第四十二話 第二宮とんで第三宮のふれんず?①

 第一の宮の敵は中々の強敵だった。

 鳳凰幻魔拳や幻朧魔皇拳のような、精神ダメージ系の技ってのは本当に始末が悪い。特に戦いに勝利した後の仲間との空気が悪くなる。

 あれからなんと言うか、俺が話しかけても皆が余所余所しい感じなんだよね。

 そりゃあ無様にも取り乱して女子に対してあんなことを言った俺が悪いけど、なんか余計惨めになるからマジでやめてください。


「つ、次の相手はどういう相手なんだろうな?」

「さあ……どんな敵が来てもこの聖剣の前では関係ないですけどね」


 ローリンに話しかけるが素っ気ない返事が返ってくる。


「ぽ、ぽっぴん? 今日は思う存分魔法を使ってもいいんだぞ?」


 優しく話しかけるのだが返事はない、しかも俺から距離を取って小さい声で「キモ……妊娠するから話しかけんなよ」とか言ってるし。マジ凹む。


「つ、次はソフィリーナが戦ってみるか?」

「童貞が感染るから話しかけないでくれる」


 病気みたいに言うんじゃねえ童貞は感染らねえよ! どうやったら童貞が感染るんですかあ? 逆に教えてくださいっ!

 くっそぉ、こいつらなんなんだよ! 俺はあの変態メイドと戦って精神的にずたぼろにされたってのに、死体を蹴るような真似しやがってぇぇ。


「ああそうかよっ! もういいよビッチどもがああっ! そんなに俺が気持ち悪いかよっ!? だったら本当に気持ち悪い奴になってやるわ! おらあああ乳揉ませろやこのヤリマンビッチどもおおおっ!」


 最早、最低を通り越して最悪の男に成り果てた俺に追い回されて逃げ惑う女ども。おい待てよそんなマジで嫌そうに悲鳴を上げながら逃げるんじゃねえよ。もう死にたい。



 ぎゃあぎゃあ騒ぎながらも次の宮へと到着すると中に入る前に俺は再度確認した。


「おそらく次の相手はパワー系の相手だ」

「なんでそんなことがべんりくんにわかるんですか?」


 ローリンが怪訝顔で俺に尋ねてくる。まあお前らにはわからないだろうがな、流れ的に次はそういう奴なんだよ。わかるやつにはわかるからおまえらは俺の言った通りにしていなさい。


「まあそういうお決まりなんだよ。だからって力ばかりに気を取られていたら足元を掬われるぜ。パワー系だからって動きが遅いとは限らない、逆に奴の拳速を見切ることができなければ苦戦を強いられるだろう」


 俺の言葉に真剣な眼差しで頷くローリン。そこに感心した声で付け加える獣王。


「へぇ、よくわかってるじゃねーかおまえ。魔闘神ってのはなにか一つの技に秀でているだけじゃ務まらないわん。全ての能力が秀でているからこその最強ってことをよく肝に銘じておくわん」



 というわけで、さっそく中に入ってみる。そこに待ち受けていたのは見たことのある奴だった。


「ふははははははは! よく来たな女神一行! もう知っているだろうがもう一度名乗らせてもらう、俺の名はブッチャーハシム! この第二の宮の守護を任された魔闘神の一人だ!」


 大声で笑い、腕組みをしながらその巨躯を豪快に揺さぶり歩いてくる破壊王。


 あいつ四貴死とかいうやつじゃなかったの? 足元を見ると獣王が物凄く渋い顔をしていた。気持ちはわかるよ。

 するとローリンが前に出てブッチャーに向かって宣言する。


「ブッチャーハシム、次の相手はおまえか。なるほど、初めて会った時から獣王とは一味違うと思っていた。いいだろうっ! おまえの相手はこの聖騎士ローリンがしてやるっ!」


 おお! なんかいつもと感じが違うぞ、これは本気モードか? ローリンかっこいいっ!


「ふははははっ! 聖騎士ローリン、相手が戦士であるならば女子おなごであろうと俺は一切の手加減は」

「エクスっ! カリボーーーーーーーーーーーーーーーーオオオオンっ!」


 ローリン必殺の一撃がブッチャーを飲み込むと爆発四散するのであった。


「相手の実力がわからないのであれば先手必勝に限ります。さあっ! 先を急ぎましょう」


 うわぁ……。えげつねぇ、マジでえげつねぇぇぇぇ。ローリンってなんと言うか、卑怯って言うか、生き残るためには容赦ないところがあるよな。きっとこっちに来てからの一年間、マジで死と隣り合わせのサバイバルな生活を送ってきたんだろう。こいつたまにすんげー冷たい目をしている時があるんだよ、皆知ってた? 絶対にあれは人を殺したことのある目だね。まあ本人にはそんなこと怖くて聞けないけどね。



 と言う感じで俺達は第二の宮を攻略した。ブッチャーハシム、噛ませっぷりだけはあの人を彷彿とさせてくれる相手だったよほんとに。



 先を急ぐ俺達、途中ローリンが俺に尋ねてくる。


「べんりくん、次の相手はどんな奴なんでしょうか?」

「そうだなローリン。たぶん次の宮には誰もいない、流れ的にはそうなっているが油断は禁物だ。場合によってはいきなり大神官ビゲイニアが出てくる可能性もあるから用心しておくに越したことはない」

「そ、そうなんですね……べんりくん、なんだかちょっと頼もしく見えてきましたよ」


 ふふふ、まあな。ビゲイニアが黒幕だと言うのならおそらく次の宮は空だ。まあ双子の弟とかが居てそいつが護っている可能性も微粒子レベルで存在する。まあその場合は兄に対する劣等感コンプレックスなんかを突いて、精神的に追い込んで叩きのめしてやろう。


「それでは次は私が行きますよっ! たのもーーーーーっ!」


 ぽっぴんが鼻息を荒げて乗り込んで行く。まあここならどんだけ強力な魔法をぶっ放しても問題ないよな。そうやってストレス発散させてやらないと、いつ爆発するかわからないから今日は思う存分やらせてやろう。


 そうして中を進んで行くとそこに待ち受けていた人物を見て俺は戦慄した。



「あれぇ~よぐ来たねぇ。久しぶりのお客さんだぁ。紅茶淹れるからちょっと休んでいきなよぉ」



 え? アル……パカさん?



 つづく。

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