私とお盆


ぼんの時期に入り、

ニュースでも帰省きせいが始まった事と、

各地で祭りが開催かいさいされている事を

放送していた。


私は以前


『似てる行事なのに、

夏のおぼんと春のお彼岸ひがんは、

どうして呼び名が違うんだろう?』


と疑問に思い、

いかずちさんにいた事がある。


その話によると。


ぼんは昔から日本に伝わる、

神道しんどう行事ぎょうじなんだそうだ。


そして、

彼岸ひがんは仏教の行事ぎょうじらしい。


だから、

呼び名が違うのだと教えてもらった。



しかし、

呼び名が違っても


『この行事の間は、

くなった人がこの世に戻ってくる』


という点に置いて、

内容が同じなのである。



つまり。



「ただいまです・・。」


今の私の顔は、

多少げんなりしていると思う。


リビングに入ると、

此方こちらを見た仲間達がおどろいた表情をした。


「え、今帰って来たのか?」


「近所のコンビニ行って来たんだろ?

あそこって、遅くても15分あれば帰って来れるよな?」


もう、1時間ってるぞ?


ぐったりとソファーに座る私に、

冷たい麦茶を渡しながらそらさんが言う。


「帰りに、

話好きの人につかまりました・・。」


コンビニからの帰り道の事。


公園の前にいるなと思ったら、

それに突然話しかけられた。


無害だったので


「まあ、話を聞くだけなら。」


と、親切心を出したのが運のきで。


・・彼女は、

130年間話し相手が欲しかったらしく、

生前から今までの事を一気に話し始めたのである。



そう・・約180年分の思いのたけを。



私はそれに口をはさむ事も出来ず、

かといって邪険じゃけんにも出来なくて。


結局彼女の気の済むまでの1時間、

話し相手をつとめたのだった。


・・買いに行ったのが、

紅茶とスポーツドリンクでよかった。



「そういうの、たまにいるからね~。」


お疲れさま。


そう言いながら、

くもさんが冷却れいきゃくシートと氷まくらを渡してくれる。


「話すだけっていう、

無害な奴もたまにいるからなぁ。」


お菓子を食べながら、

そらさんがそう言った。


「・・たまに、な。」


チョコを食べながら、

おもさんが言っていると


「おーい!!」


と、出掛けていたつるぎさんが、

楽しそうにリビングに飛び込んできた。


「お!」


いたか!?


彼の登場に、

ひまそうにしていた武闘ぶとう派達が、

そわそわと落ち着きをくす。


そんな仲間達を見ながら、

つるぎさんは心底嬉しそうに笑った。


「いたいた!

隣の県の、山ん中の廃墟はいきょ!」


すっげぇ集まってた!!


「よし!行くぞ!!」


「おう!」


今年はどんなのがいるかな~?


強いのがいればいいけどな!


ぞろぞろと出て行く彼らの背に、

本を読みながらこおりさんが声を掛ける。


「片付けるのは構わんが、

建物を壊すんじゃないぞ。」


わかってるって!」


いってくるな!!


そう返事をしながら、

楽し気に武闘ぶとう派達は出かけて行った。


「・・あれは、ある種の肝試きもだめしですか?」


私が少し茶化した声で言うと、

くもさんといかずちさんは小さく笑う。


「あれは、肝試きもだめしと言うより、」


「力だめしだね~。」


そう言う2人の声に、

こおりさんも少し笑った。


「・・あやし共の、肝試きもだめしかもな。」



・・この時期は、

外にいるたぐいがグンと増える。


私が出会った話好きな者は、

かなりのレアなケースで。


どちらかといえば、

目が合っただけでもいてきたり、

襲い掛かってくる奴の方が断然だんぜんに多い。


しかも、

この時期は昼夜問わず奴らの領分りょうぶんなので、

時間帯に関係無くいる。


特に、

逢魔おうまが時より後の時間は、

物凄ものすごく凶暴になるのだ。


だから今の時期には、

遊び気分でへ行ったり、

交霊術のたぐいをするのはめた方がいい。


高い確率で、

厄介やっかいな事にしかならないからだ。


ですからみなさんは、

ぼん休みだからといって、

をしないようにして下さいね。


・・どうなるかわかりませんよ?




ちなみに、

仲間達は特殊とくしゅ鍛錬たんれんきたえていますので、

例外なんです。


決して真似まねはしないで下さい。


もし、貴方が武闘ぶとう派で


『300匹のあやしを1分で倒せる』


という方であれば・・私は止めませんが。

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