第5話:異形の寺
廃寺であった。朽ち果てた本堂に異形の影が、二つ三つと増えていった。
上座には頭巾で顔を隠した御前がいた。
その背後に、将宗が畏まっていた。
影の一つは女の者だ。そして後の者は一つは体格のいい若者。そしてもうひとつは巨塊だ。大きな塊(かたまり)のような怪物と言っていい。
「よく参った。」御前は影らを労(ねぎら)った。
「フフ・・・あたしたちを呼ぶって事は、かなりの強者(つわもの)。」
美女だ。だが、怪しい目をしている。赤い唇が艶かしい。
「城戸明日真と申す浪人だ。」将宗が応えた。
「げへ・・・」大きな怪物が笑った。「そんなヤツ、ひと捻りだろう。」
顔には無数の切り傷があった。
「フン、油断してると顔に傷が二つ三つ増えるぞ。」邪鬼と呼ばれる忍者がバカにするように笑った。
「ンだと~。」
「よさぬか。」将宗。「御前の前だ。控えろ。」怪物はフンと鼻を鳴らした。
「ヤツは・・・鬼斬り丸を操る。」御前。
「鬼斬り丸だって・・・」美女が聞き返した。
「田沼の屋敷から消えたって妖剣ですか・・・」邪鬼。
「ああ・・・、恐ろしく腕の立つ男だ。」将宗。
「クックク・・・そいつは、面白い。」邪鬼が笑った。
「よいか、呉々も申すが・・・清雅と申す若い男は無傷ですませろ。」
将宗。
「何だい、注文が多いね。」美女。
「ヤツは、隠し財宝の鍵となる男だ。」
「あたしらにも戴(いただ)けるンでしょうね。その分け前を・・・」
「もちろんだ。そのためには・・邪魔をする者は消せ。」
「フ、ま、その鬼斬り丸ってヤツのお手並みを拝見しようじゃないか。」
美女の姿がスゥーっと消えた。続いて邪鬼、そして巨塊も姿を消した。
残されたのは、御前と将宗ら土蜘蛛衆のみだ。
「どうなんでしょう。ヤツら・・・」将宗が御前に聞いた。
「ま、使えなくなったら、捨てれば良い。」御前は冷たく言い放った。
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