真面目な雷さん


いかずちさんは、

とても真面目だ。


武術を重んじているヒトだから、

礼節にはとても厳しい。


私が話している最中に

余りにふざけた言葉を使った時、


「目上の者に対して、

その言葉遣いは間違っている!」


と、正座をさせられて1時間、

年上に対する礼儀について叱られた。


足がしびれた後、

さらに原稿用紙に反省文まで

書かされたあの出来事は、

今もトラウマだ。


まあ、おかげで年上の方からは


「言葉づかいや、態度が丁寧ていねいだ。」


められているから、

大変感謝している。


そんな彼だが、

別に堅物かたぶつという事は無く、

余り酷い物でなければ

基本的には寛容かんようだ。


だから大雑把おおざっぱつるぎさんとは

割と馬が合う。


今日も暇だとごねていたつるぎさんが、

飛び蹴りを避けられた後、

背後に回られ、ジャーマンスープレックスで

沈められたのを見ながらそんな事を考えた。


あ、また溜息ついてる。


「お疲れですね、いかずちさん。」


「ああ。

昨日、此奴こいつの書類が終わっていなくてな。

逃げるのを捕まえて、それを手伝っていた。」


「だからジャーマンに力が入ってたんですね。」


つるぎさん、床に刺さってますもんね。


「大変ですね、いかずちさん。

その上、私にも色々教えてくれているし。」


本当に、頭が上がりません。


「気にする事は無い。

俺の知識の復習にもなっているからな。」


いえ、私の気がすみません。


「と、いう訳で、いかずちさんに

ボーナスを用意しました。

お礼に受け取って下さい。」


と、彼に割りばしが刺さった

トマトを手渡した。


「お前のセンスが解らねぇ!!」


復活したつるぎさんに

突っ込まれるが、

私は全く気にしない。


「ナスは解りきってて面白くないです。

なので、野菜繋がりにしました。」


長イモもありますよ。


「だから!センス!!」


頭を抱えるつるぎさんを気にせず、

いかずちさんは少し眉を

すがめて言う。


「食べ物で遊ぶな。」


「そこじゃねぇ!!」


間違ってねぇけど!


「すみません。」


「これはがたもらうが、

もうするんじゃないぞ。」


「はい。」


「突っ込みが間に合わねぇ・・。」


結局、トマトと長イモは、

その日の夕飯にみんなで食べた。


つるぎさんが疲れ切っていて、

他の仲間に心配されていたが、

いかずちさんは嬉しそうだった。


「この野菜はボーナスにもらった。」


と彼が語り、色々さっしたみんなから

つるぎさんは肩を叩かれていた。


「お疲れさん。

食って、元気出せよ。」


「天然2人は、荷が重かったよな。」


「この野菜は、天然物なのか。」


道理どうりで美味い訳だな、がとう。


嬉しそうに私にお礼を言ういかずちさんを見て、

みんなは溜息をついた。


いかずちさんが元気になって

良かったです。」



今日もご飯が美味い。

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