第26話 執事

 その中の、最も高齢のエルフが静かな口調で話し出した。


「私は執事のドドルミナスでございます。

 皆様のお世話を仰せつかりました。

 宜しくお願い申し上げます。

 さて、問題が無いのならば、これから宮殿へご案内を致します」


 マリネラ教授はとっても驚いて、彼らを理解しようとしていた。

 私達家族に執事?

 マリネラ教授は簡単な質問をした。


「私達家族に、執事が付くのでしょうか?」

「その様に女王から直接伺っております。

 私を含めまして、この4人が皆様方のお世話をさせて頂きます。

 右からミーシャーネ、スルル、ターニャーで、私の孫でもあります。

 女王に認められた、最も優秀な執事達ですので、どうぞご安心を。

 それと皆様方は、執事の世話に慣れてないので、時間をかけて慣れて下さい。

 私達4人は、次期女王とご家族のお世話をするのは光栄と思い、快く承諾しました」

「分かりました。

 それでは案内をお願いします」


 スリーとニンフルは、まだ完全に理解できていなくて、目をパチクリさせている。

 ナオミはお父さんから、執事について聞いたことがあり、なんとなく理解できていた。


 ドラゴンを専用のツタで編んだカゴに入れて、王宮に運んだ。

 王宮はまるで迷宮みたいで、来た道さえも迷子になりそうに複雑だった。

 かなり上の方に移動して、初めて住む部屋に着いた。

 それぞれの部屋は今までの3倍は大きくて、立派な家具も置いてあった。

 お風呂も各部屋にあり、いつでも使えるようになっている。


 ドドルミナスが部屋の使い方を説明した後で、こう付け加えた。


「この枝が時期女王の区画になります。

 女王はこのすぐ上の枝の区画にお住まいで、行き来がすぐ出来ようにとの女王の配慮でございます。

 ナオミ次期王女はこれからの一ヶ月間、毎朝日の出と共に、王道学を学ぶ為に女王とご一緒になります。

 時には、朝食をご一緒になるかもしれませんが、ご家族の方はご理解をお願いいたします。


 さて、この王宮には王族の方は女王以外住んでいなくて寂しい限りでしたが、これでまた華やかさが増すでしょう。

 私共わたくしどもを呼びたい場合は、そこにあります小さな鐘を鳴らしていただければ、すぐにお伺いいたします。

 真夜中でも結構ですのでご遠慮なさらない様に」


 マリネラはいくつかの質問をした。


「家族の為に食事の用意をしたいのですが可能でしょうか?」

「勿論でございます。

 あらかじめ私共に言っていただければ、いつでも大丈夫です」

「ありがとうございます。

 それと、王族に相応しい服が私達には無いのですが?」

「それは全く問題ありません。

 専属のエルフが居まして、最近服の需要が減っていたので嘆いておられました。

 彼女は今回のことで、非常に喜でおいでで、明日には皆様方を訪問したいと言っていました」


 スリーが、興味しんしんで聞いた。


「あの〜、この王宮を探検してもいいですか?」

「スリー、ダメに決まっているでしょう」


 ニンフルがすぐに言った。


「いえいえ、大丈夫でございます。

 それよりも、大歓迎です。

 王宮は広うございますから、隅から隅までよく理解していただく方が良いと思われます。これからここに住んでもらうのですから。

 図書室は充実しておりまして、あらゆる本が置いてあります。

 一階には鼻水焼きの中でも最高級品である「鼻水いっぱい鼻水焼き」のコレクションを飾っていますので、これは見応えがあるかと。

 ただし、地下3階にだけは行かれませんように。

 もっとも、魔法が掛けてあるので行かれませんが」

「そこには、何があるんですか?」

「今は申し上げられませんが、女王からその事に関してのお言葉があると思います」


 スリーは行くなと言われたら、余計に興味が湧いてきた。

 でも、当分はドラゴンの世話であまり時間がないなと思った。


「それでは私共はこれで失礼をいたします」


 執事達は深く頭を下げて退出した。

 お母さんがいつもの様な笑顔になって子供達に話しかけた。


「ナオミ、スリー、ニンフル、住む所が変わって大変だけど、家族で支え合って頑張ろうね」


 スリーが答えた。


「お母さん、大丈夫だよ。

 いつも通りにするからさ」

「スリー、それがお母さんが1番心配しているんだよ」

「なんで?

 僕は僕以外にはなれないよ」

「スリーの言う通りかもね。

 お母さんも、お母さん以外にはなれないもんね。

 でも、ナオミには驚かされる事ばかり。

 あ、悪い意味ではないんだよ。

 マザードラゴンと感応したり、時期女王になったりで。

 母さんが1番ビックリしたのは、王族のご息女だったんだね」

「ごめんなさい、お母さん。黙っていて。

 この惑星で生まれたので、全く問題はないと思ったので言わなかった。

 お母さんにだけは、話しておくべきでした」

「ナオミ、謝らなくてもいいんだよ」

「さっきスリーが言った言葉は、心の琴線に触れました。

 私は王族の血を引き継いでいるので、それ以外にはなれないんだと。

 ありがとう、スリー」

「え、 僕に?

 それに、琴線て何?」

「スリナリルが褒められるのって、にないよね」

「ニンフルは黙っててよ。

 なんで、 だけ大きな声で言うんだよ」


 ナオミとお母さんはクスクス笑っている。

 ニンフルとスリナリルも釣られて笑い始めていた。


 いい家族だよね。

 でも、嫉妬で狂う人達が居そうなのは、人間の世界も、エルフの世界も同じかもよ!!!











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る