不機嫌


どうしたんだ、あれ?


さあ?


そんな声が聞こえるが、

無視をさせて頂く。


なぜなら、

今の私は機嫌きげんが悪いのだ。


数日前からの出来事で、

すっかり気分もテンションも

地に落ちきっている。


「どうした?」


つるぎさんが声を掛けてくれるが、

やはり返事をする気が起きなかった。


「何かあったのか?」


また、

ゾウアザラシみたいな顔になってるぞ。


そらさんのたとえにも、無言をつらぬく。


どうしたものか。


話したくないのなら、

放っておくしか・・。


いかずちさんとせきさんが話し合っているのを聞いて、

何となく勝った気分になった。


その時


鬱陶うっとうしい。」


そう言うこおりさんに、

ソファーからり落とされる。


「で、何があった?」


言え。


冷たい空気を放ちながらの、

笑顔の威圧いあつに負けた私は、

その場に素早すばやく正座をし、

理由を説明させられる事になった。



CM?


はい。



夏が近づいた今の時期は、

ホラー映画のCMが時間も考えずに放送される。


番組ならば、

新聞や番組名などをチェックし、

事前にけていた。


だが、CMだとそうはいかない。


あれは、

どの番組でやるか調べる事もできないし、

放送時間もわからないからだ。


最近見る番組のチャンネルで多く映るので、

憂鬱ゆううつを通り越して腹が立ち始めている。


それが、私の不機嫌ふきげんの理由だった。


その理由を聞いたこおりさんには、


くだらん。」


の一言でり捨てられる。


「下らなくないです。

好きな番組がれなくて困ってます。」


「困るのはわかる。

・・だがそれは」


周りに八つ当たりをするほどの事か?


「・・。」


「心配する者達を困らせるほど、

大切な事なのかと聞いている。」


それは


「・・それほどの事では、ないです。」


すみませんでした。


仲間達に向かって頭を下げると、

全員がホッとした表情で笑った。


「まあ、そんな事もあるさ。」


「好きな番組邪魔されれば、腹も立つしな。」


同意した上に許してくれる彼らの言葉に、

今度は自分の未熟さに腹が立ってくる。


「落ち着け。」


「痛っ!」


溜息をつくこおりさんに強めにデコピンされ、

思わず声が出た。


「今日は、もう色々考えるな。

あのうるさい連中と遊んでろ。」


うるさいって俺ら?


他に誰がいる。


「そんじゃ、映画でもようぜ!」


明るい声でつるぎさんとそらさんにさそわれた私は、

彼らと共に借りて来た映画を始める。


他のみんなも集まってきて、

結局全員で映画をる事になった。


お菓子を持ち寄ってにぎやかに鑑賞かんしょうしていれば、

心がやっと落ち着いてくる。


(確かに、そんなに怒るほどではなかったな。)


そう思った私は


(これからは、くだらない事で怒るのめよう。)


と決めたのだった。




しかし、

映画を終えてテレビに戻した瞬間に、

例のCMが画面に映り。


キレた私は、

クッションを画面に向かって投げつけ

いかずちさんとこおりさんにひどくしかられる事になる。

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