第百六十八話 アンドロイドは電気あん摩でナニをするのか?④
ぜんっぜん、思い浮かばない。
可愛い名前ってなんだ? だいたいその人のことを可愛いと思うのに名前だけで判断なんてしないだろう。相手の性格なんかを知って、初めて可愛いと思えるんじゃないのか?
そんなね。名前が可愛いからその人も可愛くなるってわけではない。その逆もまた然り。名は体を表すのではなく、その人の為人を知ってから名前も容姿も可愛くなると言うものなのですよ。
なんて言ったところでマーク2は納得するわけないし、べつに可愛くなりたいと言っているわけでもないしな。
「あぁぁぁぁぁぁ、いざ名前を考えるとなるとなかなか出てこないもんだなぁ。ラノベの作者とかってどうやって名前考えてるんだろう?」
バックヤードで悩んでいると誰かに後ろから肩を叩かれる。叩かれた方へ振り返るとほっぺたに何かが刺さった。
「くだらにゃいことひてんじゃねえよ」
ぐりぐりと俺のほっぺに人差し指を突き刺しながら笑っているのはぽっぴんであった。
ぽっぴんは後ろ手に隠し持っていた紙切れを俺に差し出すとドヤ顔で言い放つ。
「べんりさんが悩んでいるだろうと思って、賢い私がいくつかの候補を考えてみました」
「ほぉ。どうせおまえのことだから。プリンなんちゃらとかそんなのばっかなんだろうけど、まあ参考までに見てやろう」
紙を受け取るとそこに書いてある名前に目を通す。
しんどらっしー。ぽぬぽぬぷりん。まくべ。ガンダ○マークⅡ。パルルレムピリア。フジコ。2Bt。
等々、完全にふざけているとしか思えなかった。
「最後のやつはなんて読むんだ?」
「トゥービートです」
「ほぉ、後々国際的な映画監督になりそうだな。あと、某ゲームのキャラに見た目が似てるからやめろ」
俺の突っ込みに首を傾げ不思議そうな顔をするぽっぴんであるが、絶対にわかっててやってるだろうおまえ。
「どれもこれも話にならないな。はっきり言ってソフィリーナと同レベル、おまえ真面目に考えてないだろ」
「むむっ!? なにを言っているのですか。どれも、世のおしゃんてぃな若者達に受けそうな名前じゃないですかっ!」
全然受けそうじゃねえよ。どれもこれもパクリ丸出しの名前な上に、途中からめんどくさくなってそのままのやつもあるじゃねえかよ。
そんな中、俺はある名前に気が付く。
“パルルレムピリア”
これはポッピヌプリムやプリヌピアプリムという、ぽっぴんやティアラちゃんのシンドラント名みたいじゃないか。俺はその名前を指差しながら言った。
「ぽっぴん。これはどういう意味の名前?」
「ああ、それですか。なんでしたでしょう? 忘れました」
「おいおい、自分で考えといて忘れたのかよ。というかなんか意味あったのかこれ?」
「意味と言うか、なんか聞いたことのあるような感じだったのですが……う~ん」
腕を組んで悩み始めるぽっぴんであるが、それがなんだったのかまったく思い出せないでいた。
結局そのままいい案はでなかったのだが、俺はその名前からなにかヒントを得た様な気がするのであった。
この後用事があるのでと、ぽっぴんが出て行ったあとも俺は漫画や雑誌を読んだりして、なんか良い名前はないかなと参考にしようと思うのだが。どれもこの異世界でピンとくるようなものではなかった。
それよりもやはり。“パルルレムピリア”これが頭に引っ掛かって仕方がない。なにか、シンドラントに所縁のある物とかから取ればいいのかな? そう思い俺はA25に相談してみることにした。
「なるほど……ポッピヌプリム様がこれを……」
ぽっぴんの考えた名前の候補を見せると神妙な面持ちになり黙り込むA25。そして俺の目を見つめると、真剣な顔で言う。
「べんりさんは、ポッピヌプリム様のことをどう思いますか?」
「え? なんだよ急に? どうって……まあ変な奴だなとは思うが、一緒に居て飽きない奴だとは思うけど」
「そうではなくて、ポッピヌプリム様の持っている知識についてどう思われますか?」
A25の質問で俺はようやく気が付く。そういやあいつのあの知識はどこで学んだものなのだろうか?
物質転移装置を作ってしまったり、遺跡の中の事や兵器の事など。それだけでなく14歳の頭脳とは思えないような計算式を思いついたり、魔法だって一体幾つ扱えるのか見当もつかない。
「あれは、ポッピヌプリム様が眠っていたポッドと関係があるものです」
「え? そうなの?」
「あのポッドは生命維持の機能に加えて、娯楽機能や学習機能、あとついでにマッサージ機能なんかも付いていて寝ながらにして色々と快適に過ごせてしまう、それはもう夢のようなマシンなのです」
マジかよっ!? いいなぁ。寝ながらゲームしたりアニメ観たり音楽聞いたり映画観たり、ついでに疲れたらマッサージまでしてくれるなんて、夢のようなマシンじゃないか。今度持って帰ってこれないかなそれ?
「なるほどな。つまりぽっぴんはあの中で眠りについている間、成長は止まっていたけれど睡眠学習を行っていたと言う事か」
「はい、その通りです。1万年以上に及ぶ膨大な知識です。彼女はまだ意識してその知識を引き出すことができませんが、いずれそれをコントロールできるようになれば。本当に大賢者と呼ばれるような存在になれるかもしれません」
ふむふむなるほど、内に秘めた潜在能力は未知数ってことだな。
「で、それとパルルレムピリアとなんの関係が?」
俺の質問にA25はまた黙り込み、少し躊躇しながらも俺にヒントをくれた。
「プリヌピア様から預かっていたDVDをもう一度ご覧になってみてください。もう一度、注意深く見て頂ければきっとなにかに気が付くはずですよ」
そう言うとA25は、お夕飯の準備をしなくてはならないのでと立ち去るのであった。
つづく。
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