18話 故事得たるは獣の巣窟

 しがみついてくる女の子に私の身体は固まった。いつも通りの道の真ん中で、いつも通りじゃないことに突然がつんとやられた私は、女の子がもう一度はっきり

「たすけて!」


 と口にしたのを聞いて、はっとして通りの向こうに目をやった。雑踏の隙間にちらちらと見える、黒い服の人影。何かを探すように辺りを見回す制服たちの姿に、私はぎょっとして女の子を見下ろす。彼女は必死に私の顔を見つめ続けている。私はそこでぐっと唇を噛んでから、


「ついて来て」

 と短く、私自身のことまで元気づけるように、はっきり口に出した。


 女の子の手を引いて、私は来た道を引き返すことにした。制服たちに気取られないように、あんまり急ぎすぎないように、ゆっくり、振り返ったりしないで。不安そうな女の子の頭の上に安っぽいネオンの光が落ちているのを見て、私は女の子の小さな手をますますしっかりと握った。


 表通りを折れて、人通りの少ない、道幅の狭い西洋風のアパルトマンの立ち並ぶ住宅街へと入っていく。汗で湿り、小刻みに震えている小さな手。女の子は不安そうに辺りをきょろきょろと見回し、それから私の顔を見上げた。大丈夫、という気持ちを手を握る力に込めると、彼女は不安そうな顔のままだったけど、すがるように握り返してきた。


 アパルトマンの前で制服たちに付けられていないことを確かめる。それから、私の手が押した重い鉄の外扉はゆるやかに開き、私と女の子を招き入れた。女の子を先に中に入れてから、慎重に閂を下ろす。これで一安心。女の子は明かりがぽつぽつと灯るアパルトマンの中庭を見回している。私は彼女にゆっくりと近づいて、しゃがみこみ、もう一度その小さな手を取る。と、その手は震えていた。


「……大丈夫」

 気がつけば私の口から、祈るような言葉が溢れていた。薄い氷の色をした女の子の目が見開かれて、そのままはらはらと涙をこぼし始めた。私は握っていた手と一緒に女の子を自分のほうに引き寄せて、そうっと抱きしめる。なんか、そうしなきゃいけない気がしたんだ。泣き声と一緒に震えている細くて小さい体を抱いて自分の肩にくっつけ、私はこんなに小さい子を抱きしめたことがなかったんだなあ、と思った。女の子のすすり泣きが小さくなり、ゆっくりと収まってから、私は彼女から体を離す。寒いのに涙に濡れたほっぺたが真っ赤になっているその子は、私が小さい頃に遊んだ友達とよく似ている気がして、私は愛しいような気持ちでいっぱいになった。でも、なんでこんな小さい子がこの街に? それに、制服に追われていたのはどうしてなんだろう。まだ十歳にもなっていないような女の子の顔を見て、私はどうやって質問しようかと少し考えた。


「お父さんと、お母さんは?」

 と、私がゆっくり質問すると、女の子は口をぎゅっと引き結んだまま首を横に振った。

「はぐれちゃった?」

 私が尋ねると女の子は眉根をぎゅっとつめて、うんともすんとも言わない。なんだか意地っ張りな感じの顔だ。はぐれたのが恥ずかしいのかな。

「どこから来たの?」

「……おうち」


 そうやって小さな声で返されて、私は気が抜けてしまった。でも、そうよね、おうちから来たのよね……。どうしようかなあと思って女の子の手をにぎにぎと触っていたら、彼女は喉を詰まらせながら口を開く。


「おとうさんとおかあさんも、おいかけられてて」

 私は、自分ののどが勝手にひくついて、背中が固まったのに気づいた。

「それで、はぐれちゃったの……くろい服のひとたちが……」

 それからまた泣きそうになる女の子の目を見つめて、私は彼女の両手を自分の手でぎゅっと包み込んだ。

「絶対に、助けてあげる」


***


 無人の街を延々練り歩き、結局のところ洋間のソファで眠った俺は、頰に弾けるような痛みをぶつけられて目を覚ました。

「あ、起きた」

 きょとんとした顔の椿と、俺を叩いた後の右手に、俺は昨日の続きをすぐに思い出してため息をつく。

「ほんとに部屋に帰んなかったんだ?」

 倒れこむように隣の椅子に腰掛けて頬杖をついた椿を一瞥して、俺は頭をばりばりと掻いた。

「だって、根に持つんだろ? 茜は」

「そこまで子供じゃぁないわよ。あんたに怒ってたってしょうがないしね」

 椿の二転三転する言動に苛立ちながら、そのちょっとしたとげとげしさも疲労感に押しつぶされて俺の中に埋没していく。

「俺はなんだか、まだよくわからないんだよ。ここのことも、お前らのことも」

 そこで大きく息をついた俺をよそに、椿はテーブルの上のガラスボウルからチョコレートを一つ摘んで、ソファに再び身を沈めた。椿は俺なんかに目をやらず、尖った爪の先で銀紙を器用に剥がしていく。


「真木なんかは何を失ってるのかもわからない。見た所『完璧』って感じで……」

 俺は言葉を濁した先にあるはずの、喉から出かけた「気にくわない」を飲み込んだ。俺がつっかえたような気持ち悪さに顔をしかめていると、椿はいつのまにかまたひとりで笑い転げていた。

「真木? あいつ? あいつの『欠け』のことぉ?」

 椿は口の中でチョコレートを転がしながらけらけらと笑い声をこぼす。

「あたしに聞かずにさあ、あいつに直接聞きなよ。すっごい顔するよ、きっと! だって、あいつの欠けってば」

 椿はその言葉の続きをチョコレートと一緒に噛み込んで、意地悪な笑みで俺にじろっと目線をやった。

「……別に、そう知りたいわけじゃない」

 と、俺がむっとしながら意地を張ってそう言うと、椿はそれには乗らずに手を振って、

「知らなくていいわよ」


 と言いながら二つ目のチョコレートに手を伸ばす。今度はガラスボウルの中で手を泳がせて、包み紙をじろじろと見てはチョコレートをボウルに戻すといった具合にずいぶんと吟味している。


「そういえば」

 と俺が言っている間に、椿は、やっと包装が赤いのを一つ選び出した。

「……ここの一番の古株ってのは誰になるんだ?」

 途端にめんどくさそうな顔をした椿は、少し思案するように上の方を見上げてから、チョコレートの包みを剥きとって、そのまま口に放り込む。

「……枇杷?」

 彼女の返答は疑問形だ。

「枇杷なの? お前でも真木でもなくて?」

 華屋の中じゃ、枇杷が一番年下に見える。けれど椿は、あたしなんか、とにやついて手を振った。

「枇杷ね。枇杷よ! 枇杷がいっとう古株。あたしが来た時にはもういたもん。真木なんて最近よねえ。茜はあたしより少し前って聞いたことあるけどさ」

 唐突にこぼれた茜の名前に、俺は瞬きした。

「君がここに来たのっていつ」

「うるっさいわねえ。根掘り葉掘り。帝都の犬みたいに尋問してさぁ。うっとおしいったら」

「……俺はもう警官じゃない」

 俺がぼそりとそう返したのに椿は一度目を丸くして、それから意地悪く笑った。

「へえ、ちゃんとわかってんだ?」

 それから不気味に首をふら、と落ちそうに傾げた後、背中をそらすようにしてくらりと立ち上がった。

「じゃあもうさあ、その嗅ぎ回る癖をやめなよ」

 彼女が俺に向けた背中は、いつもと同様にただれていた。

「そんなこと、誰もあんたに望んじゃいないから」


***


 私は女の子の手を引き、賑やかな表通りを避けて街の入り口を目指していた。彼女の着ていた薄い水色のコートを隠すように私の黒い上着を彼女の肩にかけて、人の目を盗むように、こっそりと。彼女はずいぶん私のことを信用してくれたみたいで、私の手をしっかり掴んで離さないから、むしろありがたかった。


 この子は、どんな気持ちで私に抱きついて助けを求めたんだろう。知らない男の人たちばっかりの街の中で私を見つけて、きっと必死になって縋り付いたんだ。そういうふうに思ったら、彼女には見えていないところで私の目が勝手にうるんだ。この子も、私と同じだ。制服たちの裁判に巻き込まれて、きっとお父さんお母さんと一緒に追われてる……。私だってあの日、あんなに不安だったのに、こんなに小さいこの子は、どれだけ辛い気持ちなんだろう。私はそう思って、足を早めながら彼女の手の小ささを確かめた。今、この子、どれだけ、どれだけ心細いんだろう。


 そのまま私はなんだかムキになって来て、絶対にこの子を街の外まで送り届けてやろうと、もう一度心に決めた。もしも制服たちが追いついて来ても、私がこの子の盾になってやる。私、人間じゃないんだ。そう簡単に死なないもの。そう思いながら、街の入り口にもう大分近づいているのに気づいていた。たくさんのひとの声が聞こえて来る。入り口に繋がっている表通りだ。私は彼女の顔を見下ろして、

「もうすぐよ」

 と、声をかける。女の子は私の顔を見返して、必死に頷いた。そのとき、

「おとうさん!」


 女の子がそう叫んで、私の手を振りほどき、わあっと駆け出した。人の多い表通りに躍り出た女の子は、くすんだ人混みに分け入ってぐいぐい進んでいき、その小さな背格好は私がきょとんとしている間に人混みのどこかに消えてしまった。あまりのあっけなさに、私は路地の影の中で立ち尽くした。ネオンの光に溢れた表通りに出て彼女の姿を探してみるけれど、あの小さな背中はもうどこにも見つけられなかった。あんまりにも不意を突かれたから私の足は固まってしまって、通りの右や左からやってくるひとたちにどんどんぶつかられる。なんだ、お礼も言われなかったな、と私はちょっとむくれたし、上着を持って行かれてしまったのも惜しくなったけれど、しばらく表通りを見回した後で、引き返すことにした。別に、お礼を言われるためにやったことじゃないし。それに、彼女が私みたいにならずに、この街の外でお父さんやお母さんと一緒にいられるなら……。


 私はやっぱりあの女の子の顔をもう一度見たかったけれど、バイトの時間にずいぶん遅刻していることを思い出して、慌ててカフェのほうへと駆け出したのだった。


***


 相手にとって都合がいいか悪いかなんてどうだって構わないが、俺にも知的欲求はあるのだ。それに、このまま何にも知らないでこの街にいるんじゃ、馬鹿みたいだ。俺は「もう顔も見たくない」という茜の言葉に胸をぐさりとやられていた。いや、俺が悪いのかもしれないけど、だって、知らなかったんだぜ? 何をどうすりゃあ彼女が傷つくとか、傷つかないとか、俺の知ったことじゃないだろ。中庭の空気に浸りながら、あのときの彼女の表情を何度も頭の中で再生する俺の視界の中、廊下の先に、ぽつりと人影が見えた。その人影は渡り廊下の先にすぐに消えて行ったから、はっきりと姿形を見分けたわけではなかったが、背格好から見るに、おそらく枇杷だろう。そうか、やつの居室はこのあたりだったか。


 華屋の連中の住まい方は妙な具合になっていて、やたらだだっ広い敷地の中で散り散りになって居を構えている。真木なんかは俺と茜の部屋とは一番離れた棟にいるのだと聞いた。場所はなんとなくしか知らないし、行き来もしない。皆、互いに干渉しない。


 俺は枇杷と話がしたくなって、奴が姿を消した渡り廊下の先へと歩を進める。赤い絨毯が敷かれた西洋風の廊下に入り、低い天井にぶらさがった黄ばんだ電灯の下を、枇杷の姿を探して歩く。と、少し先にある右側のドアが開いている。俺はそのまま吸い寄せられるようにドアの前まで歩いて行き、半開きのそれを部屋の中へと押し開けて、


「よお」

 と、挨拶をしてみるが、応答はない。そのまま中に入ると、そこは、ふっと香水の香るホテルのような作りの部屋だった。白でまとめられた調度品は端まで細かく装飾が施されていて、散りばめられた花のモチーフからして、どうみても女の部屋という感じだ。奴はこういう趣味だったのか、と俺が花瓶の置かれた飾り棚に近づく、と、奥に見える続き間からたしかに誰かの寝息が聞こえて来た。その音につられて顔を上げ、そのまま続き間の方へと歩き出した時、廊下の方からドアの音が聞こえて、俺はぎょっとして振り返った。音もなく、薄暗い洋館の中、確かに鋭利な視線が俺に刺さっている。ざわりと寒気がする。俺が開け放していたままのドアの前に、枇杷が、驚いて愛想笑いの吹っ飛んだ顔で立ち尽くしているのだった。俺は、自分の背中が凍りつくのを感じた。


「なにしてる」

 枇杷は瞬時に俺と距離を詰め、気がつけば奴の腕は俺の胸ぐらを掴んでいた。その細腕からは想像だにせんほどの力で激しく壁に叩き付けられ、俺は自分の喉が勝手にひくつくのを感じた。俺の胸元をぐっと握った男とも女ともつかない細く骨ばった枇杷の指は、明白に怒りに震えている。暗闇の中でも確かにぎっと俺のことを睨みつけるその柔和であった目元には、俺が言うべきことの全てを喉の奥に詰まらせるに足るだけの十分な鋭さがあった。

「おまえ」

 喉から唸るように低く絞り出されたその声に、いつもの甘ったるい愛想笑いはひとつもない。それから俺を突き殺すような奴の瞳がひとつ、ゆら、と酒に酔ったようにくらんで、奴がふいとこうべを垂れてもう一度俺を見たときには、そこには急ごしらえの歪な微笑が貼り合わせてあった。奴の頭が、ゆらりと傾く。


「そうか……君はひとのテリトリーにずけずけと踏み込んで、とぼけた顔で踏み入って踏み荒らして踏み潰して帰っていくのが趣味だったねえ」

 枇杷は歯をむき出して笑って見せたが、その笑いは乾いていて、野犬のようにひどく攻撃的だった。柔和な形をした目をにじ、と底意地悪く歪めて、枇杷は解けるように口を開いた。

「……知りたい? 知りたいんだよね? そうだ、知りたいんだよ、君は。僕らの……僕の、秘密を、さあ」


 そう言った枇杷は、俺の襟首を掴んだままぐいと手を横に振り切って、俺を隣の肘掛け椅子へと引きずり下ろした。それから間髪容れず俺の膝にのしかかって、俺の頭を背もたれに打ち付ける。それから枇杷は、痛みにめまいのする俺の目の前で、あろうことか自分の着ているシャツのボタンをひとつ、またひとつと外し始めた。何が起こっているのかわけもわからぬ俺は、ふつりふつりと暴かれていく枇杷の細い胴から目を離せないでいた。どこからか聞こえてくる、電灯の、じい、と導線の震えるような音と、続き間の先から止まないかすれた寝息。薄闇の中に広がっていく枇杷の肌の白色。凹凸のない少年のような薄い胴体は、しかし妙に艶かしく、俺は違和感にぞっとしながらも、結局は恐怖と妙な好奇心で声も出なかった。枇杷は最後のボタンを外し、肩からするりとシャツを滑り落とした。はっとして見上げた枇杷の顔は、かすかにほころんでいて、薄く開かれた唇は、まさに少女のそれだった。その唇が、ゆっくりと俺の目の先に近づいてくる。俺はそれを払いのけねばならなかったが、強張った体のまま、あまりにも完成されて窒息しそうな空気の中で身動きも取れない。そうして、枇杷の顎が俺の額にぶつかる。なめらかな肌がしっとりと吸い付くように触れて。じっとりとした空気の中で、枇杷の肌からは女の香水の匂いがした。枇杷はそのまま不気味なほどゆっくりとズボンのファスナーを下ろしていく。しんと静まり返った部屋の中にぎりぎりと降りていく不躾で、卑猥で、下品なその音が、俺の耳に嫌というほどしっかりと刻み付けられていった。枇杷は俺の額に唇を当てたまま、ぎょっと目を見開く俺に向かって、俺の骨の芯まで響かせるように、嘲けり声を震わせた。


「ほら、知らないほうが良かったろ?」


***


 一時間も遅れてアルバイト先にやって来た私は、怒られるのを覚悟していたのだけれど、ちょうどカフェにいて私の姿を認めた茜は別になんともなく私の顔を見て、

「生きてたんだ」

 とだけ言うので私も拍子抜けしてしまった。怒られた時のために言い訳を用意して……というか、私が女の子と出会ってその子をどうやって助けたのかとか、そういうのを全部、ぜーんぶ話すつもりだったのに、私がさっきした大仕事は大したことでもないような気がしてきた。だから、私は話そうと思っていたことの全部を飲み込んで制服に着替え、仕事を始めたのだった。



 お店から人がいなくなって、私は制服から普段着の黒いパンツに着替える。そうすると、真人間の他の店員たちを全部帰してしまったカフェの中で、茜がやっぱりひとりで店じまいの仕事をしていた。今日も伝票とにらめっこ。茜は娼館の華屋のひとだけど、いつも、ここや別のレストランをぐるぐると回って私たちを監視している。掃き溜めの中でもちょっと綺麗なご飯屋さんは、全部華屋が管理しているお店で、茜はそういうのの取り締まり、みたいなのをしているらしかった。たぶん、仕事ができるひとなんだと思う。いつもなんだか疲れたような顔をしてるけど。唇をつんと尖らせて書き仕事をする茜の顔を見ながら、私はなんともない感じで口を開く。


「茜ちゃんってさ」

 私は彼女と同じテーブルの椅子に自分の身体を滑り込ませた。

「恋したことある?」

 茜は私を一瞥してからすぐに伝票に目を戻す。私が彼女の返答を諦めて通りに目をやったとき、

「……あるよ」

 という彼女の声が私の耳に聞こえたから、私はにわかに嬉しくなって彼女をくるっと振り返る。

「じゃあさ……!」

「恋は恋よ」

 うきうきしながら話し出そうとした私に、茜はぴしゃりと言い放つから、私は次に出てくるはずだった言葉を止められてしまった。

「恋のままで終わり」

 茜はそう続けて、テーブルの上に広がっていた伝票を手元にかき集める。

「……どういうこと?」

 私が彼女に「何を言ってるのかわからない」って白旗をあげると、茜は一つため息を吐いて、

「人間分かり合えっこないって話」

 と、うんざりと言った。茜の顔をしばらく黙ったまま見ていた私は、小さく声を出す。

「私たちもう、人間じゃないのに?」


 私がそう言った時、茜は怒ったように目を見開いたのだけど、ちょうどその時カフェのドアがからんからんと乱暴に鳴らされる音がしたので、私たちの話はそこで途切れてしまった。吉見の妹の方がドアのところに立って、まっすぐ私のほうを見ていた。


 茜の怒りっぽい顔から逃げ出すようにして通りに出た私に、吉見は開口一番、

「今日さ、泊めてくンない?」

 と、いつものぶっきらぼうな調子で言うから、私は

「ほあ?」

 とか間抜けな声を出すことになったのだった。



 帰り支度をして、お疲れ様、と茜がこちらの顔を見もしないままおざなりに言うのから逃げ出して、私は吉見と一緒に人気のない通りを歩いていた。

「兄さんは?」

 いつもはふたりで私に会いにくるから不思議に思って私が聞くと、吉見は

「しらね」

 とか、ぶすっとした声音で言う。

「どっかで酔いつぶれてンじゃないの」


 それからわざとみたいに大きく鼻を鳴らすから、私はなんとも言えなくて、彼女から見えないようにそっぽを向いて口をちょっと曲げた。ふた月前にここに来た時からずっと、吉見のふたりはしょっちゅう私のところにやって来て、雀荘で麻雀のいかさまに付き合わせたり、怪しいバイトを手伝わせようとしたり、よくわからないけれどご飯を奢ってくれたりして、私を街中連れ回した。ふたりと一緒だとほんとうに目が回るみたいだった。ふたりが私の心細さを気遣って、やたらめったら構っていたんだってわかったのは、ほんとうに最近になってから。いつもは私のバイトが終わるくらいの時間を見計らってふたり一緒にやって来るから、今日みたいにひとりで来ることなんて今までなかったのだ。吉見は私の方に目も向けず、横顔のままで口を開いた。


「……ときどきあんだよね。こうゆーの。勝手にひとりでどっか行ってさ」

 十二月の空気は冷たいから、私は巻いたマフラーを一度ぐっと口のところまで持ち上げる。

「ウチの部屋、兄貴と一緒じゃないと入れねーから」


 吉見はそう言って服の中から自分の鍵を取り出し、私の目の前にぷらんとぶら下げて見せた。その鍵は、一つの鍵を上から下に向かってぎざぎざに切り分けたみたいな形をしていた。


「ときどき……いなくなるんだったら、今まではどうしてたの?」

「みなみんとこ行ってた」

 でも、いつもあそこ行くわけにもいかないじゃん? と、吉見はちょっとはすまなそうだと思ってる顔で私に目配せする。

「兄貴から市井にさ、あたしのことよろしくって言ってたみたいで。でも、そういうことじゃなくてさ、あいつが帰ってくればいいし?」

 なあ、と吉見が私の顔を見てくるから、私は求められるまま頷いてみせた。それから吉見がふーっと吐き出した息は白くなって、夜の中に散り散りになっていった。

「路地裏とかで酔いつぶれて倒れてンの……ほんとにさ、そういう兄貴なんだ」

 吉見の声はぴりぴりとげとげして、時々ひっくり返る。

「『あのひと』にも、迷惑かけてさ……ほんと、バカなんだよ、バカ」

 それからまたひときわ大きく息を吐くから、私はなんだか心配になって、彼女の顔を覗き込む。

「……嫌いなの? 兄さんのこと」

 私の言葉に吉見は立ち止まって私の顔をまともに見た。それから特に悩んだ様子もなく、

「好きとか嫌いとか、そんなんじゃなくない? きょうだいって」

 と言うから、私は彼女が次に何を言うのか気になった。だから彼女の顔をそのまままっすぐ見ていたんだけど、私があんまりにも見つめるからか、吉見はちょっとびっくりしている。それから私を置いて歩き出してしまうから、私も歩き出す。


「気がついたときにはいて、気がついたら一緒にでかくなってた、ってだけ」

 私が追いついた横顔は唇を少し尖らせている。はらりとこぼれたマフラーの端をまた肩の上にのっけて、

「……そういうもの?」

 と問いかけると、

「よそんちのことはしらね」

 吉見は寒さで赤くなっている耳をさすった。もう少しで私の部屋があるアパルトマンに着く。

「でも、うちはそう。あいつもきっとそう思ってるよ。あたしのこと」


 吉見の言葉はずうっとぶっきらぼうなままだ。妹がこんなんで、兄の方もうるさいから、会うたび吉見のふたりは大きな声で喧嘩しあってて、付き合わされた私はいっつもため息を吐くことになる。そして、吉見に会うたび私は、私にもきょうだいがいたらどうだったんだろうって、ふたりの喧嘩をずっと聞いていたいような、聞いていたくないような、ちょっとむず痒い気持ちになるんだ。



 部屋の中に入ると、私はすぐにストーブの火を点けた。吉見は初めて来た私の部屋をぐるぐると見回して、それから窓に近づいた。そこからしばらく外を眺めていたあとで、こちらを振り返って

「いい部屋じゃん」

 と声を投げる。だから私はついつい笑顔になって

「ありがとう」

 と、お礼を言った。私の住む屋根裏部屋はあんまり広くないんだけど、窓からすぐ下の屋根の上に降りられるんだ。冬になる前は、ランタンを持ち出して何度かそこに出て本を読んだし、私の部屋はこのあたりじゃ一番高いところにあるらしくて、遠くの方まで屋根の平原が続いているのが見える。ここは、今じゃすっかりお気に入りの部屋だ。私は自分の首にかかったチェーンと、その先に付いた自分の鍵が胸ポケットに入っているのを確かめた。


 ふた月前、私のお腹の中から出て来たあの「子供」の体の中に、私の鍵はあった、らしい。らしいっていうのは、そう言う風に言って華屋のひとが鍵を渡して来たからだ。

「自分の部屋は自分で見つけるんだよ」

 と、透き通った声で言ったあの人の名前はたしか、枇杷、だったと思う。私のバイト先のカフェにも時々やって来る、たぶん、女のひと。かわいい靴を履いていたから、そうだと思うんだけど。でも男だか女だかどっちかよくわかんない。失礼になると思って一度も聞いたことがないけどさ。とにかく鍵をもらった私は、次の日にはその鍵を持って街の中を歩き回った。


「部屋なんか勝手に見つかるぜ」

 としか市井は言ってくれなかったし、私は半分くらい自暴自棄になって街をさまよっていたのだけれど、この部屋があるアパルトマンの前を通った時、なんとなく引き寄せられるようにして手をかけた鉄の玄関扉が、私に向かって不意にその鍵を開けたのだった。そして、ふらふら階段を上がってたどり着いて、最後にそのドアを開けたのがこの部屋だった。


 吉見は読み物机の椅子に自分の上着をさっさとかけてしまって、ストーブの前で靴を脱いでいる。あんまりにも自然にくつろいでいるけれど、びっくりするほど遠慮がないから、なんならもう失礼にも思わなかった。私も上着を脱いでクローゼットの中にかける。あかい火の灯るストーブに手をかざした吉見は、私の顔を振り返らないまま、

「最近なにかあった?」

 と、聞いて来た。

「……今日は迷子を外に送ったわ」

 茜に話せなかった私の冒険物語は、この時間にはもうだいぶしぼんでちゃちなものになっていた。ただの苦労話って感じだ。

「迷子?」

「そう、はぐれちゃった子だったみたい。制服に追われてたのよ」

「制服に?」

 そこで吉見は私の方を振り返って、口をへの字に曲げている。

「なンか、ふた月前のあんたみたい……」

 と、そこまで言ってから、吉見は悪いことをしたような顔をして押し黙った。私たちの間で、私の両親のことは話さないことになっていたんだ。いつのまにか。そうだ、私がふたりの前で泣いちゃったことがあるからだと思う。

「……あの子のことはもういいや。お父さんに会えたみたいだったし……」

 私はなんだか気まずくなって、ベッドの上に身を放り出した。あんまりやわらかくないスプリングが痛い。

「ん」

 とか吉見が私から目をそらして声を出すので、私は何か別のことを話そうと思った。何かあったかな。

「あ、そういえば、ね、」

 私は昨日の帰りのことを思い出していた。急に明るく弾んだ私の声に、吉見はこっちを振り返る。

「わ、わたし、」

 私はそれからベッドの横に立ち上がって、それから妙に気恥ずかしくなって、自分の背中を押すようにはっきりと声を出す。

「恋、したかも」

「こい」

 それから吉見はストーブの前であぐらをかいた。聞いてやるよって感じの顔だ。

「わかんない、わかんないわよ?」

 私はいてもたってもいられなくなって、ベッドの上に登った。

「わかんないけど、なんかそんな感じ! なの!」

 それから私は短いベッドの上を右に行ったり左に行ったりし始める。

「きのう、なんだけど、急にね、そんな感じがしたの。ううん、恋じゃないかもしれないんだけど、こう、とにかく、なんかね、どうしたらいいのかわかんないの、わたし!」

 それから私は、ひとに向かってこんなことを話しているのがものすごく恥ずかしいことのような気がしてきて、落ち着かなくてベッドの上でぴょんぴょん跳ねてみる。

「話すんじゃなかった!」


 もしも隣にひとが住んでたら苦情が来るんじゃないかなっていうくらい、私の声はわんわん響いて大きくなっていた。だから、もうどうしようもない思いが募って、自分の顔を覆って私はベッドの上で丸まった。それからそおっと手を外して、ぼんやり窓の外を見た。


「わかんないけど、すごく……恋って」

 その先に私は何か言おうとしたんだけれど、胸がぐうっと苦しくなって言葉をなくしてしまった。それから気を取り直して、何か喋ろうとするけれど、言葉がもつれる感じがする。

「きのう、ほんとは昨日始まったんじゃないのかもしれないけど、ううん、私にとっては昨日始まったの。その、だから、始まった、ばっかりなんだけど……」


 そこで私の言葉は喉の奥で詰まって打ち止めになってしまったんだけれど、吉見はそれをずっと静かに聞いていた。ストーブの火が燃える音がする。窓が風にがたがた揺れるのが聞こえる。マットレスの上で靴を脱いだ足が、なんだかすごく寒い気がしていた。

「あたしも好きだよ」

 私の不意を突くようにして聞こえたその言葉に、私はぱっと起き上がって彼女のほうを振り返った。相変わらずストーブの前であぐらをかいたままの格好で、吉見は火照って熱い私の顔を見ていた。吉見のちょっと切なそうなその顔は、それまで見て来た中でいちばん、女の子って感じがした。


「好きだよ、ひとを、好きになるの」

 吉見の言ったその言葉がなんだかものすごく胸にじいんとして、私は何も言えずに彼女の少しはにかんだ顔を見つめていた。続きを話して欲しかった。だから、彼女は続けてくれた。

「そいつがいるだけで世界が明るくなってさ」

 ぽつぽつと、吉見は話した。

「世界の中心がそいつみたいな気がしてきて」

 私はベッドの上に座って、両手で口元を覆って彼女の言葉の続きを聞いている。

「それで、そうやって、自分の全部が、そいつに引っ張られて行くみたいなのがさ、それが、幸せなんだ」

 私がほう、とため息をついた音が、部屋の端っこの方に消えて行った。

「あたし」

 吉見の優しい声はなんだか聴き心地が良くて、私は彼女のちょっと恥ずかしそうな顔に見入った。

「あたしが今まで愛されてきたみたいにさ、あたしも誰かのことを愛せるんだとしたら、それって……」

 うつむいていた吉見はそこで一度目を上げて私の顔を見て、自分が今までどんなことを喋っていたのか思い出したみたいにはっとして、それから急に目をそらす。

「……なンか、うまくいえない」


 それから吉見はいつものむっつりした顔に戻ったけれど、彼女の耳はちょっと赤いままだった。吉見はそれから思い切ったように立ち上がって、私の座るベッドのほうにやって来ると、ぶすっとした顔で私の隣に座る。私がついついにやっとしたままの顔でその横顔を見ていると、吉見はそれからばたんとベットの上につっぷした。彼女は布団の上に伏せて、もごもごした声で


「あたしもう寝る。起きたらあいつを探しにいく。きっとまた、きったない道の上でぶっ倒れてるから」

 それからほんとに眠ってしまったのかどうかはわからないけど、吉見はうんともすんとも言わなくなったから、私は彼女の頭の後ろに向かって

「おやすみ」

 とだけ、言っておいた。


***


 知らない方がいい、というのは、時として事実だ。ふらふらと人気のない街の中を這い回りながら、俺はぼうっとさっきのことを思い出していた。暴かれた枇杷の足の間にあったのは、見たことのないものだった。あれは、男でも女でもなかった。それだけ。そして、それがわかっただけで俺には十分だった。これ以上、何も、あいつに踏み込んではいけない。踏み込みたくない。


 あの薄暗い続き間の奥の奥、ベッドの上にちらりと見えた、銀色の髪、白い腕、仄かに漂う薔薇の花の匂い。あれはきっと、俺が見てはならないものだった。あれが、奴の秘密なのだ。


 俺はどっとため息をつく。とてもじゃないがしばらくは枇杷と顔を合わせる気にならない。そして、茜にも。なんて面倒な、そして、俺はなんてばかばっかやってるんだ。俺の顔から目を逸らして、非人間、と自称した彼女の苦々しい顔を、俺はもう忘れたかった。いや、どうも今日の俺は辛気臭くていけない。なんでこんな心持ちなんだ? いつもは、何が何だかわからないまま、なんとなく楽しくて、馬鹿らしくて、愉快でたまらないのに、どうして、今日は。


 石畳に落ちるぼうっとした影の中に浮かぶのは、例の朱色だ。そうだ、昨日は部屋に戻らずに一人で「普通に」眠ったんだ。いつぶりかしれない。道理で、頭がいつも以上に冴えている。ひどくメランコリーで悲観的な風に。だが、こんな寒空の下悲しんでいたって、寝床は探さなきゃならない。真木のところにでも行くか。あいつは俺を追いだしやしないだろう。あいつは俺を好きでも嫌いでもない。根本的に俺に興味がない。それは茜も同じことか。


 ──いや、同じだろうか? そのとき、ふっとそういった類の疑問が俺の中にくらりと浮かび上がった。俺は自分の呼気が白くたなびき溶け消えていくのをぼうっと見ている。彼女は俺に、何の感情も抱いていないのか?


 そのとき俺が思い出したのは、彼女に初めて会ったあの晩の光景だった。酩酊して溶け込んだ世界の中で、確かに俺の耳に届いた彼女の声、言葉。たったひとつの、しかしはっきり俺の脳の端に釘のように刺さったままのフレーズ。震える吐息の唇。


「ごめんね」

 俺の記憶の中の彼女の像が、そのときにわかにゆらぎ始めた。ベッドの上に腰掛ける、女。黒い髪の下の、歪められた目元。それは、「それは」?

「……誰だ?」


 俺の口が気の抜けたように薄く開いたとき、背後に何かがどさりと落ちる音がした。首を回した俺の目に順々に映り込む、配管のへばりついた鈍色のコンクリート壁、月の光が落とす、真っ黒な影の葉脈、薄汚れた石畳──そこには。


 一冊の本が、色味のない路地の上に落ちていた。それは、忽然とそこに姿を現したのだとしか思えないほどに、その風景の中で間違いなく異質なものだった。闇夜の中に浮かび上がる、皮で丹念に装丁を施された旧時代的な形式のその本は、そこに黙って佇みながら、しかし確実にこの俺を「見ている」ように思えた。俺は瞬時に壁伝いに空を見上げ、黒い影の中に走るくすんだ群青の夜空を両の眼に捉えようとした、が。俺が思わず顔を歪めたのは、黒い影の土砂が俺の頭上数メートルに迫っていたからだ。俺の視界が必死に捉えたその影の輪郭は、本の形をしているように思われた、が、全てをはっきりと捉えることはできなかった。俺は次の瞬間、必死に両腕で頭を覆い、ぐっと目を瞑った。


 腕に打ち付ける激痛を覚悟していた俺は、依然として何の痛みもない無音の夜の中で慎重に目を開いた。腕の隙間に見えたのは、色味のない薄暗い路地、ではなくて、なぜか、ほの明るい橙の光だった。驚くままに腕を下ろすと、俺はそびえ立つ本棚に両側を挟まれていた。ぶわりと香る古い紙の匂い。俺は息が止まるような心地がして、必死に首を回して自分の居場所を確かめようとする。視線の先には、俺のすぐ横にあるのと同様の本棚がかすむほど遠くまで延々と続いていた。まるで本の街だ。そのとき寒い冬の風が俺の足元に吹き付け、がたがたと揺れる窓の音につられてぐっと首を上に向ければ、窓枠が張り巡らされたガラスの天井の奥に満天の星空が広がり、その下にかかるランタンがあちこちで燃えて本の街に柔らかい明かりを投げかけているのだった。あまりに美しいその光景に、俺は息を飲む。いったいここがどこなのかなんていう疑問がどうだってよくなるくらいに、その光景は悲しくなるほど美しかった。


***


 吉見がいるせいで狭くなったベッドに横たわって、私は、衛のことや、今日あった女の子のことや、まだ怒っているかもしれない茜のことを考えた。それから、昨日、かつかつハイヒールを鳴らしながらカフェから出ていった、あのひとのことも考えた。考えることがたくさんでくらくらするけれど、吉見の寝息がすぐそばから聞こえてきて、私はなんだか安心してしまう。

 あのひとも、恋をするんだろうか。


***


「言葉はひととひとを繋ぐ媒介だ。言葉に触れるとき、我々は常に言葉以上のものをそこに見出すだろう。そうだ。我々は、言葉の先にあるものをこそ、捉えなければならない」


 僕は横に広げたトレーの上のソーサーにティーカップを返す。そうすると、書架の下から彼女がこちらを見上げているのがわかったから、僕は、ごちそうさま、と声をかけた。おかわりは? と彼女が言うから、僕はいいえもう結構とそれだけ返す。それから、微笑む彼女の目を覗き込む。


「……君は『これ』で満足なんだろう」

 僕の言葉に彼女は少し肩をすくめてはにかんでから、

「ええ、これできっと、全部うまくいくはずです」

 と、はきはきと答えた。

「信じるよ」


 彼女がこの仕組みを変えるって言うんなら、それはほんとうに変わるってことなんだから、僕はただそれに従うだけだ。僕は、世界の手足にすぎない。誰だって光を求めて生きるのだ。僕だって同じこと。


 そうだ。悪いけれど、今夜の話はこれでおしまい。あなたとはまた、次の晩に。

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