第十話 責任
その後、ジルに連れられて、ジュスト達の飛行艇に戻った俺だが、甲板に降ろされた後、布みたいな物をジルから渡された。胸隠せってか? というか、お前ドラゴンから人に戻ってるのは良いが、なんで裸だ?
「どうしたんですか?」
「いや……お前、なんで裸なんだよ」
「そりゃぁ、あの服では竜化した時に破れますから。脱いで変身するしかないんです。それと、戻るのは簡単ですが、変身するには時間がかかるんです。だから、助けに行くのも時間がかかったのです」
いや、それは良いんだけどよ。裸がマズいんだっての……お前、10歳くらいのくせして、なんてものぶら下げてんだ! 男だった時の俺のよりもデケぇ……マ、マンモス級。本当に10歳か?
「そんなに見ないで下さい」
「だったら早く服を着ろ!」
「マリナさんもね」
分かってるよ。だから今、渡された布で、胸を隠すようにして巻いてんだろうが、だけどやっぱり、こういうのは苦しくなるな。女ってのは大変だねぇ。
それにしても、あいつがあんなもの持ってるとか……それはそれで男らしく……だからなにを考えてんだ、俺は!! あいつは良くて舎弟だ! うん、それくらいならしてやっても良いな。
そんで、それをなにニヤニヤしながら見てんだ、ジュスト!
「なに見てんだよ? あぁっ?」
「いやぁ……何というか、その反応初々しいですねぇ」
「……うっるせぇ!」
あんまりこいつを調子に乗らせたらダメだ。とにかく、俺は必死に誤魔化すが、顔が熱くなってるのは誤魔化せてねぇか……。
「さて……冗談はさておき。マリナさん、あなたは自分でやった事がどういう事か、分かってますか?」
そして、ジュストはそう言いながら、俺の方に近付いてくる。因みに、ジルの治癒魔法のせいで、俺はまだ立てないでいる。腕とかは動かせるようにはなったが、この治癒魔法は、ちょっと使いどころに注意だろうな。
「あなたが軍人なら、軍法会議ものだったのですけどねぇ。今は客人というか、囚人扱いですからね。軍法会議にかけられるのは、私の方なんですよ~」
「そうかい……そりゃ良かっ……って、何そっちの軍服の上着を俺に着せてんだ? おい」
「いやぁ、一時的にでも君を軍人にすれば……と思ったのですが、無理そうですねぇ」
「……ったりめぇだろうが!」
こいつなに考えてんだ? 軍法会議にかけられたくないのは分かるが、俺を売ろうとするんじゃねぇよ!
「まぁ、良いでしょう。言い訳はいくらでもありますし、あなたの能力の観察が出来ましたからね。それを元に、なんとか回避しましょうか。ですが……あなたには少~しばかり、お仕置きを受けてもらいましょう」
「いっ?! な、なんでだよ!」
「自分のやった事には責任を。あなたは、無断で敵地に飛び込んだのです。それが、どれだけ危険な事なのか、少しは理解して下さい」
あ~面倒くせぇな、説教かよ。この手のものは、嫌という程聞いてきた。だから、正直聞きたくないね。それなのに……。
「あぎっ!! ちょっと待て、なんだ今のは?!」
いきなり俺の体に、電流みたいなものが走った。あまりの事に、俺は堪らず声を上げてしまったよ。
「私の魔法です。あなたの体に、電流の卵をセットしました。あなたが抵抗する度、あなたの体に電流を流します」
嘘だろう……なんだその強制力のある魔法は……冗談じゃないっての!
「てめぇ……ふざけ……あぎっ!!」
蹴ろうとしたところで、電流流すな!
「全く、君は分かってないね。怪我だけで済んで良かったと、そう思って下さい」
「……くそっ、怪我だけで済んだ? 俺は今まで……」
「あなたが今までどういう経験をしたかなど、興味はありません。ただ、あなたの戦い方を見て、あれでは死に急ぐようなものだと判断しました。今後、その戦闘の仕方を変えない限りは、あなたを戦闘に巻き込むような事はさせません」
「……ちっ、んだそ……うぎゃぁぁあ!!」
だから、いちいち電流流すんじゃねぇよ!
「さて、お仕置きですが……あなたは少し攻撃的過ぎますね。なので、少し奉仕の心というのを、叩き込んで貰いましょうか?」
そう言うと、ジュストは凄い悪い事を考えていそうな笑みを浮かべた。嫌な予感しかしねぇんだが……。
「ジル君。着替えついでに持ってきましたか?」
「はい」
すると、いつもの格好に戻ったジルが、その手になにかの服を持って戻ってきた。いつの間にか着替えに行ってたんだな、こいつ。って、その手のやつは……まさか。
「さぁて……この服を着て、ご奉仕して貰いましょう」
フリフリのホワイトブリムに、黒いスカートにも、可愛い刺繍やフリフリが付いている。上の服にもな……これは所謂、メイド服じゃねぇか!!
しかも、靴下は膝までの長いやつか……つまり、そのスカートは少し短めだ。ふざけるな、これだと太ももが強調されるだろうが。
「止め……流石にそれは……」
『な~によ、変わりたかったんでしょ? というか、あんたさっきから減点ばっかでヤバいわよ』
また出た妖精やろう。ちょいちょい出てくんじゃねぇよ。
『今ねぇ、-100点だから』
そいつはやべぇ。というか、さっきまでのでそんなに減点されてたのか! プラスした事あるんか、おい!
『このままじゃあ、1年後にはさようなら~だね~』
「うぐっ……」
そうだよ……存在が消滅しちまうんだよ。それなのに、なにやってんだ俺は……。
だが、それでもこのメイド服だけは、ハードルが高すぎる。
「…………うぅ」
「マリナさん?」
ダメだ……男のプライドが、これだけは着るなと叫んでる。だけど着ないと……そうじゃないと、また減点されてしまうかも知れない。
だけど次の瞬間……。
「くっ……うくくく……ふふふ……あははは!! なんですかあなた、顔を真っ赤にして、涙目にまでなって、そんなに嫌なんですか?」
「笑うな!! ちくしょう!!」
「あ~ははは!! ヒーヒー!」
腹抱えて笑い転げてるじゃねぇか! そこまでかよ? そんなに面白いかよ、くそ!!
「あの、ジュスト中佐……こんなに嫌がってるなら、無理に着せるのは……」
「ふふ……あぁ、えぇ。分かってますよ、ジル君。その服は着なくて良いでしょう。というか、十分笑わせて貰いましたしね。ですが、お仕置きは受けて貰います。艦内の清掃など、雑務をして貰いますよ」
はぁ……助かった。まぁそれでも、十分恥ずかしい思いはしたがな。ジュストの野郎、覚えてろよ。いつか仕返ししてやるからな。
「あぎゃっ?!」
するとその時、俺の体にいきなり電流が流れた。いや、なんでこんなタイミングで電流が流れるんだよ! というか、電流が流れるのは自動じゃなくて、セレストがやってるのか?!
「なにするんだ!」
「……別に、少し気に入らなかったので」
「なにがだよ……」
「…………」
無視かよ、くそ。
「……ジュスト中佐を、あんなに笑わせるなんて……」
すると、セレストは俺に背を向けると、なにかを呟いた。なんだ? 小声過ぎて聞こえなかったわ。それとここは甲板だし、風の音も凄いからな。
「……恋敵」
「んっ?」
なんだか、不吉な言葉も聞こえたけれど、気のせいか? まぁ、とりあえず雑務をとっとと終わらせるか……。
「よし、セレスト。とっとと……うぎゃはっ!! なんでだ!」
ちょっとセレストを呼んだだけで、なぜか電流が流れたわ! なんでだ!
「セレスト『さん』です」
「うっ……セレストさん」
ちょっと待て、目つき恐ぇよ。なんで急に当たりが強くなった? あぁ、女ってたまに、なに考えてるか分かんない時があるんだよな。
だが、こういう時は嫉妬の可能性が高いんだわ。嫉妬ねぇ……もしかしてセレストの奴……ジュストにお熱か?
ふ~ん。とりあえず、今は従っとかねぇと、また電流流されるのは勘弁だ。だけど、面白いもの見つけたぜ。しっかりと利用を……と思ったら、妖精が俺の顔をジッと見てやがる。
もしかして、今悪い顔になってたか? き、気を付けねぇと。
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