雨の日の楽しみ


「あ。」


雨だ。


カーテンを開けると、

雨が降っていた。


変わっているかもしれないが、

私は雨の日が好きだ。


読書をするのもいいが、

今日は外の雨音を聞きながら

ぼんやりと時間を過ごしたい。


「そうしよう。」


ダイニングテーブルの椅子に座り、

1人ぼんやりと外を見る。


ざあざあ、ざあざあ、

雨の音がひびく。


「何をしているんだ?」


あ、いかずちさん。


「ぼーっとしてました。」


「そうか。

ここで読書をしてもかまわないか?」


どうぞどうぞ。


向かいの椅子にいかずちさんが座り、

持ってきた本を静かに読みだした。


また、雨の音がひびき、

それにじってページをめくる音がする。


ざあざあ、ざあざあ、ぱらり。

ざあざあ、ざあざあ、ぺらり。


「何をしている?」


あ、こおりさん。


「ぼーっとしてます。」


「読書をしている。」


「そうか。

ここで、チェスをするがいいか?

1人で様々な手を熟考じゅっこうしたい。」


どうぞどうぞ。


ななめ向かいにこおりさんが座り、

持ってきたミニチェスばんを置いた。


また、雨の音がひびき、

ページをめくる音と駒を動かす音がざる。


ざあざあ、カチリ、ぱらり。

ざあざあ、カチリ、ぺらり。


なんだか、

音楽みたいで楽しくなってきた。


ざあざあ、ぺらり、カチリ。

カチリ、ざあざあ、ぱらり。


ざあざあ、カチリ、ざあざあ、ぱらり。


「たっだいまー!!」


全ての音を吹っ飛ばし

登場したつるぎさんの顔面に、

いかずちさんはチェスの駒を、

こおりさんはミニチェスばんを投げつけた。


「いってぇ!!」


やかましい!!」


「騒ぐな愚弟ぐてい!!」


怒る2人を見てつるぎさんは不思議そうな顔をしたが、

その表情を突然ニヤニヤとまりのない物に変える。


「そんな事言うなって!

・・ほら!これ手に入ったんだよ!!」


ジャーン!!


そう言って彼が取り出したのは、

大きな箱だった。


「あ、それは・・!」


「そう!

すっげぇ美味いシュークリームだ!

雨で人が少なかったから、

並ばずに大量に買えたぞ!!」


「紅茶とコーヒーれますね。」


私がいそいそと立ち上がると、

本を置いていかずちさんも立ち上がる。


「俺も手伝おう。」


「お願いします。」


「みなを呼んでくる。

・・お前はそれを片付けておけ。」


散らばったチェスを

つるぎさんに片付けるように言い残し、

こおりさんは出て行った。


「えー!!」


不満そうにねながらも、

つるぎさんは小さな駒を片付け出す。


紅茶とコーヒー、

皿とフォークの準備が終わる頃、

みんなはリビングに集まっていた。


それぞれが好みの飲み物を手に、

シュークリームを食べる。


美味しい物を食べながらの話は、

なんとなく饒舌じょうぜつになってしまう。


「あっちのケーキも美味いぞ!」


「あそこのチョコ、安いけど美味いぜ!」


わいわい、がやがや。


騒がしくも楽しい音で、

リビングは一杯になった。


雨の音は聞こえなくなったけど。


(こんなにぎやかな雨もいいな。)


紅茶と、コーヒーと、甘い匂い。


そこに笑い声がざって。




今日の雨も、楽しい。

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