08-5

「……まあ、俺も実際、初めてお会いした時はモデルさんか何かかと思いましたけどね」


 販売店舗へと歩いてゆくシグルドの背中を見送って、相田は言う。


「不思議だったもん、なんでこんなモデルみたいな人が先輩んちに用事あるんだろって」

「呪いを撒き散らしに来たとしか言い様がないな。祟りじゃ! 祟りが起こるんじゃ!」

「恐ろしか! 恐ろしかとね! おら達の村ももうおしまいじゃあ!」


 目当てのものだけを買うには少し長い時間の後、戻ってくるシグルド。手提げ紙袋の他に、小さな包みを持っていた。

 帰ってくるなり、それを相田に渡す。


「送迎とかありがとうね。これ、良かったら受け取って」


 受け取ったその包みの中身は。


「これ、錦◯梅じゃないっすか!」


 高級ふりかけ錦松◯。しかも陶器の容器入り。


「良くお米食べてたなと思って」

「ありがとうございます! さすがシグルドさんマジイケメン!」

「うっわ相田お前、態度豹変してんぞ! 裏切り者!」




 かくして、男三人の彩り要素皆無な買い物は終了した。上機嫌な相田は熊谷市の駅ではなく、東京寄りの大宮駅までシグルドを送り、一時間半掛けて自宅へ帰還したのであった。



 後日、土産品の要求メールが網屋の元へ届いたのは言うまでもない。

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