第49話 ◆えっ? ばれちゃった

◆えっ? ばれちゃった?


さて、今夜はひょんな事(杉山の出没とサキのスランプ)から、みんなで大沢家に泊ることになった。

それで夕食も済み、これからお風呂に入ってから、パジャマ・パーティ突入の予定なのである。


「みんな。 うちのお風呂はサキちゃん家みたいに、広ーいお風呂じゃないから一人ずつ順番に入ってね」

「えーーーっ、ミカはミキさんと一緒に入りたいですぅ」

ギクッ 『またこの娘はーーー!』

「えっと、みんなのバスタオルはココに出しておくからね」

ミキは、しれっとミカの野望をカワス気であるが。

『あ゛ーーーミカのこと無視したなぁー。 よ~しっ』

早速ミカが何かを企んだようだ!


「ハイッ。 それじゃ、最初はミカちゃんからどうぞ♪」

「あーっと。 ミカはさっき食べ過ぎて、まだお腹がいっぱいだから、後にしますぅ」

『そ、そうきたか!』

「そう。 それじゃ、サキちゃんサキ入ってよ。 なんちって」

「うん、いいけど。 ミキ、それ親父ギャグね」

「そうよ。 わたし元は男だからね。 ハイッ。 タオルとパジャマ」

「ありがとう」

結局、一番風呂は、お嬢様のサキになった。


『元男って? ミキさんって、ニューハーフ?』

おやおや、ミキ大丈夫なのか。 どうやらミカに聞こえていたようだ! 自分の家だからって安心してはいけない!


「ミカちゃん。 お風呂入らないんなら、ちょっといいかな」

どうやらミキは、ミカ対策を仕掛けるようだ。


「なんですか?」

「えっと、夜食の準備を手伝って欲しいんだ」

「は~い。 いいですよ」

「夜食って言っても、お菓子とジュースくらいだけどね」

「それじゃあ、コップと菓子器とお皿を用意するくらいですか?」

「うん。 このお菓子を袋から出して、適当に器に移してね」

「わっ、すごい量ですね~!」

「うっ・・見てるとついね。 ついよ! つい買ってしまうのよ」

「それで、ミキさん最近・・」

「はっ・・・またココ? ココなの?」

ミキはミカの指摘がウエストサイズと思い焦るが。

「そうですよ! またオッパイが大きくなってます。 ひょっとして、もうGカップですか?」

「そう。 最近またブラがきつい・・・って、な、なに言わせるの!!」


「ちょっと触らせてください。 触れば何カップかわかりますから」

「ふっ、ミカちゃん・・・ もう将来の職業は決まりだね」

「えっ? わたし将来、何になれるんですか?」

「きまってるじゃん。 ランジェリーショップの店員さん」

「えーーっ。 店員さんですかぁ・・・」

「それもただの店員さんじゃないのよ! カリスマよ。 カ・リ・ス・マ!」

「むぅ・・・」

ミカは考え込むが、まんざらではないようだ。


「さっ、次はお布団を敷くから、手伝って」

「は~い」

「お姉ちゃん。 布団ならもう敷いてきたよ」

ちょうどエミが奥の部屋から出て来た。


「あらっ。 もう、エミがやってくれたの。 サンキュー」

「あっそうだ、エミ。 冷蔵庫にウーロン茶しか無かったんで、ジュースを買ってきてくれる?」

「うんいいよ。 何ジュース?」

「ミカちゃんは、何がいい?」

「う~ん。 それじゃ、わたしも一緒に行きます」

「はい、それじゃお金。 コンビニは大通りを右に行ってすぐの所にあるから」

「わかりましたぁ。 いってきま~す」

「ねぇ、まだ表に杉山が居るかも知れないから、裏庭側から出た方がいいと思うよ」

「了解しましたぁ」


やれやれ、杉山はもうとっくに帰っている。 でも用心にこしたことはないのだけど。

「ふ~ぅ。 いいお湯だったわー。 小さい湯船だと体があったまるのかしら?」

「どうせ、うちのお風呂は狭いですよーーー! サキのところみたいに無駄にエネルギーを使ってないしぃ」

「あら、別に嫌味を言ってるんじゃないのよ。 普通に感動したんだから」


「ふーん。 まっいいか。 でもサキは相変わらずきれいな肌ね~」

「ううん。 そんなことないけど・・・でもピアノの演奏会の前よりは、よくなったんだけどね」

「えっ、やっぱりプレッシャーで肌荒れが酷くなるの?」

「そうみたい。 あ~ぁ、やっぱりミキと一緒にティンカーベルをやってたほうが楽しくって良かったかな~」

「それはだめだよ」

「どうして?」

「だって、サキは神崎家の後を継ぐんでしょ。 大切な一人娘なんだから芸能界はやっぱ無理だよ」

「でもねー。 所詮は女だし。 お婿さんが会社の経営をするだろーし。 あんな広い家で、一人でぽつんと待って居るだけなんて・・・」

「そんな贅沢なぁ・・・」

「ミキにはわからないかも知れないけど、普通の家の普通の女の子が一番楽しいんじゃないかな」

「う~ん。 わたしには、よくわからないや?」

「そうね。 いったい何が幸せなんだろうね」

「ひとつ言えるのは、イイ友達がたくさんいるって事じゃないかしら。 わたしは、サキがいてくれてとっても良かったと思ってるよ」

「ミキ・・・・ わたしが一生懸命育てた甲斐があったわ~」

サキは、思わずミキを抱き寄せて頭を撫でる。

「なっ、わたしはペットかい!!」

「冗談よ。 冗談。 ところで、エミちゃんとミカちゃんは?」

「二人でジュースを買いにいってる」

「そう。 じゃ、ミキ先にお風呂入っちゃえば」

「そうだね。そうする」

結局2番目はミキが入るようだ。


少しして、買物に出かけていた二人が帰ってきた。

「ただいま~。 えへへ、アイスも買ってきちゃいましたぁ」

「お姉ちゃん。 お菓子も追加で買っちゃった。 いつも言ってる、お姉ちゃんの気持ちがよくわかったわ。 美味しそうなのがずらっと並んで・・・??」

「おかえり~」

ミキの代わりに、サキがタオルで頭を拭きながら玄関に出てくる。

「あれっ? ミキさんは?」

ミカは、早速大好きなミキのことが気になっているようだ。

「うん。 ちょっと前にお風呂に入ったわよ」

『チャ~ンス』


「ん? ミカちゃん何か言った?」

「あっ、いえ。 何にも言ってませ~ん」

「わたしアイスが溶けてしまうから、冷蔵庫にしまってくるね」

エミはコンビニの袋を持ってキッチンへ向かう。


「ミカちゃん。あとはやることないから、テレビでも見てれば?」

「はい。 えっと。 それじゃ、わたしちょっとトイレに行ってきます」

ミカはトイレに行くと行ってお風呂の方にしれっと歩いていく。

『ふふふ・・・しめしめミカ乱入しちゃいますぅ』


ゾクゾクーー

「おかしいな? サキは、自分の家のよりあったまるって言ってたのに? 寒気がするーーー」

スルスル  ←ミカちゃんが、ショ○ツを脱いでる音

ファサッ  ←床に○ョーツが落ちた音

トコトコ  ←お風呂の戸口まで移動する足音

カチャッ  ←お風呂の戸がちょっとだけ開いた音

ビクッ

お風呂の戸が突然開いたので、ミキはびっくりして振り返った。


「ミ・・ミカちゃん」

「えへへへ。 やったぁ、念願の二人お風呂ですぅ。 うわっ、ミキさん大きい」

もみゅっ

さっそくミカが欲望のまま行動に出る。

「ちょっ・・・さわっ・・・あ゛ーーーー」

「いいなぁー。 うらやましいーー」

「はぅーー。 ほらっ、そんな事してないで。 肩まで浸からなきゃダメでしょ」

「ミキさん・・・ぎゅーしていいですか?」

「ぎゅーって?」

「えっと。ぎゅーーーって。 こうするんです」

「んっーーー。 はぁーー。 ミカちゃん・・」

「ふぅー・・・ ミカひさびさに大満足ですぅ」

「・・・・」 ミキは、力が抜けて放心状態。

ミキは、途中から女の子になったんで、裸の女の子に抱きつかれると、まだちょっとだけモヤモヤするのだ。

「ミキお姉さま・・・ 背中流してあげましょうか」

「いっ・・ノー・・ノー・・自分で洗うから、いいよ。 それより、狭いから順番に洗おう。 ネッ!」

「そうですかぁ・・・ざんねん」

・・・

・・

女の子は、比較的長風呂の傾向である。 結局二人して1時間近く入っていた。

やはり髪を洗うのに時間がかかるからだろうか?


ミカは、ちょっと のぼせ気味でお風呂から出てきた。

「あら、ミカちゃん。 いないと思ってたら、ミキと一緒にお風呂だったの?」

サキは、うすうす感ずいていたが、一応聞いてみる。

「えっへっへ。 ミカ、とっても幸せでしたぁ」

「へっ? 幸せ???」

ミカのあとから、ふらふらしながら、ミキが出てくる。

「ふひぃ~」


「ミキ・・・なんか大変だったのねぇ・・・」

この後、エミがお風呂から出てきて、いよいよパジャマパーティが始まった。

「そうだ。 ここの部屋からの夜景は、すごく綺麗なんだよ。 ほらっ」

シャーッ

ミキが、リビングの照明を消して、カーテンを開けると街の明かりが、大きな窓全体に天の川のように光り輝いて見える。

このマンションは、小高い丘の上に建っているので、10階でも見晴らしは抜群なのだ。

「それに、丘の上だからカーテンが開いてても、誰にも見られないし」

ミキは、そう言い切るが・・・


キラッ☆

??? 何か遠くのビルの屋上で一瞬光るものがあった。

大変! 大沢家の反対側のビルの屋上から、望遠鏡で部屋の中を覗いているヤツがいるようだ。

よく見れば、なんと帰ったはずの杉山レポーターだ。

覗きは犯罪だぞ!!


「ねぇ、ミキさん」

「なあに。 ミカちゃん」

「ミキさんって、ニューハーフなんですか?」

「えっーー。 ひょっとしてヒゲはえてるーー?」

ミキは咄嗟に自分の顎を触る。


「ばかね。 ミキ」

「ちょっとサキ! いきなりバカって、何よ!」

「ミカちゃん。 なんでミキがニューハーフなの?」

ミキに代わってサキが質問する。

「だってぇ。 さっきミキさんが、元男だって自分で言ってましたぁ」

「ミキ。 だからあんたはバカだっていうのよ」

「ほへっ? そんな事言ったっけ?」

「言ってましたよ」

「ミカちゃん。 それは親父ギャグだって、わたしが言ったからじゃない」

「・・・」

「だったら、冗談よ。 受け言葉に買い言葉よ~」

「なあ~んだ。 わたしてっきりニューハーフかと思いましたぁ」

「それなら、エミちゃんはミキのクローンなんだから、エミちゃんも男になっちゃうハズでしょ」

「そっか。そうですよね」

『サキ。 ナイスフォロー ありがと~』

『ミキ。このフォローは高いわよ~』

『ひぃー』

「なになに? ミキはニューハーフで、エミはクローン?」

大変! 杉山にばれちゃった? そうだ杉山って、唇の動きを読めるんだっけ!


次回、「姉妹愛」へ続く

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