第129話 ◆ミキ、神様に見離される?
◆ミキ、神様に見離される?
さて、神様に無礼なメールを返信してしまったミキは、時間が経つにつれて後悔し始めていた。
「神様は親切に自転車でコケルって教えてくれたのに、あたしったら”バカ”って返信しちゃったよ。 もしかしたら、何か罰ばちが当たるかも~」
ウ゛ゥ゛ッ ウ゛ゥ゛ッ
マナーモードにしておいた、携帯がバイブレーションしながら机の上で踊りだすがメールの着信なので、直ぐに静かになる。
「うわっ、見たくねぇーーーっ」
ミキは何が書かれているか怖くてメールを見る勇気が出ない。
でも、もしかしたら仕事のメールかも知れないし、入院中の美奈子が退屈して送ってきたメールかも知れない。
仕方がないのでミキは、おそるおそる、携帯を開く。
カチッ
液晶の表示をボタンを操作して、メール→受信BOXの順に選択していく。
はぁ~
思わず深いため息がもれる。
件名:『神様に対してバカとは失礼であろう』
本文:『お詫びとしてXXXXXをして奉納しなさい。 さもなくば、あなたには不幸の数々が続くことでしょう。 神様より』
「な、なんであたしが、お詫びとしてXXXXXをしなければならないの? もう、わけがわからないよ~!」
ミキは、仕事が入っていたので、とりあえずこのメールには返信をせずに、今日はバッテリーを交換した赤いBMWに乗って、仕事先へ出かけたのであった。
さて真っ赤なBMWは、日ごろあまり乗ってもらえない憂さを晴らすかのように首都高速をグイグイと加速して行く。
「ふ~ん。 BMWもなかなかいい感じだねぇ~」
首都高速は渋滞も無く、FMラジオから聞こえる軽快なBGMに乗って、ミキのアクセルにこめる力もつい強めになる。
目の前に大型トラックが3台連なって走っているのを見ながら、素早く右のウインカーを出して追い越しレーンに出ると一気に抜き去った。
その途端、ハンドルに軽いショックがあり、次にゴトゴトとボディが振動し始めた。
「な、なんだっ?」
ミキは、ハザードを点けBMWを路肩に寄せて駐車した。
その直ぐ脇を、先ほど追い越したトラックがビュンビュンと通りすぎる。
ミキは、後続車に気をつけながら、ドアを開けBMWのタイヤを見ると案の定、右後輪がバーストしていた。
「ひょっとしたら、これは・・・ さっそく罰ばちが当たったのかなぁ・・・」
ぶつぶつ言いながら、携帯でロードサービスに電話をかける。
「もしもし、首都高速X号線のXXインター手前でパンクしてしまって・・・ えっ? お蕎麦屋さんですか? すみませ~ん、間違えました」
ピッ
「あれぇ・・・ おっかしいなぁ・・・ メモリ登録してるから間違えるハズないのに・・・」
結局、ミキはリダイヤルできずに、鋭二にヘルプ電話をかける。
「もしもし。 あっ、ごめん。 あたし。 首都高でBMWがパンクしちゃって。 うん。 ロードサービスに電話するとお蕎麦屋さんにかかっちゃうんだよ。 わけわかんないよ~全くぅ。 んで、困っちゃって・・・ うん。 うん。 仕事中なのに、ごめんね。 助かるわ。 ありがとう」
ミキが路肩でハザードを点けて、30分ほど待っていると、クルマ搬送用の大型トレーラーが、BMWの前側の路肩に駐車した。
「大沢ミキ様ですね?」
若いロードサービスマンが降りてきて、ミキに確認する。
「はい。 すみません。 よろしくお願いします」
ミキはペコリと頭を下げる。
「それじゃ、大沢様はトラックの助手席の方に乗って待っててください」
「はい」
ミキは言われたとおり助手席に乗り込むが、さすがに大型車の運転席はすごく高い位置にあるので、乗り込むのに一苦労である。
作業員は、BMWをトラックの荷台に移動させると、ミキの行き先を聞き送ってくれると言う。
ゴォオーー
全長17mはあるだろうか、普通車なら7台は運搬できる大型トレーラーは大きなエンジン音を響かせ、ゆっくりと動き始めた。
「お台場の玄関にこのクルマを横付けなんて、ちょっとカッコイイかも」
ミキは、助手席の窓から流れる景色を見ながら、ひとりニヤニヤしている。
パンクした現場からお台場までは、30分程度であったが、順調に行ってスタジオ入りの時間まで、あと10分ほどの時間を残しての到着予定である。
途中、少しだけ渋滞に巻き込まれたが、何とか予定通りにTV局前に到着した。
プシュッーー
エアブレーキの大きな音をさせ、トレーラーが止まると、ミキが助手席から”やっ”とカッコ良く飛び降りた・・・
つもりだったが、ペシャと言う音とともに、つぶれたカエルのような格好で地面に激突。
幸い、たいした怪我はしなかったが、結構な鼻血が出て、せっかくのお気に入りの洋服が汚れてしまった。
『お詫びとしてXXXXXをして奉納しなさい さもなくば、あなたには不幸の数々が続くことでしょう。 神様より』
ミキは、今朝届いたメールを思い出し、BMWのパンク、今の惨めな転落が頭の中をよぎる。
「あ゛ーーー もう~ お詫びとして、XXXXXをやるしかないのか。 でも神様もなんで、こんなことをやれなんて言うのかなぁ・・ 仕方が無い。 仕事が終わったら神様にメールを送ってみようっと」
その日の収録では、トナカイのような赤い鼻を、メイクさんにファンデーションを濃いめに塗ってもらって、なんとかごまかしたミキであった
次回、「神様の要求」へ続く
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