第64話 沸騰する朝市
二人は大通りを抜け、港に向かう坂を下った。
そのあたりからすでに市場の賑わう音が聞こえてきた。坂の上から見下ろすと、まだ西の空に
横に長い長方形の市場会場には、中央に大きな通りが設けられ、それと水平に細い通りが何本も造られていた。中央通りの中程には円形の中央広場が設けられ、主催者の事務所が建てられていた。
場所割りを決めているのは地元業者たちの組合だった。
市場の当日では
この市場に店を出したいものはどこかの組合に金を払い、木製の
そんな市場が最低でも月に一回は行われた。さらに大きな貿易船が入港し、新しい商品がもたらされた際も臨時で行われた。集まる人々はエル・デルタの住民に加えて、貿易船の乗組員やエル・マール・インテリオールの島々の住民たちだった。
ヨハネとペテロは市場に近づくにつれ、不思議な臭いに包まれた。それは、人いきれに加え、生魚と家畜の臭い、そして様々な食材を焼く匂いだった。通常、様々な臭いが混ざると、えも言われぬ悪臭になるものだが、ヨハネにとって市場の臭いはまったく不愉快なものではなかった。それはまるで生まれたての赤ん坊から立ち昇るような、生命力と活力の臭いだった。
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