第24話 酒癖

相撲、、、とったのも?

てへへと、後頭部を掻いたまま、固まった。



やばい。最悪のパターンだ。



「アリア先輩とぶつかり合った時の勢いは凄かったよ!力と力のぶつかり合いで、お互い一歩も引かなくて」


「でも、あれは相撲に近い何かだな」

今井君がやっと起き上がり、大きく伸びをする。


「小夜ちゃん、執拗に足技かけようとするし、最後はアリア先輩の背負い投げで勝敗ついたし」



背中が痛い理由がわかった。



私には悪い酒癖がある。

アルコールの一定許容量を超えると、相撲をとる。向かい合う者には、老若男女勝負を挑む。



学生時代、サークルの後輩からは「獲物を狙う虎のようでした」と、真顔で言われた。



私の事を好意的に思い、小洒落たお店に誘ってくれた方とお酒を飲んだ時は、それ以後プッツリ連絡が来なくなり、後日キャンパス内で見かけた彼は松葉杖をついていた。



「どうしよう、恥ずかしくて出勤できない」



熱くなる顔を両手で覆う。

ポンポンと大森さんが背伸びをして、私の肩を軽く叩く。


「ほら、これで恥ずかしさを忘れたら?」


片手にはウイスキーの小瓶を持っている。


無言で髪をわちゃわちゃと掻き回してやる。髪からはホテルのシャンプーの匂いが香る。


「やめて、やめてー」


言葉で言いながらも、どことなく嬉しそうなのが、余計に腹立つ。



「おい、お前ら」

背中の砂を払い、今井君は言った。



「遊んでないで、急がないと遅刻するぞ」




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