DAATH ー深淵ー All's right with the World.

作者 菖蒲あやめ

60

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★★★ Excellent!!!

ユダヤ教に満ちたサナトリウム的孤島に集まる、精神の病を抱えた少女たち。
もうこの舞台設定の時点で心ときめく人は一定数いるのではなかろうか。かく言う私もそうである。

何と言ってもまず魅力的なのはその少女たちをはじめとした個性豊かなキャラクター。凛と着物を着こなしハイライトの煙をくゆらす主人公の禊をはじめ、どこか謎めいた魅力のある人物ばかりである。ちなみに私のお気に入りは仄だ。
そしてカバラの用語が散りばめられた物語。一人の少女の死から、全ては血生臭い展開へと転がっていく。手に汗握る異能力バトル、少しずつ見えてくる真相、最後には驚愕の――
いや、ネタバレは避けるが、一度読み始めたら絶対に最後まで読み切って欲しい。そして私のように「え!?嘘でしょ!?」と驚いて欲しい。まんまと作者の思惑にはまってしまった(気がする)。

そして物語は『嘘から出たフォント』、更に現在連載中の『しずくさんの噺をしよう。』に繋がっていく。
勿論それらを読まずとも単体で十分楽しめるが、読んでいれば「このキャラが……」とにやにやできる事請け合いだ。私も引き続き、「魔女」達の物語を堪能させてもらおうと思う。

★★★ Excellent!!!

 日本のどこかにある孤島には、ココロの病を抱えた少女たちが集められている。本土にいては苦しみ、痛めつけられるばかりだった少女たちも、巨大な治療所でもある島では仲間たちと共に平穏な生活を送れていた。主人公である久遠禊もまた。しかし、ある日突然彼女の友人が得体のしれない何物かによって凄惨に殺害されてしまい……。

 私が要約できるのはここまでです。ここからは、濃密濃厚にして耽美なダークファンタジーとスリリングなバトルとミステリーがユダヤ教の神秘と入り混じり、驚愕のラストを迎えるとしかご紹介できません。

 この深淵の魅力は、潜った者にしか分からない。だから皆さん……。

 一緒に潜ってみませんか?

★★★ Excellent!!!

いや、あのですね?
これ、けっして貶してるわけではなくですね?
純粋に称賛してるんですけど、

厨二、ここに極まれり!!

それ!それなんですよ!!おわかりか!?
だってさ!!もうさ!!モチーフがさ!?全部さ!!
「俺はもう……痛みでしか生を感じられないんだ……」
って感じの俺たち(中学二年生)が大興奮するものなんだもの!!!!
アナタ!!ちょっと!!過ぎ去りし中学二年生の日々を思い出してください!?
いや、想い出さずともお解りだろう。
我々はすでに見て来たのだから、其の深淵を……

ほら……読みなよ……読んで沈みなよ……
びっくりするよ?

こんなに厨二を極められる人、他にいる!?
いや、いない!!!!
中学二年生って反語とか好きだよね!!!!
いやだからほら、なにが言いたいかって言いますと、みんな中学二年生だったんだから、この作品が好きでしょ?ってことです。
うん。
それな。

みんなが内包しつつ(一部だけかもしれないけど)捨ててしまった中学二年生。
それを長い間ずっとあたため、昇華させ、世界を作った。
つまり神。
それが!!

作者、あやめさん.comさんだッ!!!!

敬え!ひれ伏せ!!我々は神の御前にいるのだ!!!!
もうみんなでDAATHごっこしよ?
絶対読み終わったら、
「ストップ、世界(ノイズ)」
って言いたくなるから。

な??

★★★ Excellent!!!

孤島の館とその住人の日常から始まる物語は、どこか耽美でミステリアス。
ハイライトをくゆらせニヒルに笑う主人公は謎めいた人々を静かに見詰めている。
そんな彼女の目に映るのは、至る所に顔を覗かせる違和感。
主人公が、そして読者がその軋みに気付く頃、物語は徐々にテンポを速めていく。

次第に明かされていく島の秘密、住人の秘密、そして世界の秘密。
前半敷き詰められた違和感――伏線――は複雑に絡み合い、けれど鮮やかに解きほぐされる。
とりわけ後半のどんでん返しは圧巻。
館の秘密と共に登場人物の謎や目的も明らかとなり、彼女たちの激情は読者さえ飲み込んでいく。
前半はじっくりと、後半は一気に読んでほしい作品。



孤島の精神病院という陰鬱な舞台でありながら、登場人物たちは時に可愛く時にニヒルで、独特の快活さを秘めています。
彼女たちの会話劇は大きな魅力の一つで、心地よい緊張感を伴いつつ読者をぐいぐい引き込んでいきます。

また、本作のジャンルはミステリーとなっていますが、能力バトルモノとしての魅力も濃厚。
異能と日本刀、メイドにデザートイーグル、ピンとくる方が結構いるのではないでしょうか。

そして異彩を放つのが、ユダヤの密教を元にした世界観。
クリフォト、セフィロト、上昇と下降、流出、etc……。
独特の思想や固有名詞に酔いしれる最中、躁鬱病や自傷癖といった精神障害が絡んでいき、果てには異能・異界が姿を現します。
かなり濃いです。

24万文字の大作。
是非、腰を据えて読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

孤島は、それ自体が精神病患者のためのサナトリウムだった。
島に住む患者は女性ばかりで、常識外れの症状を呈している。
主人公、久遠禊もその一人。極めて異常な視覚障害を持つ。
禊は3年前、島の所有者ジャンからの誘いで、島に移り住んだ。

物語の世界観のベースとなるのは、ユダヤ密教の謎めいた思想。
新年を祝う頃、どこか危うくも穏やかな日常が崩れ始めると、
この世とあの世の境、世界を形成する4つの世界の境が近付き、
力が知覚され、孤島に隠されたジャンの目的が紐解かれていく。

精神障害と異能、物理的な現実と異界、日本の常識とユダヤ密教。
癖の強いモチーフ・価値観が絡み合い、独特な雰囲気を醸し出す。
「ゴスロリ包帯眼帯少女」的な、仄暗くも洒落て可愛いイメージ。
ピンと来た人にはオススメします。流血いっぱいあります。

★★★ Excellent!!!

人生を「物語のようだ」と評すことがある。
善し悪しはともかく、筋書きがあるかのごとく、浮き沈みが大きかったり、彩りや悲哀が多かったり、
あるいは、不思議な縁によって過ぎた昔と再会したり。文字通り「劇的な」人生なのだろう。

私はこの物語を「人のようだ」と思う。
全容はよく分からないが、情報は濃い。そして細かい。どうにもかなり変で、何かがありそうで、不穏で、捨て置けない。
劇的ではないと思う。決して綺麗な代物ではない。ごちゃごちゃとして、もっさりしていて、煙たくて、
しかし、強いエネルギーを持っている。
人のようだと思う。

作者は、やがて死ぬ。
しかし物語は死なない。結末を迎え、その形成が終わっても、滅びることなく脈を打つ。
人のようなこの物語は、果たしてこれからどう育ち、どこへ辿り着くのか。
道中に何が起こるか。終着点には何が待っているか。
しばし看ていたい。この、いのちのゆくえを。



2017年7月16日 完結に寄せて

本日未明、一つの夢が終わりを告げた。
長かった夢が、無事、終わった。
こんな日にはきっと、交響曲第九番が似合う。

話は仕舞いを迎えたが、これで終いではない。
痕は、またぞろ、うずき出す。

あるいは、口の中でそっと、こう呟くのだ。
『Life goes on.(人生は続く)』