第40話 ◆ふたたび

◆ふたたび


お約束:文中の『 』の中はミキの心の声です。


ムーー

『ここはいったいどこなんだーーー。 また猿轡されてるしーー!』

ミキは、どうやら高嶋教授に、またまた拉致されているらしい。

しかも今度は檻の中に監禁されているようだ。


新幹線で洗面所の前を通った時、急に後ろから洗面所に引きづりこまれて、例の麻酔スプレーで眠らされてしまったのだ。

それにしても、ミキのそっくりさんというのは、いったいどこの誰なのだろう。


「山口美樹くん。 どうだね。 そこの居心地は?」

檻の外には高嶋教授が不適な笑みを浮べて立っていた。


ムグーーー

『高嶋教授?! いったいどうしてココに?』

「君のおかげで私も随分酷い目にあったんだよ」

ムグッ。 ムーーームーーー

『なんだってーーー。 それは、お前の方が全面的に悪かったんじゃんか!』

「ふふふ。 そんなに睨んでも、今度は誰も助けには来てくれないよ。 もちろん君の旦那さんもだ」

ムグッ?

『なっ・・?』


「今度はクローンが君の身代わりになっているからね。 今頃は君の愛しい旦那様と・・・」

ムーーー? ムーーームーーーー

『それじゃあのそっくりさんが? えーーー。 嫌ーーー。 鋭二さーーん』

そうなのだ。 この悪の天才科学者は、以前ミキを拉致した際にミキの細胞をサンプルとして採取し、短期間でクローンを作り上げていたのだった。

でも、知能発育の方は短期間では限界があった。


「君の体は明日、解剖しながらじっくり調べさせてもらうよ」

フッハッハッハ

ムーーーー!!

『コノーーー。 ここから出せーーー!』


さて、そのころ大沢家では・・・

カチャッ

チャイムも鳴らずに玄関のドアが開く。


「ミキかい?」

ちょうどミキと入れ替わったクローンが帰宅したところである。

「はい・・」

「おかえりーー。 遅くまで大変だったねー」

「・・・」

「先にシャワーでも浴びてきたら?」

「シャワー。 浴びる・・・」

「オイオイ。 どうしたんだい? さては奥さん。 相当お疲れですね?」

「つかれた・・・」

「そうかー。 それじゃもう寝ちゃったら? シャワーは朝浴びればいいじゃん」

「そう・・する・・・」

「ミキ。 どうした? 大丈夫かい?」

「だいじょうぶだ。 先に寝る」

「ああ・・・おやすみ?」

鋭二もサキも、まだこの時点で気が付いていないから大変である。

・・・

・・

チュン、チュン

チチチ・・・

お決まりの朝の表現・・・何とかならないもんですかね。

さて・・と言うワケで。 朝ーーーーっ!


鋭二が起きると、もうベッドにミキの姿は無い。

「ん・・ミキ? アレッ? シャワーでも浴びてるのかな?」

カチャッ

鋭二は、寝室からリビングへやってきたが・・・

「クンクン・・・?? 何か焦げ臭くないか?」

リビングからキッチンへ向うとモクモクと黒い煙が立ち上っている。

「おわっ! ミキ! 大丈夫か?」

「・・・大丈夫・・・ちょっと卵のたんぱく質が炭化しただけだ。 問題ない・・」

「えーーっ。 それってもう食べれないよー!」

「・・・そうか・・・」

「いや。 って言うか。 ミキ昨日から変だぞ!」

「直ぐに変わりを作る・・・」

「あっ、僕がやるから、ミキは、そこに座ってなさい」

「わかった」


じぃーーーー

鋭二は、ようやっとミキの様子がおかしいのに気が付く。

「何か変だな・・・ はっ! まさか? ミキ」

「?」

「僕達の結婚記念日は、何日だったっけ?」

「・・・結婚記念日?」

「そう。 5月の何日だっけ?」

「・・・それに関しては・・・まだ記憶するように言われていない・・・」

「やっぱり!・・・ 君はミキじゃないな!」

「・・・わたしが、ミキじゃない?・・・いや、わたしはミキだ! そう言われている」

「言われているだって! 大変だーーー! サキちゃんに連絡しなくっちゃっ!」

鋭二は、急いで携帯電話に手を伸ばす。

ピッピッピッ

トゥルルル・・・トゥルルル・・・


「サキちゃん! 早く早く。 早く電話にでてくれーーー」

トゥルルル・・・ガチャッ

「ハイ! 神崎です」

「もしもし。 サキちゃん。 大変なんだ!」

「ただいま電話にでることができません。ピッと言う音の後にメッセージを・・・」

「なにぃーっ! こんな時に留守電かーー! もしもし、サキちゃん! 鋭二です。 ミキが大変なんだ! 直ぐに折り返して電話をください!」


「ミキが大変? わたしがミキだ・・・何か変か?」

「あ゛ーーー うるさい! キミはそこに座っていなさい!」

「キミでは無い。 わたしはミキだが」

クローンは、まだ自分がミキじゃないということがバレテいないと思っているようだ。


「早く本物のミキを探さないと大変だ!」

「ミキを探すのか?」

「そうだ。 あたりまえだろ!」

「ならば、ついてこい」

「へっ? なんだって?」

「わたしが案内する」

「そうか。 君はミキの居場所を知ってるんだね?」

コクコク

クローンは小さくうなずく。


「そこは、近くなのかい? 住所はわかるの?」

「住所はわからない。 電車の駅は○○○公園だ」

「○○○公園っていうと富士見ヶ丘から3つ目だな。 そうだ! 山口のお父さんに電話をして、応援を頼んでもらおう」

ピッピッピッ

「もしもし。 お義父さんですか。 鋭二です。 実はミキが大変な事に・・・」

・・・

・・

鋭二は、ことの成り行きを山口博士に電話で伝え、直ぐにミキの救出に向った。

「よしっ! それじゃ案内を頼むよ」

「わかった・・・ ついてこい」

ガチャッ 玄関のドアを開けるとそこに人影が!

「わっ!!!」

「おわっ。 ミカちゃん・・・どうしたの?」

「今日はミキさんと一緒に登校する約束だったから迎えにきたんです」

「いや・・・ミキは、いまちょっとココにいないんだ」

「やだなー。 鋭二さん。 ミキさん、そこにいるじゃないですかぁ」

鋭二の隣には、クローンのミキが立っている。


「あっ・・・この娘はミキじゃなくって・・・その・・・」

「あーーー! わかった。 その人はもしかして例のそっくりさん?」

「んっ? ・・・ミカちゃん、何でそのことを知ってるの?」

「わたしも見たんです。 そっくりさん」

じっ・・ミカは食入るようにミキもどきを見つめる。


「でも、どっから見ても、やっぱりミキさんですよね」

「わたしは、ミキだ」

「あ゛ーーー。 もうややっこしい。 ミカちゃん。 悪いけど本物のミキを早く探さなくっちゃいけないんだ」

「それなら、ミカも一緒に行きます」

「ダメダメ。 状況によっては、すごく危険かも知れないから」

「それなら、よけいミカも一緒に行きます!」

「こんなところで、ゆっくりしている暇は無いんだ! ミキの命に係ることかも知れないんだ」

「ミカも絶対いきます!!」

ミカちゃん。 鋭二さんの服にしがみついて離れない!


「わかった。 でも危ないから車の中にいるんだよ」

「うん」

「じゃあ、行くよ!」

「はいっ」


次回、 「ミキ撃たれる!」へ続く

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