第33話 故郷に帰ってきました(終)
姉であるわたしの名義で、父が借金をしていたのを、
妹は知らないといった。
妹が、父について、いぶかしく思い始めたころから、
お父さんと連絡が取れなくなってきた。なので、
どうもわからないんだよね。と妹。
北島は、風俗関係にいたらしい。噂だけどね、と、妹は言う。
ところで、土地で融資してもらったのは、
登録書を盗んだんじゃなくて、ちゃんと父に許可を取ったというのであった。
あの土地は、生前贈与で祖母から母にわたされた。
母が亡くなったとき、名義変更は父に任せた。
しかし、借金がかさんだので、土地を担保にしてなんとかしのいだ。
その後、父がどうしたのかはわたしは知らない、と妹は言う。
このあたりになってくると、証言がコロコロ変わるのである。
それが売ることなのか 借金をすることなのか
薬でもうろうとしている わたしには 思いつけなかったが、
許可をもらったと言ってみたり、土地の名義変更は、わからないと言っていた。
「そういうときは、家族会議をすればいいんだよ」
とわたしが言うと、
「弁護士を入れれば良かった。後で揉めるから」と妹。
「今も揉めてるし」 すかさずわたしがつっこんだ。
詐欺で借金してしまって、まだ気持ちの整理がついていないような、妹。
自分が父にせびったために、父の借金がかさんだことも、まだ理解していない。
また、土地の名義変更をしていないから借金ができたのに、
それが払えなくなって父が家を失ったことも、理解していない。
理解、できないのかもしれない。
追い詰めるようなことは言わないことにした。
わたしもまた、詐欺に遭わないとも限らない。
息子に真相を知らせておけ、と言っておいた。
自分の失敗を話さないと、同じ失敗をするかもしれないよってね。
時期が来たらと妹は言っていた。
言わないと思うわたし。
というわけで、今回の旅行は充実していた。
疲れたけど、行って良かった。
またネタが増えたぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます