正しい世界樹の育て方

作者 真野てん

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★★★ Excellent!!!

幼い頃からスパイになることを夢見てきた二十五歳の青年。梵門(ぼんど)七之助。文武両道。語学力に長けた彼。しかし夢破れ、しがないサラリーマン生活を送る日々。そんな彼がある日、旅行雑誌に載せられた奇妙な広告を見つける。

──あなたもスパイになりませんか?

夢の残像に引かれるように、彼は『WTO』という調査機関への面接に向かう。生きている実感を得るために。

しかし現実は甘くなかった。もう半年、オカルト情報の資料精査ばかりなのだ。そんな折、局長宛てのメールが誤送信されてきた。とある貿易会社の調査依頼。そこはブラックマーケットの出先企業……。

──七之助の初ミッションが始まる!


世界樹……この世界の秘密。ヴォイニッチ手稿。
ガチムチの恋。メンズブラ。←いや、これは置いといて(笑

007やルパン三世をモチーフにした王道アクションものに、ファンタジーと人間ドラマをかけ合わせた珠玉の作品。作者の「好き」がこれでもかと盛り込まれている。

ユーモアと小粋なセリフ。だが、スパイものの臨場感と勢いは保ったままに残酷描写は見当たらない。作者の書きたいものは、無残な人の死ではなく、知性と情にあふれた人間の生なのだろう。

この世界の大いなる秘密が解き明かされた時、あなたの目の前に「世界樹」が出現するだろう。それを育てるために、今日も彼のミッションは続いている。

★★★ Excellent!!!

新聞の求人広告に天啓を得た七之助は、オフィス用品の販売員から、スパイに天職することを決意!
1912年にイタリアで発見された古文書《ヴォイニッチ手稿》に導かれ、七之助が目撃したこの世界の真実とは――!
映画好きであればニヤリとできるエッセンス。それらが、至るところにちりばめられている。衒学趣味に陥らず、誰にでも楽しめるエンタメ作品に仕上げられているのは作者の手腕によるものだろう。
正当なスパイ小説でありながら、どこまでも広がる圧倒的なスケール感はファンタスティックの一言!

★★★ Excellent!!!

生きている実感を得るため、青年はスパイになりたかった。
しかし、ようやく入社した国際的な諜報機関『WTO』で任されたのはオカルト記事の精査ばかり……。
青年は「やってられるか!」と怒鳴るも、それは世界を守るための壮大な遠望の前ぶりにすぎなかったのである……。

オカルトとスパイ、傍からみれば真逆の要素です。
しかし、中盤から明かされる大いなる真実の前に、二つの要素は収斂し、ひとつに溶け合っていく……。
この展開には頭がびりびり痺れました。
真逆の要素をここまで融合させる作者さんの手腕には脱帽なのです。

ところで、これから本作を読む読者さんには、プロローグからじっくり読んでいただきたいところであります。
プロローグのあるシーンで覚えた違和感が、本編の終盤で明かされる真実によってきれいに氷解しました。
この「そういうことだったのか!」という感覚、実に癖になります。

どんな読み方でも楽しめる本作、実におすすめです。

★★ Very Good!!

スパイ、オカルト、ハードボイルド、アクション……この物語には、様々なスパイスがたっぷり盛り込まれている。しかもそのどれもが喧嘩することなく、しっかりと調和してこの物語は成立している。

冒頭で繰り広げられる中東での潜入作戦は雰囲気たっぷりに描かれ、冷たい砂漠の空気や、殺気に張り詰めた空気まで伝わってくるようだ。

続く第一章からは一転して、サラリーマンからスパイに転職した七之助の奮闘が軽やかな筆致で描かれる。諜報機関『WTO』の同僚の雨衣や上司である名無しとのコメディチックなやり取りが中心となっているが、
その中に時折主人公である七之助の焦燥にも似た衝動、渇望が差し込まれる。
彼はどうしてそこまで自らを鍛え上げ、困難を求めるのか。
何故、生きている実感が欲しいのか。

そして、七之助の前に現われる様々な謎。
ヴォイニッチ手稿の正体、怪しげな会社の企み、緑の夢からの問いかけ、そして『世界樹』の示す意味――全ての真実が明らかになった時、そこからスパイとしての七之助の真の戦いが始まる。
その結末を、どうかご覧下さい。

★★★ Excellent!!!

 牧野修、田中啓文、倉阪鬼一郎、岡嶋二人の『クラインの壺』
 ここら辺の「化学とオカルト」もしくは「仮想現実空間」が好きな人は必ずはまる作品。

 ……と思ったのだが、真の対象読者は、「現実世界に何の疑問を持たず過ごしている人」なのかもしれない。

 さぁ、あなたも世界の真実の姿を確かめてみませんか?

★★★ Excellent!!!

国際的な諜報機関『WTO』。
その日本支局に勤める男、梵門七之助(ぼんど しちのすけ)。
毎日毎日、記事のスクラップに明け暮れる彼は、仮の姿だった。
ある日舞い込んだ貿易会社への潜入調査、そして彼は世界の秘密を知る。
軽いタッチで描かれた冒険活劇物語。
世界樹に支えられた最強スパイ集団が世界を暗躍する。

★★★ Excellent!!!

タイトルからは想像できないハードボイルド物。だけどエンタメ感抜群。全体的な雰囲気はルパン三世(アニメ版)にちかい。内容はおじさん向けのネタが多く、若い子は良さがわからないかもしれないがおっさん世代は歓喜物(笑)。
一応完結とのことだが、是非とも続編を期待したい。、

★★★ Excellent!!!

 以前の作品、『コード・スキャナーズ』で活かされた筆力はそのままに、へべれけさんの「好き」をこれでもかと詰め込んだ意欲作。
 盛り込みすぎると読みづらくなりがちな小ネタの数々を、確かな実力で口の中に放り込んでくる。分からなくても美味しいので「悔しい! でも食べちゃうビクンビクン!」状態で箸が進む、というか進めさせられる。

 物語そのものはハードボイルドものだけれど、あまり読んだことのない人(自分)も引き込むライトな語り口も魅力の一つ。
 そこにスパイスとして振りかけられる「ヴォイニッチ手稿」などの要素も相まって、タイトルからは想像もできない闇鍋的作品なのに何だかんだで面白い。
 ……あ、別にスパイとスパイスを掛けているわけじゃ(ry

 作者様渾身のフルコース。
「スパイ? 何それ美味しいの?」
 ……まずは食べてみてください、同じ口がきけますでしょうか。

★★★ Excellent!!!

まだ途中までしか読めていませんが、圧巻。
著者の趣味というか、知識というか、詰め込んじゃった感じです。

タイトル通りに受け取って読み始めると、最初から裏切られます。
ほのぼの系ではありません。
スパイ映画とか、マスターキートンとか、スプリガンとか、アームズとかお好きな方にはおススメ。

出来れば紙で頂きたい!
モニターの横書きだと、目が……。
あと一話だけ……もう一話だけ……
あー、もう!
自分のが書けないじゃんっ!

俺、自分の原稿終わったら、これ最後まで読むんだ……

★★★ Excellent!!!

小説を読むということは、その作者自身を知ることでもあると思う。

作者の考え方や、趣味嗜好、時にはこれまで歩んできた人生なんてものまで小説に垣間見ることが出来て、そういうのも含めて面白いと感じることが多々ある。

そういう意味でも今作は実に楽しい作品だ。
それは今作が作者の「好き」なもので埋め尽くされているからに他ならない。
スパイ、潜入、エージェント、掴みどころのない上司に、お色気姉さん、日本刀、二丁拳銃、あとメンズブラ(いや、これは違う……と思う)。これでもかとばかりに作者が好きなものを惜しみなく盛り込み、作品そのものを盛り上げていく。だから面白くないわけがない。

読み終えた後にはきっと作者に「どうだ今夜一杯やらないか?」と言いたくなる人が大勢いると思う。もちろん、自分もそのひとりだ。

★★★ Excellent!!!

ファンタジーぽいタイトルから、いきなりスパイアクション!
からの、胡散臭い謎の機関での書類整理。
気がついたら、目が離せないくらいワクワクしてる!

とにかく、面白いです。読んでいて楽しいです!


それにしても、作中の映画が気になってしかたない。。

★★★ Excellent!!!

インドの神話において、この世界は最高神ブラフマーが見ている夢であると言われている。
また、中国の古典における胡蝶の夢はこの現実世界が実は仮初めのものではないかという示唆を私たちに与えてくれるものだ。この空想は形を変えて現代でも仮想現実という形で残っている。
そして私たち人類は、この世界、もしくは自我そのものを度々大樹になぞらえてきた。この考えは現在の心理学にも受け継がれ、木を描いてそこから自我状態を読み取るバアムテストにその名残を見ることができる。心理学においても木は、その人の自我状態を表すシンボルとして扱われているのだ。
私たちは考える樹木であり、私たちの見る夢はある意味において現実そのものなのだ。
この物語はスパイに憧れる男性の活躍を描くとともに、この現実世界の曖昧さを世界背景にもつ独特の作風をもっている。
ともすると、押井守監督の作品のように抽象的で考察が必要な作品と違い、キャラクターたちの明るいやり取りを通じて現実世界の曖昧さを描くセンスは読者に寄り添いつつも、自身の思考を自然体に伝えることができる作者様の才能ともいえよう。
分かりやすいが深く、そして独特の世界観を持つ本作には、テンプレにたよりがちな既存の作品にはない魅力がある。願わくば、この世界観を味わえる作品も今後も読んでいたいものだ。