第57話 ◆絶体絶命

◆絶体絶命


「つまりね。 ミキは、あと5分後には死んでいるって事よ!」

クローンがきつく言い放つ。


「ええっーーーー!! 大変。 お姉さま。 ここに来たらダメですぅーーー!」

ミカは、2号の殺意が本気なのを感じとって、檻の中で大慌てである。

まるで檻の中で暴れるチンパンジーのようだ。

ちょうどその時、表通りでは・・・


キキキィーーーーー

廃屋と化した研究所の正門の前に、レガシーが猛スピードで走ってきて急停車した!

バタンッ

レガシーの運転席から、転がるようにミキが飛び出してくる!


「ミカちゃん!! どこにいるの、直ぐに助けてあげるからね!」

何も考えずに正面から突入してしまうところが、ミキのおバカ(おっと失礼)な性格である。

相手は悪者!  前回、高嶋教授は拳銃まで持ってたっていうのに何も考えていない。

しかも今回は鋭ニもいないのだし、もうちょっと考えて行動してもいいと思う。


「ミカちゃん! 何処ーーー!」

遠くからミキの声が聞こえてくる。

「お姉さまーー! お願いだから来ないでーー! ミカは、もうどうなってもいいですーー!」

ミカはミキに届くよう、思いっきり叫ぶ!!


カッ カッ カッ

2号が無表情のままミカの檻に近づいて行く。

ヒールの音だけが部屋の中に冷たく響く。

「ミカちゃん。 アナタ、う・る・さ・す・ぎ。 少し黙ってなさい」

シュッ

あ゛ーー ミカは、また例の催眠スプレーをかけられてしまった。


一方こちらはミキ。

「ミカちゃーーん。 こ、ここは・・・」

ある部屋の前で、ミキの足がピタッと止まる。

懐中電灯に照らし出された見覚えのある茶色の重々しいドア。

そう、ここは、ミキが捕まって解剖されかけた、あの部屋である。

ごくっ

ミキは記憶がよみがえって思わず生唾を飲み込む。 足もガクガク震えてきた。


「ミカちゃん・・・」

でも、ミキは直ぐに何かを決意したような厳しい顔付きでノブに手をかけ、ゆっくりまわしながら少しずつドアを押し開いて行く。


しかし、そのドアの裏側では、当然のように2号が冷たい表情で、ミキが中に入ってくるのをじっと待ち構えていた。

ドアが90度まで開くと、正面に手術台、その左奥にあの時ミキが閉じ込められていた檻が見えた。

懐中電灯をゆっくり動かしながら、部屋の隅から反対側まで照らしてミカを探していく。

その明かりが檻の中を照らしたとき、その中に人影を発見!


「ミカ・・ちゃん? そこにいるのはミカちゃんなの?」

ミキは、その時点で初めて、部屋の中へ足を一歩踏み込んだ。

そして部屋の中に3歩ほど進んだとき・・・


ヒュンッ

静まり返った部屋の中の空気が、小さな音を立てて沈黙を破った。


ドガッ

2号が回し蹴りを放ち、ミキの背中にヒットしたのだ。

ガターン

ミキは反動で手術台に激突し、その勢いで反対側の床まではじき飛ばされる。

「イタタ・・・」

突然蹴り飛ばされたため、自分の身に何が起きたかわからない。


「死ねっ!」

起き上がりかけたミキに、すぐさま2号の第二弾の蹴りが飛んできた。

ビュンッ

ビシッ


ミキはその蹴りをかろうじて右腕で受け、顔面への直撃は何とか避けたが、右腕から嫌な音がし、同時に今までに経験したことがない激痛が走る。


グゥ・・・

そのあまりの痛みにミキは声がでない。

痛みに必死で耐えながら、ミキが右腕越しに見た敵の顔は・・・

「エ、エミ!? なんで?」

「うるさい! さっさと死ね!」 

憎しみでいっぱいのエミの顔!

「エミ・・・ アナタ・・このあいだ旅館でアナタの顔に書いた落書きのことを、まだ恨んでいたのね・・・」


あちゃー ミキはまったく気が付いていない。 そいつはエミじゃなくてクローン2号だ!

エミは、そんな娘じゃないのを一番良く知ってるハズなのに。

しかも普通、落書きくらいで人を殺さないぞ!




次回、「最強の女 清水参上」へ続く

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