第98話 ■林太郎起動!
■林太郎起動!
どうやら腰が抜けたらしい清水さんを放置したまま、梱包を解いていたミキであったが。
「わ、わっ!! 超イケメンじゃん!」
ミキが思わず大きな声をあげる。
「なっ、なんですか? イケメンって」
腰を抜かしていた清水さんが、イケメンというワードにすかさず反応を示す。
まだ腰が抜けているのか、清水さんは、林太郎が納まっている箱まで貞子のように這いずってきた。
「まぁ・・ こ、これは・・・」
「そう。 ミクちゃんと同じ。 秀一お義兄さんが作ったロボットだよ」
ごくっ
清水さんが生唾を飲む音が聞こえてきた。
「清水さん。 ヨダレが出てるよ・・」
「えっ? やだ。 わたくしったら」
「アハハ。 うそ、うそ。 ごめん、ごめん」
「あ゛~ もう! ミキさま。 からかわないで下さいよ。 そ、それにしても、凄いイケメンですねぇ」
「うん。 ちょっと神がかってるような気さえするねぇ」
「ほんとうですね。 ところで、これって動くんですか?」
「う~ん。 っていうか、動いてくれないと困るんだけどね・・・」
林太郎が完成するまで、霊媒師の陽子が張った結界のおかげで千織の姿は部屋の中では見かけないが、外出した際には、視界の中に頻繁に現れている。
きっと、お屋敷の取り壊し工事日が、徐々に迫ってきているからだろう。
ガサッ ガサッ
残りの梱包材をどけると・・・
「きゃっ」
「ありゃ~」
な、なんと、林太郎は服を着ていなかった。
「清水さん。 目隠しした指の間が、おおきく開いてるってばっ!」
「はぁ~」
「どうしたの? 清水さんてば? 溜息なんかついて」
「だって、初めて見る男性の裸が、ロボットだなんて、なんだかなって・・」
「ピュアなんだねぇ~」
「って言うか。 男に縁が無いってだけでして・・・」
「だって、清水さんって幾つだっけ?」
「もう直ぐ23になります」
「ふむ。 まっ、まだまだ大丈夫よ!」
「そうですか?」
「だって、4大でたら22でしょ。 それからOLしてぇ・・・」
「わたしは、家政婦 兼 格闘家ですが・・」
「なんだったら、千織が成仏したら林太郎くんを譲ってもらってあげようか?」
「それって、どこかのTVドラマみたいじゃないですか? 嫌ですよ。 普通の男がいいです」
「普通って、ある意味、一番難しいんじゃない?」
「そうですね。 そう言えば普通ってなんだろう?」
当たり前だが、二人が話しをしている間、箱の中の林太郎は全裸のまんまである。
否、未来ミクが、箱詰めした際、股間を覆っていたであろうタオルが1枚、○△$%からお尻にかけて引っかかっていた。
「取り合えず、鋭ニさんのパンツでも履かせておこうか」
「そうですね」
「それじゃ、清水さん履かせてあげてくれる?」
「えぇーーーっ!!」
***
**
*
なんだかんだの一騒ぎはあったものの兎に角、林太郎はパンツを履かせてもらった。
(パパパ、パッ、パッ、パァ~ン HPが3増えた)←ドラクエ風
「そう言えば、説明書が入ってないね?」
「そうですね。 梱包材の中にも、それらしき物は無かったですよ」
「ミクちゃんの起動は、確か・・・」
「確か・・どうだったんですか?」
「アハハ。 あたしが再起動したことって無かったわ!」
ガクゥー
「清水さん。 林太郎くんの体にレバーやスイッチの類たぐいは無い?」
「レバーですか・・・」
カァーー (゜.゜*)
「やっ なっ、なに赤くなってるのよ!」
「いえ、ミキさま。 何でもありません」
「そうだ! 電話でお義兄さんに聞いてみればいいんじゃん。 ネッ?」
「ナイスアイデアです。 ミキさま♪ でもニューヨークとココの時差は確か・・・」
「あっ、そうそう。 14時間くらいあったんだっけ?」
「確か冬と夏で1時間くらい違ってませんでしたっけ?」
「???」
「ほらっ、サマータイムって、ご存知ありませんか?」
「うん。 聞いた事がある」
「いま、11時過ぎですから、向こうは真夜中ですよ」
「あちゃー」
電話は無理だと判断した清水さんは、林太郎の体をあちこち調べ始めた。
瞼を手で開いてみたり、口の中を覗いてみたり、耳の穴を懐中電灯で照らしてみたり・・・
「ミキさま。 ダメです! それらしいものは見つかりません」
「ミクちゃんの時は充電する場合、本体側のプラグは、かなり際どいところに設定されていたんだよ」
「そうでしたね。 女の敵! 思い出しました」
「と言う事は・・・」
「言うことは?」
清水さんが頷きながら復唱する。
「やっぱり、あそこしかないか?」
「嫌ーーー!」
「それは、ココだっ!」
ミキの右手は、林太郎の下半身の方へ伸びて行く。
カチッ
ブゥン
林太郎の瞼がピクリと動く。
「やったーー! やっぱりおヘソの穴の奥だったぁ~」
「・・・」
次回、「いよいよご対面」(前編)へ続く
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