話 仕事道具
ドワーフの魔法使いは立派な白い口髭を蓄え、小太りで、身長は高いとは言えなかった。くたびれたTシャツとラフなズボン、ビーチサンダルを履いている様から、オフのサンタクロースと説明されても納得できる印象だった。
彼は私の事を物珍しく見つめる。
「新しいルーキーちゃんかい?」
ちゃん?と思いつつも「はい」と答える。
「そうか、そうか、色々大変だと思うけど、気楽に頑張りなさい」
そう言いつつ、ごそごそとあっちやこっちから、様々な道具を引っ張りだしては、私の横にある机に並べだした。
「イノさんは僕たちが仕事をする上で、必要な道具を揃えてくれるんだ。危険な仕事があるし、魔法に対する対処は魔法道具に頼らないといけないからね」
「やっぱり、危険な事もあるんですね」
私が訊くと、先輩は視線を逸らし、しどろもどろに答えた。
「それは、時と場合によるかなかな」
「よし、揃った」
イノさんが手をパンパンとはたきながら、満足げに言った。
「これが、当店が自信を持って紹介する、駆け出しルーキースターターキットだ」
机の上には大小5個の商品が並ぶ。
イノさんはその中の1つを取りあげた。
「これは安全作業着」
濃い緑色をしたセパレートの作業着だ。
「対魔法繊維を織り込んでいるので、魔法から身を守る。本当にヤバい魔法は防げないのでご注意」
そう言うと、私に手渡した。
「次が安全靴」
黒色のスニーカータイプの靴だ。
「つま先と足裏に鋼材が入っている」
私に渡しながら、忘れていたように付け加える。
「魔法の鋼材が入っている」
「次が安全鞄」
普通の黒いリュックサックを持ち上げ、肩掛けショルダー2本を片腕にかけ、鞄本体を身体の前面にだす。
「こうすると、盾になる」
「次が安全帽子」
つばの付いた黒色のワークキャップを持ち上げ、頭の上で軽く被る動作をする。それから、つばを手で摘んだまま、顔の顎下まで引き下ろす。
「こうすると、顔を守れる」
私はおちょくられているのだろうか。
と、心の中で半信半疑思いつつも、両腕でポンポン渡される道具を受け取る。
「最後に、唯一、取り扱い注意の道具」
手のひらサイズの黒色をした棒状の物を取り出した。
「これは、『超・攻撃型万年筆』」
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