第22話 飛翔と報復
2人は、ほぼ行動を共にしている。
それは『イトウ・シュンジ』が定年を迎える年齢で『ナダチ・アキラ』はその後釜だからだ。
引き継ぎを兼ねてということだろうが、実質、銀行からの出向組に仕事なんてない。
ただ、要らない銀行員を融資と引き換えに押し付けられるだけなのだから。
彼らに何ができるというのか…。
各部署の専門職とは、まるで違う存在なのだ。
本人たちも、追い出された
彼らが見れるのは数字だけ、それも結果論だけ。
まぁ、企業というものが存続していくためには必要な風習だと思って、皆、触らぬように心がけている。
だが…こちらは望まなくても、彼らに目を付けられる目立った人間とは、どこでもいるものだ。
そして、そういう人間は、必ず、彼らに敵意剥き出しで歯向かってしまう。
しかし…困った…。
今回は、空港で殺ることになりそうだ。
同じ会社の人間を殺るには早い方がいい。
関係性から依頼者を特定されかねない。
何よりも、近々で2人揃うのは、この空港で、一緒に中国へ移動する日しかない。
帰りは別々になるらしいし、まさか向こうまで追いかけるリスクは計り知れない。
フライト前の僅かな時間に仕留めなければならない。
しかし空港と言うのは最新セキュリティの塊だ。
あらゆる場所に監視カメラが24時間作動している。
当然だ、ある意味では空港と言う場所は、国家の玄関であるのだから。
大企業の受付が容姿・品格まで求められるように、国家の玄関で問題など起こりえないようにしなければならない。
当然、務めている職員にも暗に求められている部分はあるはずだ。
セキュリティ、警備は当たり前のようにレベルは高い。
そこで2人…。
どこで殺る…たとえばトイレなんて簡単そうじゃないか…。
とんでもない。
公共機関の公衆トイレなど入口に最新鋭の警備システムが常備されるのは当たり前だ。
満員電車のような人ゴミに紛れることもできない。
空港という場所は、混雑が無いのだ。
例えば、有名人が来るなど特別なイベントでもない限り、空港という場所は実に移動しやすく設計されている。
広く、複雑なようで、歩けば単純なのだ。
実によく出来ている。
死角は少なく、見晴らしはよく、それでいて出入口は限られ、その移動手段も固定されている。
文化レベルの集大成といえる。
正直、この空港で仕事をしようという殺し屋は少ないだろう。
長く、この仕事を続けたければ尚更…本来なら避けるべき状況なのだ。
考えれば考えるほど…逃走経路、方法が見当たらない。
殺害と逃走を同時に熟すこと…それが、唯一の方法。
それを可能とする場所と時間を考えなければならない。
言い方を変えれば、空港に入られたら失敗ということだ。
入れない事…それは先に自分が空港に入り、自分が出るときに殺ること。
彼らは自宅から当日、空港へ移動してくる。
バラバラに…アクセス手段は様々だ。
電車・バス・モノレール・マイカー…見当もつかない。
合流場所は搭乗口だ。
これだけは間違いない。
ややこしい仕事だ…割に合わない…だが、見逃すわけにはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます