第12話 サイコパス


〜 ある日の放課後 〜


ガラガラッ


部長「あ、居た居た! もー、突然辞めちゃうなんて酷いジャーン」

男「ぶ、部長⁉︎」

女先輩「……。何をしに来た」

部長「何って、大切な部員を連れ戻しに来たんだよ! 何で辞めちゃったのー? 俺、女ちゃんのことが心配で心配で夜も眠れなかったんだぜぇ?」

女先輩「なぜ君が私のことを心配する。帰ってくれ、私たちは忙しいんだ」

部長「いーや帰らないね。大切な部員のことだからな、無理矢理にでも連れ帰るぜ! ほら、そんな奴なんか放っといて文芸部に戻ろうよ! 大丈夫、誰も怒ってなんか無いから!」

女先輩「……言いたいことは山ほどあるが……とりあえず、私は文芸部に戻る気は無いよ。あそこに居ても得るものが無いからね。時間の無駄だ」

部長「えー? あ、そっかそっか! 俺、女ちゃんのことあんまり構ってあげれなかったもんね! 分かったよ! 俺、これからは女ちゃんといっぱいお話しするようにする! でもさー、俺、これでも孤立しがちな女ちゃんをチョー気に掛けてたんだぜー? いっつも一人で何か書いてるしさー。女ちゃんも、これからはもうちょっと交流的になるべきだと思うなー」

女先輩「……」

男「……」ドンビキ

部長「つーかさ、こんなところでそんな奴と一緒に居るなんて、それこそ時間の無駄でしょ! オレ、女ちゃんに色々と楽しいこと教えてあげるよ! 女ちゃんは知らないだろうけど、オレ、これでも一途なほうで__」

女先輩「聞き取れなかったようだからもう一度言うぞ。私は、文芸部には、戻る気が、ない。君と遊ぶ気もない。私と男くんは君ほど暇では無いんだ。分かったらさっさとその扉を閉めてくれ」

部長「……あのさー。なんでここまで言っても理解できないのかなぁ。つーかマジ、さっきから何だよ、男くん男くんって……何でそんな奴と……」ハッ

部長「あー!」

男「⁉︎」ビクッ

女先輩「……」

部長「分かった! 分かったよ! 女ちゃん、そいつに弱みとか握られてんでしょ!」

女先輩「……は?」

男「お、俺⁉︎」

部長「大丈夫だって! どんなことだろうとオレが守ってあげるから、安心して全部話して__」

女先輩「帰れ」

部長「…へ?」

女先輩「即刻出て行きたまえ。二度とその面を私に見せるな、不愉快だ」

部長「お、女ちゃーん? どうしたのいきなり……」

女先輩「私が男くんと一緒に居るのはね、彼が貴様なんかよりよっぽど魅力的だからだよ。男くんは貴様なんぞ足元にも及ばないほど素敵で、格好良くて、愛おしいということだ」

男「ちょ⁉︎ い、愛おしいとか何言っちゃってんですか先輩!」

部長「……は、はぁー? な、何言っちゃってんの? 訳分かんねーんだけど、オレがこんな奴より__」

女先輩「男くん。失礼するよ」グイ

男「へ? ちょ…」


チュッ


男「……」ボッ

部長「んな…っ!」

女先輩「……っぷは。劣悪だと言っているんだよ、貴様のことを。二度と言わせるな低脳。分かったらさっさと出て行け」

部長「……」ポカーン

女先輩「出て行け!」

部長「……っひ。ひっ、ひぐ、う、ぐうううううう!」バタバタ

女先輩「……ふん。気色の悪い奴だ」バタン

男「…………」

女先輩「……ああ、さっきはすまなかったね、男くん。頭に血が登ってしまって……いや、言い訳はよそう。今のは全面的に私が悪い。すまない」

男「え? あ、ああ。今のアレね……」

女先輩「どんな償いでもしよう。腹だって斬る所存だ。どうか許してはくれないだろうか……この通りだ」

男「ちょ、顔上げてくださいよ先輩! キスくらいで大袈裟ですって! 別に俺、そんな気にしてないんで……」

女先輩「……しかし、無理矢理唇を奪ってしまったんだ。いくら詫びても詫び足りない__」

男「いやいやいやいや! その、嫌だったどころか、むしろファーストキスが先輩でちょっと嬉しかったくらいなんで! 逆に僕のほうこそ先輩に何かお礼したいくらいですよ!」

女先輩「……えっ」

男「あっ」

女先輩「……そっ! そっそそそそうか! いや、その、嬉しかったのなら私もファーストキスを捧げた甲斐があったというか、お互いにお互いが初めてだなんて夢のようというか……あっ」

男「なっ、なななななな」

女先輩「ぎゃー! わ、忘れてくれ! 忘れてくれー!」

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