仲間と餅つき


我が家では、

年末には必ず餅搗もちつきをおこなう。


鏡餅かがみもちと、

雑煮ぞうに用のもちなどを作るためだ。



「準備出来たぞ~!」


した餅米もちごめの入ったうすの側で、

きねを持ったつるぎさんが楽しそうに声を上げる。


「こっちも準備出来ましたよ~!」


もちとりまかかれた台の前で、

私も準備完了を知らせるために返事を返した。

もちとりとは、

もちがくっ付かないようまぶこなの事だ。)


「よーし!

今年も景気よくいくぞー!」


もう一本のきねを持ったそらさんが、

気合きあいを入れつつスタンバイをする。


「よし、いいぞ。」


返す係のいかずちさんも、

うすの側でかがみながら返事をした。


それを聞いた2人は、

気合きあい十分にきねを振り上げ


「おっしゃ!いくぞー!」


「せーの!」


の声と共に、

勢いよく振り下ろす。


・・いかずちさんの頭上へ。


「ふん!!」


2人からの攻撃を、

何時いつの間にか手にした黄粉きなこ用のすりこ木で、

彼は勢いよくはじき返し、

素早すばやくその場を離れ迎撃態勢げいげきたいせいを取った。


「あ~、今年も駄目だめか!」


「今回はタイミング合わせたのにな~。」


そう残念そうに笑う2人に、

いかずちさんも笑いながら言う。


「去年よりは、

スピードもタイミングも良かったぞ。」


はっはっは!


そう楽しそうに笑う3人だったが


「馬鹿共、さっさともちけ。」


と、3人揃ってこおりさんにり飛ばされた。


「今年もよく飛んだね~。」


「・・冷める。」


「先にいてようぜ。」


そう言うと、

その後をいだくもさん達が、

リズムよく餅米もちごめき始める。


・・これは毎年の事なので、

全員れているのだ。

(危険なので、

皆さんはきねで遊ばないで下さいね。)



きねかれた餅米もちごめは、

段々つぶが消えて固まっていき

真っ白なもちへとその姿を変えていく。


「おかがみいくよ~!」


返す役のくもさんはそう言うと、

もちかたまりを私達の方へと持って来た。


「お願いね~。」


「はい!」


ばふっ!


と音をたて、

粉を巻き上げながら着陸したもちを、

せきさんが手際てぎわよく2つに分ける。


「去年は広がり過ぎたから、

もう少ししっかり形を作るぞ。」


「了解です。」


私とせきさんは手を粉で白くしながら、

それを手早く鏡餅かがみもちの形にしていった。

(冷めると固まって、

形が作れなくなってしまうからだ。)



・・だが、

この時のもち物凄ものすごく熱い。


き立てのご飯でおにぎりを作るより、

ねばりがある分もっと熱いのだ。



それでも熱さと戦いながら作った鏡餅かがみもちは、

去年よりも少しなっているように見える。



それを満足気まんぞくげに見ていた私の横を、

粉で真っ白になったつるぎさんとそらさん、

同じく真っ白のいかずちさんが走り去って行った。


せきさんと2人で頭に疑問符ぎもんふを浮かべていると、

食べる用のもちの台にいたヒト達全員が、

真っ白になって爆笑している事に気が付く。



どうやらもちとりふくろを開けようとして、

その開けにくさに力加減かげん間違まちがえた2人が、

粉を皆に降らせてしまったらしい。


新しく作ったレッドのめんを汚され、

静かにキレるおもさんを見たせきさんが、

あわてて彼を止めているヒト達に加勢かせいしに行く。



そんな、

毎年恒例こうれいの大騒ぎを見て笑いつつ、

私はあと少しの今年を楽しむのでした。

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