第96話 ■再びニューヨークへ

■再びニューヨークへ


林太郎の写真を手にしたミキと鋭ニは、再び秀一と未来ミクの住むニューヨークへと旅立つことになった。

「こんなに早く、またニューヨークに行くことになるなんて思ってもみなかったよ」

ミキは、忙しいスケジュールの合間を縫って、なんとか3日間の休みを強引に作り出した。

その3日間のために、美奈子マネージャに貸しを作った、あのクイズ番組の一件も、結局チャラにされてしまったのだが。


「ねぇ、今度もまた自家用ジェットで行くの?」

「うん。 グローバル・エクスプレスは、マッハ0.8は出るからね」

「それって凄いの?」

「そうだね。 ジャンボジェットと同じくらいかな」

「ふ~ん。 やっぱ贅沢だよね~」

「ビジネスは、時間が命なんだ」

「Time is Money ですか」

「そう言うこと!」

「でも今回は、ビジネスじゃないよ?」

「あのね。 千織の件が解決できなければ、お互い仕事に支障がでるでしょ!」

「なるほど。 そう言うことかぁ」

そんなこんなで、二人は林太郎の写真とともに、ニューヨークへ旅立ったのだった。

      ♪

ぬけるような青空、眼下に浮かぶ綿のような一面の白い雲。

ジェット機から眺める窓の外の景色は、いつも幻想的である。

自家用ジェットは、空飛ぶマイホーム。

ニューヨークまでの長旅でも疲れる事は全く無い。

シャワールーム、ベッドルームも備えられていて、大画面のスクリーンで最新作DVDを観賞している間に、目的地へ着いてしまう。


空港には、秀一と未来がクルマで迎えに来てくれていた。

未来はミキを見つけると、その場で大きく手を振ってジャンプ。

着地と同時に凄いスピードで駆けよってきた。

「うわっ! 未来ちゃん。 時速80キロは出てるんじゃない。 それにさっきのジャンプは軽く12mは飛び上がってたよ! 人目についたら、超まずいじゃん!」

「未来ちゃんはセンサーで辺りを確認してるから大丈夫なんじゃないの?」

「そっか。 あの娘のセンサーは凄い性能なんだっけ」


未来は、ミキたちの傍までくると急減速。

ザザーーッ

辺りに砂埃が舞い上がる。

けほっ けほっ

「ミキさん、いらっしゃい。 お待ちしてました」

未来はグラビア・アイドルと見紛うばかりの眩しい笑顔で二人を出迎えた。


「急に来ちゃって、ごめんね~」

「いいえ。 また会えてとっても嬉しいです」

「あたしも~♪」

「秀一がクルマで待っています」

「兄貴は元気?」

「はい。 研究も順調に進んでいますから」

「今度は何の研究なの?」

「軽量化と強度アップ。 それに耐水性と電磁シールドの強化です」

「すごぉ~い。 ますますパワーアップしちゃうね!」

「耐水性をアップすると放熱するのが難しくって大変なんですよ」

「ふ~ん。 ひょとして未来ちゃんも研究を手伝っているの?」

「はい♪ わかりましたか?」

「うん。 雰囲気が博士みたいだったもん」

「うふふ」


未来は本当にロボットなのだろうか。

ミキは再会した未来を見つめながら、近い将来ロボットが人間の社会に無くてはならないものになるだろうと思ったのであった。

        ♪

四人はクルマでハイウエイを飛ばし、途中のレストランで食事をすませて見覚えのある秀一の研究所に到着した。

空の長旅の疲れを癒すため、リビングのソファにゆったりと座り、未来が用意してくれた、コーヒーとケーキで一息つく間に、今回ニューヨークを訪ねた理由わけを鋭ニが詳しく説明し始めた。


「ところで霊って、そんなにはっきりと見えるものなのかい。 僕も是非見てみたいなぁ」 

秀一は、ロボット以外の物に初めて興味を抱いたようだ。

「兄貴は、霊の存在を信じているの?」

「信じるも信じないもないよ。 僕は鋭ニやミキさんのことを信じている。 だから二人が見たと言うなら、僕もそれを信じるよ」

「千織は、すっごく怖い霊なんですよ。 それでも見たいんですか?」

ミキがお化けのまねをしてみせるが、秀一はあまり怖がっていないようだ。


「もし霊が存在するとしても正体がわからないからね。 僕にとっては研究対象物がまた一つ増えたって事になるだけだ。 そっか。 もしかすると亡くなる前の思念がエネルギーとして残存・・・」

「うわっ、もう研究モードになっちゃったよ! 未来ちゃん何とかして」

「秀一さん・・」

「わかってるよ。 それで僕に林太郎くんのロボットを作ってくれって事なんだね」

「はい、そのとおりなんです」

「で、その写真の人が林太郎くん?」

「ええ。 千織が林太郎くんに会ったのは、林太郎くんが5歳の時なんです。 でも、千織も年月とともにある程度の歳に成長?・・してるっていうか・・・」

「それでね兄貴。 千織を必ず成仏させてあげるには、林太郎くんに一芝居うってもらわなくっちゃならないんだ」

「一芝居っていうのは?」

「彼女は林太郎くんと結婚の約束をしたって言ってるんだ」

「なるほど。 晴れて結婚できれば成仏するっていうことか」

「そう言うことサ」

「よしっ! わかった。 僕が必ず成仏させて見せるぞっ!!」

秀一のガッツポーズに、何かが違うと心の中で思うミキであった。


次回、「イケメン林太郎」へ続く

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