この二人、最終的には、結局こうなるんです。
「すごいね~」
「ああ、そうだな」
俺達は今、京都駅前の観光地、京都タワーの展望室から、外の景色を見ている。さすがは千年の都京都。整った町並みはとてもきれいだ。…………それに負けず劣らず恵もきれいだ。
「…………っ」
「どうした恵?」
「……気付いてないならいいよ」
「いや気になるんだけど⁉」
なぜか言葉につまっていた恵に思うところはありまくりだが、そこに深く入るとめんどくさいことになりそうだったのでやめておく。
「しかし、まさか恵にこんな旅行に誘われるとはな。『そうだ、京都に行こ~』とか言われたときはなんのドッキリかと思ったよ」
「そうだね。私からこうやって何かに誘うことなんてほとんどないからね」
「まあ、シナリオはまだまだだけど、こうやって恵と一緒にいれると、色々とアイデアも浮かびそうだよ」
「なら良かった。じゃあそろそろ五重塔見に行こうか?」
「そうだな。行こうか」
そうして、十二分に景色を楽しんだ俺達は、五重塔がある東寺に向け移動を始めた。
「ねえ倫也くん」
「どうした恵?」
「倫也くんはどうして私をメインヒロインにしようと思ったの?」
「まあ初めはあの去年の春休みのあれかな」
「私のベレー帽拾ってくれたときの事?」
「そうだよ。まああの帽子の持ち主が恵だっていう事実を知るまでに1ヶ月くらいかかったけどな」
「それどころか私がクラスメイトっていうこともそのときに知ったんだよね」
「……そうだったな。ごめん」
「倫也くんはそういう人だっていうのはもう知ってるからいいよ」
「……そう…か」
「そんな落ち込まなくてもいいんだよ倫也くん。私はそんな倫也くんも………っ」
「どうした恵?」
「ううん、なんでもない」
「そうか?ならいいんだけど」
(「危なかったな。私、京都にいるうちにこの思い伝えられるかな?」)
(「恵、なに言おうとしてたのかな。めっちゃ気になるな。は~……しっかりしろ俺‼この旅行の間で俺の気持ちを伝えるって決めたんだ‼」)
こうして二人はそれぞれ胸に思いを秘めながら、五重塔へ向かう
「…………はずだったんだけどな~」
そう、今いるのは、ゲーマーズ京都店。
「いやいや、まさかゲーマーズ京都店限定イベントが、今日までだったとは思ってなかったからさ」
「そうなんだ。まあ、倫也くんの事だから、結局はこうなるとは思ってたけど、早いね」
「うっ………」
「まあいいよ。せっかく京都のゲーマーズ?に来たんだから、楽しみなよ?」
「ありがとう恵‼さすがは俺のメインヒロインだ‼」
「最近そのメインヒロインっていう言葉が免罪符化してきててちょっと悲しいけどね」
「誠に申し訳ございません‼」
「もういいよ、慣れてきたから」
「お……おう」
「………あれ?なんか見たことある気がする人が載ってるポスターがあるんだけど…」
「え?どれどれ…」
そこに貼ってあったポスターは、そこまで大きなものではなかったが、俺達に衝撃を与えるには十分だった。
~~~~~~ icy tail ライブツアー 《icy tail yo‼》京都公演 ~~~~~~
今年秋葉原で人気急上昇中のインディーズバンドicy tail がまさかの全国ライブハウスツアー開催‼
日時 9月23日 午後6時開場
ゲーマーズ京都店にてチケットも販売中‼
「……ちょっと電話するとこがあるからいいか恵?」
「わかった。ここで待ってるから、手短に済ませてきてね」
「ああ、そう時間は取らないさ」
そうして俺は1度店を出て、
「もしもし、倫也くんかい?」
「ああ、伊織であってるよな?」
「もちろんさ。倫也くんの事だからそろそろ電話してくる頃だと思っていたよ」
「は?」
「ちょうど僕達が京都に着いたときに、倫也くん達が駅を出るところが見えてたからね。実はみんなで後をつけてたのさ。」
「っえ⁉」
「そういう今も近くにいるよ僕達」
「マジか。でも近づいてくるなよ?」
「どうしてだい?ああ、僕がいると
「それもある。大いにある。でもな、それ以上にこの旅で俺は恵に告白しようと思ってるんだ。だから邪魔しないでほしいんだ」
「へ~、てっきり僕は澤村さんに告白するものだと思ってたけど、加藤さんなんだね」
「……そこでどうして英梨々の名前が出てくるのかは聞かないけど、そういうことだから、邪魔はしないでくれよ?」
「大丈夫さ。今回はicy tailのプロデューサーとしてライブをする彼女たちの付き添いで来ているんだ。明日は大阪でライブだし、そんな暇はもとからないよ」
「へ~、大阪でもするのか………って何で俺になにも言わないんだよ⁉」
「別に、君は前プロデューサーなだけ。今は何の力も持っていない上に、icy tail のプロデューサーを僕に任せたのは君だろ?」
「それはそうだけど…」
「それに、これは『冴えない彼女の育て方(仮)』の販売促進のためでもあるんだ。倫也くん、君は紅坂朱音に勝ちたいんだろう?」
「伊織……」
「だから君も早く巡璃ルートを完成させるんだ。君たちのこの旅にはそういう目的も含まれているんだろう?だったら期待しているよ」
「そうか………悪いな」
「まあこのゲームに期待しているのは僕も同じさ。だから、絶対にこの旅で、何かしらは得るんだぞ?倫也くん」
「ああ、もちろんだ。伊織もライブ頑張れよ」
「いやいや。頑張るのはメンバーのみんなさ。僕はマネジメントすることしかできないからね。まあこっちの方も期待してなよ」
「じゃあな、伊織」
「またね、倫也くん」
こうして俺は電話を切ったが、内心は緊張感が増していた。それでも、そのドキドキを押し殺し、恵のところへ戻る。
「倫也くん、
「相変わらず伊織のこと嫌ってるんだな、まああいつの自業自得だろうけど。まあ、あいつなりに俺たちのゲームのためにやってくれるみたいだったから、まあいいかなって思ってるよ」
「そっか………そういえば、氷堂さん達のライブって今日なんだよね?」
「ああ、そうみたいだけど」
「この旅行まだ3日はあるし、せっかくだから、ライブ観に行かない?」
「俺は別にいいけど、恵はいいのか?せっかくの京都なのに」
「せっかくの京都なのに初日からゲーマーズなんて来てる時点でなんだかな~なんだけどね」
「その点に関しましては申し訳ございません‼」
「なんかやっぱり倫也くんの謝罪は軽い感じがするよ…」
「ごめん…」
「もう謝らなくていいから、じゃあ夜は1回ホテルにチェックインしてからライブ観に行こうか」
「そこは恵に任せる」
「じゃあ決まりだね。まあひとまず今はチケット買って、時間が来るまでここら辺のアニメショップでもまわろうか」
「いいのか⁉ありがとう‼」
こうして、夕方までアニメショップ巡りは続いたのであった。
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