第43話 ◆クローンの恋

◆クローンの恋


「さぁさ。 早く中に入って! もう直ぐご飯よ。 きょうはエミちゃんにも手伝ってもらったから美味しいわよ」

久しぶりに実家に遊びにきたミキと鋭二であったが、ここであの事件後、初めてクローンのエミと再開したのだった。

でも何故かエミが、じぃーっと鋭二を見つめている。


「んっ? ぼ・・・僕?」

鋭二はエミと目線があって、ちょっと戸惑っている。

「エミ。 どうしたの?」

智子お母さんが、そんな二人を見て不思議そうにエミに聞く。

「な・・なんでもない。 料理ができてる。 冷めないうちに食べるとよい」


そう言うとエミは頬を赤くしながら、先に行ってしまった。

「そ、そうね。 それじゃ、ミキ達は荷物を部屋に置いたら、ダイニングの方に来てちょうだい」

「は~い♪ ごはんだ♪ ごはんだ♪」

食いしん坊のミキは、おおはしゃぎである。


そして、一家団欒の夕食が始まった。

「うん♪ 美味しーーーい!」

「ほんとだ。 こりゃーすごく美味いですよ。 お母さん」

「そぉ。 良かったわー。 これはね、ほとんどエミが作ったのよ」

「母さん。 ご飯はやっぱり大勢で食べるのがいいね」

父さんが、しみじみとした顔で言う。


「そうね。 エミが来てくれて昔に戻ったみたいだし。 今日はミキ達もいて賑やかで楽しいわぁ」

「こっちのも美味しいと思う。 鋭二、食べるか?」

エミは食事が始まってからずっと鋭二ばかりを見ている。

「おっ、ほんとだ。 美味そうだね」


わたしの旦那さまを呼び捨てって・・・ミキはちょっとムカツク。

「うぉっほん。 エミちゃん。 この人はね。 お姉ちゃんのご主人さまだから、呼び捨てはダメだよ」

「ご主人さま・・・? ではミキは鋭二の奴隷なのか」

「えっ。 どれい? ちゃうちゃう。 どっちかっていうと奴隷は鋭二さんのほう!」

「オイオイ・・」

ミキの言い様に鋭二は苦笑いである。


「・・・?」

さすがにエミは、まだこのノリに突っ込めない。

「今度のお休みもねぇ・・・いいもの買ってもらうんだ。 そうだエミちゃんも一緒に行く?」

コクコク

「一緒に行く・・・」

「そう。 じゃ、そのときに迎えに来るからね」

「鋭二も一緒?・・・うれしい」

「んっ?・・・何か言ったエミちゃん?」

「いや・・・気にするなミキ」

・・・

・・

そして、お買い物当日ーーー!


ピンポーン

「ヤッホー、エミちゃん。 お出かけのしたくはできてるー?」

ミキが玄関から声をかける。


「お母さん、鋭二達が迎えに来た! 早く、早く」

エミは初めて遠くに買い物に出かけるので、落ち着きがない。

「もう少しでリボンが結べるから・・・。 あっ、ほら。 動かないでっ! それに呼んでるのはミキでしょ。 ふふっ、そんなに嬉しいの」

コクコク

「うれしい・・・鋭二も来てる?」

エミは、鋭二の事が気になって、そわそわしている。


「鋭二さんは今日はふたりの奴隷なんでしょ。 いっぱい楽しんでらっしゃい」

智子はリボンを結びながら、楽しそうにしゃべっている。

「はいっ。 お待たせ。 準備完了よ。 こっち向いて」

「ん・・・ どうだ?」

「うん。 とってもかわいいわー。 さぁ、いってらっしゃい」


ダダダダッ

エミは、もの凄い速さで階段を駆け下りていく。

「エミちゃん。 おはよ・・・う」

ビューーーー

「あっ、あれっ? あ゛ーーー!

エミは、ミキの前を素通りして、一気に鋭二のところまで駆けて行く。


「鋭二、鋭二。 おはよう。  どうだコレ?」

エミは、ピンクのフワフワ、ワンピをクルクル回って鋭二に見せている。

「やあ。 エミちゃん。 とっても似合ってるよ」

「ホント? ホント?」

「うん。 とっても」

「うれしいーー」

ぎゅー

「あ゛ーーー ちょっ、エミちゃん。 何やってんの!」

エミは、しっかり鋭二に抱き着いている。


ミキもダッシュで鋭二のところに駆けつけ、反対側から抱きついた。

「うぉっ」

鋭二は 声の割には顔がにやけている! だってダブルFカップなのだ・・・


「ほらほら。 ふたりとも。 デパートに行く時間が遅くなっちゃうよ!」

「ちょっとぉ。 エミィ~ 離しなさいよ」

「やっ!」

「なっ・・・ もぉ・・・ 連れて行かないからねっ!」

「わ・・・わかった」

エミは、しゅんとして鋭二から渋々離れるが・・・


「さぁ、二人ともクルマに乗って。 出かけるよ!」

「わかった」

サーッ バタンッ

「エ・・エミったら。 なに勝手に助手席に座ってんのよ」

「ハハハ。 まぁまぁ。 たまにだからいいじゃないか」

「むぅー」

さすがにミキも、頬がプクゥーとふくれている。

さてさて、買い物はいったいどうなる事やら。

・・・

・・

「さぁ、着いたよ」

ここは、某有名デパート。 ブランドショップも沢山入っている。

「わぁ・・・いろいろあって、目移りしちゃうなぁ」

ミキも、もうすっかり女の子。 ショッピングは大好きなのである。

「きゃ~これ素適ー。 鋭二さん。 これ買ってくれる?」

「わっ。 奥さん、これは数字が一桁多いよ~」

「それじゃ、こっちのは?」

「う~ん。 これくらいなら、仕方ないか~」

「よっしゃぁー」


一方エミは、ネックレスを見ていたが・・・

「鋭二、これ・・・」

振り返ったエミは、鋭二と腕を組んで楽しそうに笑っているミキの姿を見てちょっと悲しそうな顔になった。

「鋭二はミキの旦那さま・・・ふたりは夫婦・・・」


二人の方を見て、ぼ~っと立ているエミを見つけ、鋭二が近くにやって来た。

「おやっ。 エミちゃん。 それに決めたの?」

「ほんとだ。 それ超カワイイよ~」

ミキもエミが持っているネックレスを見て言う。


「よしっ。 それじゃあ、それを買ってあげようね」

コクコク

「エミ・・とても嬉しい」

・・・

・・

さて、買い物から帰ってきたエミは、どうしたのか元気がない。

鋭二に買ってもらったネックレスを見ながら、溜息をついている。

「エミちゃん。 どうしたの溜息ついちゃって」

「智子お母さん。 エミ、鋭二を見ているとここ(胸)が苦しくなる。 これはどういうこと?」

「・・・それはきっと、エミが鋭二さんのことを好きっていう事だと思うわ」

「好き? でも鋭二は、ミキの旦那さま」

「そうね。 鋭二さんはミキと結婚して、ふたりは夫婦だわ」

「では、エミはどうすればいい?」

「エミちゃんは、まだ男の人をほんの少ししかしらないでしょ。 それにミキのDNAをわけてもらったから、きっと鋭二さんを好きになっちゃたんだと思うの」

「そうなのか・・・」

「う~ん。 人を好きになるのって、凄く難しいことなのかも知れないわね。 初めて好きになった人と結婚しても、すぐに別れてしまう事もあるしね。 お母さんにも、本当のことはわからないわ。 でもみんな人を好きになったり、失恋したり悩んだりしても最後に最愛の人と結婚できれば、それが一番幸せなことかもしれないわね」

「しあわせ・・・よくわからない。 でもエミはここが苦しくなる。 鋭二の側にいたい」

エミは自分の胸に両手をそっとあてる。


「エミ・・・。 今にエミもきっと素敵な男性に巡り会えると思うわ」

「ほんとに?」

「ええ。 ほんとよ」

「それはいつ?」

「そうね・・・いつになるかしら・・・でもエミは、その前にいっぱいお勉強しなくっちゃいけないわね」

「わかった。 智子お母さん。 エミにいろいろな事をいっぱい教えて!」

「はいはい。 わかりました」

いろんな事を覚えようと意欲的なエミであるが、実はこの後大変なことになってしまうのだった。


次回、 「新ユニット誕生」へ続く

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