第224話 ■千織の転生 (タイ編 その27)

■千織の転生 (タイ編 その27)


ミキは千織を一応発見したが、あと少しのところで残念な結果になってしまった。

陽子が言ったとおり、千織はロボットの体と離れ霊体として浮遊している。

もう、ロボットである体は破壊されてしまったし、殺し屋らしき女も逃走したので、危険な状態は過ぎ去ったと思われる。

そうなると一人残してきた、生身の陽子の方が俄然、心配になってきた。

「あたし、別の用があるので、しばらくの間、千織の事を頼みます」

ミキはソンティにそう言い残し、一旦陽子の元へ戻ることにした。

今は限定解除状態なので、人目の付かない場所まで来ると一気に上空500mまで飛び上がる。


ドォーン

音速の壁にいとも簡単に到達する。

ギューーン

千織の時と同じく陽子の気配を探査しながら、進む方向を定めて降下して行く。

・・・

「ミキさん?」

陽子もミキの気を感じて立ち止まる。

この時、二人の間の距離は2kmほどあったが、お互いにその存在を明確に認識していた。

ミキは陽子の他に、あのター○ネーターの気も同時に感じ取っている。

それも陽子のすぐ近くにだ!


パシュッ

デヤァーッ

ロケットランチャの発射音とミキの叫び声が同時に響き渡った。


バァーーンッ

轟音とともに、陽子が居たであろう場所に、濛々と煙が立ち込める。

「ジュディ。 見たか? あの女を木端微塵に吹き飛ばしてやったぞ!」

「あれじゃ、跡形もないわね。 スッキリしたわ。 ジェイソン、ありがとう」


『ふふんっだ。 女神様の力を甘くみては困るわね』

ミキはロケット弾が着弾する直前に陽子の周りに強力なバリアを張ったのだった。

もちろん、バリアと言っても神力であるので、非科学的な未知のエネルギーである。

陽子は上空で静止しているミキと目があって、怪しげに微笑んだ。

『これは、きっと後でとんでもないほど しつこく色々な質問をしてくるだろうな』

ミキは少し憂鬱な気分になった。


辺りに飛び散った煙が風で流され、無傷の陽子の姿が目の前に現れるとジュディとジェイソンは驚きの声をあげた。

「おい、いったいどうなってるんだ?」

「なによ! ジェイソン。 あの女、生きてるじゃないの!」

クソッ


ガチャッ

バァーーン

ジャイソンは間髪いれず、今度はショットガンを陽子目掛けてぶっ放す。

が、ミキが陽子の周りに張ったバリアは強力であった。

弾は一瞬で、バリアとの境界で溶けて消滅してしまう。

バァーーン

バァーーン

ジェイソンは、それでも諦めず続けざまに何発も放つ。

『これじゃ、いつまでも埒があかないね』

ミキは陽子の周りに球状に張られたバリア毎、自分の居る上空へと牽引する。

「あらあら、ミキさん。 こんなに早く再開できるなんて、陽子とっても嬉しいわぁ」

そう言う陽子の目は、飛び切りに面白いものを見つけたとキラキラ輝いている。

『陽子さんの記憶を消したら、自分も消滅しちゃうしなぁ・・・』

ミキはジェイソン達より、陽子の質問攻めの方が怖くなって来た。


「なんなの? あれ?」

「あいつら、本当に化け物だったのか」

上空に静止し、自分たちを見下ろしているミキと陽子を見て殺し屋の二人は思わず後ずさる。

「そこの二人っ! あたしたちは、お前たちの想像を遥かに超えた者として此処に存在する! これ以上あたし達に係わるようなら次は容赦しない! 肝に銘じておきなさい!!」

そう言うとミキは威嚇のために、殺し屋達の間に、電撃を一発喰らわした。


バリバリバリッ

ぐわっ

キャアー

直撃ではなかったものの、服はボロボロ、髪の毛もチリヂリになってしまった。

「いけねっ。 ちょっと破壊力があり過ぎたかな?」

千織の事もあって、怒りが込められた分、威力が予想を上回ったのかも知れない。

「ミキさん。 素敵♪」

ミキの隣で陽子が嬉しそうに微笑んだ。

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