ニート力学

作者 怪屋(あやや)

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★★★ Excellent!!!

主人公である勇が6年前にタイムリープする……といった話なのですが、最後の展開が本来のテンプレや読者の期待を裏切る結末で、人間という生き物を内面から深く描いた作品だと思いました。

主人公はニートで、そこから高校時代にタイムリープをします。
序盤は、2011年の懐かしい作品等が出てきて、主人公が自分の力について考察する姿が、とても興味深いのですが、次第に明かされる自分の能力と別世界の部族との関係性が、最後の展開に深くかかわってきます。

SF的な要素もあり、ヒューマンドラマのようなボリュームのある作品です。

私は時間的解釈をニートがしているから、ニート力学というタイトルなのか……と勝手に思い込んでいました。
作中にも登場するのですが、シュレーディンガーの猫のような解釈を主人公がしている所があって、量子力学楽しい的な……なんか、そういうものをイメージしていたのですが、最後の展開で、なんとなく、ニート力学というタイトルの意味も分かったような気がします。



主人子が思いを寄せる麻呂や、空しい存在であるクオリア、そして、主人公の妹である希海。それぞれが別の存在であるのに、主人公によって悲劇を迎えてしまうのが、この作品のテーマを引き立たせているようにも思えます。

★★ Very Good!!

ニートの先鋭性と保守性が第1話の段階で明確に表現されている。現実への繋がりを断ち切れないが、世界と隔絶したプライベートとしての自室を保持し続け、家族の非難にはただ耐えるのみ。
救い難いのが主人公が時間操作を行う能力を得て過去に戻ったところで、そのニート気質が一切変わらないところだ。改善する力を得ていながら絶望的な過去をわざわざなぞろうとするのは典型的な鬱病的自動思考の産物である。タイムトラベルなぞしている場合ではない。すぐカウンセリングを受けにいくべきだったのだ。勇くんはいつ勇気を出すのか。出せないのか。出さないのか。出したくないのか。出す度胸もないのか。

気になった点があるとしたら、わざとだとは思うが実際に存在するアニメや漫画、人物をふんだんに投入している事だ。個人的には必然性を感じない。「ああーあのアニメあの頃かー」という方に思考が流れて、物語の方に頭がいかなくなる。架空の作品を用意するべきではなかったか。

展開がSFじみてきたのでどこに着地するかはわからないが、今後を見守りたい。

★★★ Excellent!!!

オタクでニートの青年がタイムリープする話――と聞くと、多くの方はWEB小説界に溢れるテンプレチート系の作風を想像するかもしれないが、本作はその真逆を行く本格小説である。
ページを開いてまず驚かされるのは、作者名やタイトルの印象からは想像もつかなかった、文章表現のレベルの高さだ。この作者は余程多くの文芸作品を読み込み、また書きこなしてきたのだろう。季節ごとの景色が目の前に立ち上ってくるような風景描写や、シニカルなレトリックを多用した心情描写の妙は、一朝一夕の鍛錬では身につかない玄人の域に達している。

ストーリー構成も秀逸で、読者を引き込むパワーを持っている。
心得のある読者であれば、第3話まで読んだところで「先が読めた」とほくそ笑むことであろう。主人公が社会との関わりを絶ってニートになった理由や、タイムリープの能力でこれから何をするのかは、第3話の末尾の一文を見れば誰の目にも明らかであると。
だが、この先の展開において、作者はあっさりと我々の陳腐な予想を裏切ってくる。読者の誰もが想像するであろう、この先の主人公の行動の動機――それと正反対の行動を主人公に取らせるのが、この作品であり、この作者なのだ。それでいて、話の展開に唐突感がなく、この主人公ならではの行動原理を読者に理解させ、彼の鬱屈した感情や諦観を追体験させた上でその衝撃の展開に話を収束させるのであるから、作者の話作りの技量は相当なものである。

さらに、本作の現実感を支えているのは、行き届いた「時代考証」だ。この言葉は歴史物に関して使われるのが普通だが、本作は、主人公がタイムリープした6年前――即ち2011年当時のオタク界隈の出来事を徹底的に考証し、「ソードアートオンライン」や「進撃の巨人」といった現実の作品名を豊富に用いて、我々読者に「あの頃の空気」をリアルに思い出させてくれる。
アニメ、漫画、ラノベ、アイドル…… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

主人公がニート、という設定は意外とありがちですが、そのニートはタイムスリープ能力を有している、と。そしてタイムスリープをすることによって生じる問題もきちんと理解している。

そんな主人公にも関わらず、時を戻してしまう、という物語に驚きつつも、面白く、読み込みました。

また途中途中に、身近なゲームやラノベなどその時期に流行ったものが登場するのも、この作品の魅力だと思いました。

クオリアと出会ってからのストーリーは、主人公に変化が出てきたようで、終わりへの持っていき方が良かったと思います。

とても面白い作品でした!