とわの麦

作者 松野 志部彦 (旧・まっしぶ)

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★★★ Excellent!!!

――死が訪れないのは――「季節」だと、誰かに教えられた気がした。――「美しい春が終わり、また暑い夏がやって来て、仄暗い秋が訪れて、冬が始まる」――その美しい循環は――終わることがないのだ、というように。――けれど、蕾は枯れ、植えられた麦は――秋に実り――美しい橙色の光を持て余す頃――刈り取られ、生を終える。――「あたりまえのことだ」と、誰かが嘯く。――僕は――広大な海に溶け合う、灰となり――いずれ死を迎える。僕に子供が生まれ、――僕は老いて、消え去る――やがて、僕の子供も年を取り――消えてしまう。――忘れないで、忘れないで――そんな儚い願いは――あぶくのように――弾けて――見えなくなる。――静止した運動の中に投げ込まれた、魂の輝きは――そうして、見えなくなる――「えいえん!えいえんに!」――届きますように、届きますように。――そう――祈るように、僕は、僕は。