Cパート

「という流れで、志染紅子は俺の新しい妹になりました」


 すでに朝食を食べ終わった薫が満足げに話し終えた。


「へー。かなり過激な展開ね。映画みたいでちょっと憧れるな。無理矢理連れて行かれるのは。で、その続きはないの?」


 牡丹は興味津々だった。


「続きは今のところないです」


「今のところ?」


「はい。もし、俺がここを出ることができたら、紅子をちゃんと海に連れて行ってあげるつもりです。紅子には兄弟もいないので、まずは黄柚子姉さんと稲穂お姉さんに仲良くなってもらいたいと思ってます」


「二人のお姉さんか。それと薫お兄さんも。なんだか賑やかになりそうね」


 牡丹は笑顔で薫の話に合わせた。


 ティッシュ箱にちょこんと座る紅子はしっかり兄の薫の話を聞いているようだった。


 こんな話をしていると実際に蝶の羽を生やした女の子たちが薫君の元で生活し始めてしまうのではないかと牡丹は想像した。いつの間にか、紅子は部屋中を飛び回って、薫君やお姉さんたちに静かにしていなさいと怒られているのも面白い。きっと薫君もそんな光景を思い描いているに違いないと、真剣に妹と接する薫を見て思う牡丹。


「それじゃ、朝食を下げるわね。ごちそうさまでした」


 牡丹が言う。


「はい。ごちそうさまでした」


 薫は妹の前で両手を合わせて言った。


「ちゃんと歯をみがいてね!」


「はい。わかってます、牡丹さん」


「わかっていればよろしい」


 牡丹は笑顔で薫の病室を出て行く。その間際にもう一度薫を見た。


「心配いらないよ。大丈夫。牡丹お姉さんは優しいから。何でもお話聞いてくれるんだ。今度は三人で話そうね」


 薫は紅子に向かって話をしていた。当然ながら紅子から返事はない。


 私には聞こえない。でも、牡丹お姉さんという響きは悪くないかもね。また彼と距離を縮めることができたのかも……。


 薫の病室のドアが閉まった。

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